鹿島建設株式会社 の会社詳細
鹿島建設株式会社
鹿島建設
2026年3月期 第3四半期

鹿島建設・2026年3月期Q3、営業利益81.6%増の1,718億円——国内建設の採算改善が急伸、通期純利益予想を上方修正

鹿島建設
ゼネコン
増収増益
採算改善
建設受注
配当増額
不動産開発
上方修正
株主還元
施工効率化
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2.1兆円

+5.9%

通期予想

3.0兆円

進捗率71%

営業利益

1,718億円

+81.6%

通期予想

2,280億円

進捗率75%

純利益

1,222億円

+64.0%

通期予想

1,700億円

進捗率72%

営業利益率

8.0%

鹿島建設が発表した2026年3月期第3四半期決算は、国内の大型工事が最盛期を迎え、徹底した原価低減と追加変更契約の締結により利益率が大幅に改善した。売上高は前年同期比 5.9%増2兆1,460億円、営業利益は同 81.6%増1,718億円 となり、前年同期の減益傾向から一転して大幅な増益を達成した。主力の建設事業における採算性の向上が業績を強力に牽引しており、通期の純利益予想も前期比 35.1%増1,700億円 へと強気の見通しを維持している。

鹿島建設・2026年3月期Q3、営業利益81.6%増の1,718億円——国内建設の採算改善が急伸、通期純利益予想を上方修正

業績のポイント

2026年3月期第3四半期の連結業績は、売上高 2兆1,460億円(前年同期比 +5.9%)、営業利益 1,718億円(同 +81.6%)、親会社株主に帰属する四半期純利益 1,222億円(同 +64.0%)と、主要な利益指標がいずれも大幅なプラスとなった。この急激な増益の背景には、国内建設市場における「選別受注」と「収益管理の徹底」が結実したことがある。建設資材価格の高騰や人手不足といったコスト増の圧力は依然として強いものの、受注段階からのリスク管理と、施工中の原価低減努力が利益を押し上げた(前年同期の営業利益は946億円)。

特に注目すべきは、建設事業の受注高が国内外ともに好調で、グループ全体で 2兆1,812億円(前年同期比 +13.0%)に達したことだ。エネルギー関連施設やデータセンターなど、旺盛な設備投資需要を背景に質の高い案件を確保できていることが、将来の収益基盤をより強固にしている。1株当たりの四半期純利益も 261.58円 と、前年同期の 157.66円 から大幅に伸長した。

項目2025年3月期 Q32026年3月期 Q3前年同期比
売上高2兆263億円2兆1,460億円+5.9%
営業利益946億円1,718億円+81.6%
経常利益1,012億円1,671億円+65.1%
四半期純利益745億円1,222億円+64.0%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

セグメント別では、主力の「土木事業」と「建築事業」の利益率向上が際立っている。土木事業の売上高は 3,144億円(前年同期比 +5.4%)に対し、セグメント利益は 573億円(同 +134.4%)と倍増した。最盛期を迎えた大型工事において、徹底した原価管理と契約変更の交渉が順調に進んだことで、売上総利益率は前年同期の 14.4% から 24.6% へと劇的に改善している。収益性の高い大型インフラ案件の進捗が、グループ全体の利益の柱となった格好だ。

建築事業も好調を維持しており、売上高は 8,668億円(前年同期比 +15.8%)、セグメント利益は 643億円(同 +79.9%)となった。当期に竣工を迎える大型案件の施工が着実に進んだことに加え、土木同様に採算性が向上し、売上総利益率は 11.8%(前年同期は 9.4%)に上昇した。民間設備投資の回復を背景に、高付加価値な案件の引渡しが進んだことが増益に寄与している。

一方で、海外関係会社はやや苦戦した。売上高は 7,425億円(前年同期比 3.7%減)にとどまった。東南アジアや欧州の建設事業では採算が向上したものの、米国における不動産開発物件の売却減少が響いた。米国の金利動向や市況を踏まえ、売却時期を次期以降にずらした物件が増えたことが減収の要因となっている。ただし、開発事業全体としては国内物件の引渡しが完了した1件の寄与により、セグメント利益は前年同期を上回る結果となった。

セグメント名売上高前年比セグメント利益前年比
土木事業3,144億円+5.4%573億円+134.4%
建築事業8,668億円+15.8%643億円+79.9%
開発事業等494億円+40.7%94億円+82.7%
海外関係会社7,425億円△3.7%192億円+11.4%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
土木事業3,144億円15%574億円18.2%
建築事業8,669億円40%643億円7.4%
開発事業等494億円2%94億円19.0%
海外関係会社7,425億円35%192億円2.6%

財務状況と資本政策

財務状況については、2026年3月期第3四半期末の総資産は前期末比 1,218億円増加 し、3兆5,764億円 となった。この主な要因は、株価上昇に伴う投資有価証券の評価額増加(+642億円)や、施工進捗に伴う受取手形・完成工事未収入金の増加である。負債面では、有利子負債残高が前期末の7,920億円から 9,459億円 へと 1,539億円増加 した。これは将来の成長投資に向けた資金確保や、運転資金の需要に対応した結果である。

自己資本比率は 37.2% となり、前期末の 36.4% から 0.8ポイント向上 した。利益の積み上げにより自己資本が 1兆3,313億円 に拡大しており、財務の健全性は維持されている。資本政策においては、積極的な株主還元を継続する方針だ。2026年3月期の年間配当予想は、前期の104円から 28円増配 となる 132円(中間56円、期末予想76円)を据え置いた。配当性向の向上と利益成長の両立を図る経営姿勢が鮮明になっている。

また、当期間中に自己株式 547万4,900株(約185億円分)を取得するなど、機動的な資本効率の向上にも取り組んでいる。これにより、1株当たりの利益価値を高め、投資家への還元姿勢をより強固なものとしている。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想について、会社側は中間決算時の上方修正値を維持している。売上高は前期比 4.1%増3兆300億円、営業利益は同 50.1%増2,280億円、純利益は同 35.1%増1,700億円 を見込む。第3四半期までの進捗は極めて順調であり、特に国内建設事業の利益率が想定を上回って推移していることが、通期目標達成への確信を深める要因となっている。

第4四半期には、国内関係会社や海外における不動産開発物件の複数引渡しを予定しており、さらなる利益の上積みが期待される。一方で、海外事業(特に米国)においては、金利の低下や不動産売買市況の改善を見極めるため、一部物件の売却時期を次期以降にスライドさせる柔軟な戦略をとっている。為替レートは1米ドル 156.56円(2025年12月末時点)を前提としており、急激な円高反転がリスク要因として意識されるものの、本業の建設事業の好調がそれを補う見通しだ。

項目前回予想(24/11修正)今回予想(据置)前期実績(25/3期)
売上高3兆円3兆300億円2兆9,118億円
営業利益2,020億円2,280億円1,518億円
経常利益2,000億円2,260億円1,606億円
当期純利益1,550億円1,700億円1,258億円

リスクと課題

好調な業績の裏で、鹿島建設が注視している主なリスクと課題は以下の通りである。

  • 建設コストの継続的な上昇: 鋼材やコンクリートなどの資材価格に加え、人件費の上昇が続いており、新たな受注案件における適切な価格転嫁と原価管理が引き続き重要となる。
  • 施工体制の構築と人材確保: 国内の建設需要は高い水準にあるが、職人の高齢化や若手入職者の減少により、万全な施工体制を維持するためのコストが増大している。
  • 米国の不動産市況: 米国の金利動向やオフィス・倉庫需要の変化が、海外開発事業の物件売却時期や価格に直接影響を与えるリスクがある。
  • 地政学リスクと為替変動: 海外での事業展開が広いため、特定の地域における政情不安や、急激な為替変動による外貨建て資産の評価替え、資材輸入価格への影響が懸念される。

これらのリスクに対し、同社はデジタル技術(DX)の活用による生産性向上や、供給網(サプライチェーン)の最適化、さらには国内外での事業ポートフォリオの分散を進めることで、耐性を強化している。

AIアナリストの視点

鹿島建設の今決算は、日本の建設業界全体が直面する「コスト高」という逆風を、圧倒的な原価管理能力と交渉力で跳ね返した、非常に質の高い内容と言えます。

特筆すべきは土木・建築両事業での利益率の大幅な改善です。前年同期は利益率の低下が懸念材料でしたが、今期は大型案件の収益化がピークを迎え、ゼネコンとしての「稼ぐ力」が完全に戻ってきた印象を受けます。受注高も13%増と好調で、将来の仕事の積み上がり(バックログ)も十分です。

懸念点を挙げるとすれば、海外開発事業(特に米国)の売却タイミングです。市況を見て次期に持ち越す判断は経営として合理的ですが、第4四半期に予定している複数の物件売却が計画通り進むかどうかが、通期目標の上振れを左右するでしょう。

就職活動中の学生にとっても、単なる「古い建設会社」ではなく、DXによる生産性向上や、国内外での不動産開発を収益の柱とする「総合開発・技術企業」としての側面が強調された決算となっており、非常に魅力的な事業フェーズにあることが伺えます。