鹿島建設・2026年3月期通期、営業利益58.5%増の2,407億円——大型案件の収益改善が寄与、400億円の自社株買いも発表
売上高
3.1兆円
+5.3%
通期予想
2.9兆円
営業利益
2,408億円
+58.5%
通期予想
2,000億円
純利益
1,773億円
+40.9%
通期予想
1,700億円
営業利益率
7.8%
鹿島建設が発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前期比 5.3%増 の 3兆672億円、営業利益は同 58.5%増 の 2,407億円 と大幅な増益を記録しました。国内の土木・建築の両事業において大型工事が順調に進捗したほか、徹底した工程管理と追加変更契約の獲得により 採算性が大幅に改善 したことが主因です。また、好調な業績を背景に、上限 400億円 の自社株買いと配当性向 40% を目安とした積極的な株主還元策を打ち出しています。
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、売上高・各利益項目ともに前期を上回り、特に本業の儲けを示す営業利益が激増しました。売上高は 3兆672億7,500万円(前期比 +5.3%)、営業利益は 2,407億8,000万円(同 +58.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は 1,773億3,400万円(同 +40.9%)となりました。
増益の最大の要因は、国内建設市場における「量」から「質」への転換が結実したことです。資材価格の高騰や人手不足といった厳しい外部環境下において、同社は 採算重視の受注戦略 を徹底しました。その結果、最盛期を迎えた大型土木工事や当期に竣工した大型建築案件において、原価低減努力が実り、売上総利益率が前期から大きく改善しました。
| 項目 | 前期実績 (2025/3) | 当期実績 (2026/3) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆9,118億円 | 3兆672億円 | +5.3% |
| 営業利益 | 1,518億円 | 2,407億円 | +58.5% |
| 経常利益 | 1,606億円 | 2,404億円 | +49.6% |
| 当期純利益 | 1,258億円 | 1,773億円 | +40.9% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の建設セグメントが牽引役となり、全ての事業領域で堅調な動きを見せました。特に国内土木と建築の利益伸長が目立っています。
土木事業は、売上高 4,307億円(前期比 +6.6%)、営業利益 767億円(同 +114.9%)と驚異的な伸びを記録しました。大規模なインフラ整備事業や電力関連工事が最盛期を迎え、徹底した施工管理によるコスト削減が 利益率を24.6%(前期15.4%)まで押し上げました。
建築事業も好調で、売上高 1兆1,829億円(前期比 +12.3%)、営業利益 832億円(同 +62.6%)となりました。都市再開発に伴う大型ビルの竣工が相次ぎ、適切な施工体制の構築と追加契約の獲得が収益性を高めました。
海外関係会社は、売上高 1兆919億円(前期比 -2.0%)と微減したものの、欧州や東南アジアでの採算改善により、営業利益は 266億円(同 +32.8%)と増益を確保しました。一方で、米国での金利高止まりにより開発案件の売却時期を次期以降に遅らせる経営判断を下しており、戦略的な「待ち」の姿勢も見られます。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 国内土木 | 4,307億円 | 767億円 | 17.8% |
| 国内建築 | 1兆1,829億円 | 832億円 | 7.0% |
| 開発事業等 | 964億円 | 176億円 | 18.3% |
| 海外関係会社 | 1兆919億円 | 266億円 | 2.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 土木事業 | 4,308億円 | 14% | 767億円 | 17.8% |
| 建築事業 | 1.2兆円 | 39% | 833億円 | 7.0% |
| 開発事業等 | 964億円 | 3% | 176億円 | 18.3% |
| 海外関係会社 | 1.1兆円 | 36% | 267億円 | 2.4% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 1,697億円増 の 3兆6,243億円 となりました。好調な業績を背景に投資有価証券や現金預金が増加した一方、販売用不動産の売却を進めたことで効率的な資産構成への組み換えが進んでいます。
自己資本比率は前期末の 36.4% から 39.0% へと 2.6ポイント向上 し、財務基盤の健全性はさらに高まりました。同社は「持続的な成長と株主還元のバランス」を重視しており、当期の配当金は前期比 42円増 の年 146円(配当性向 38.4%)を決定しました。
さらに、機動的な資本政策として 上限400億円(900万株)の自社株買い の実施を発表しました。これは投資家に対し、資本効率の向上と株主還元の強化という明確なメッセージを発信するものであり、就職活動中の学生にとっても、同社の安定した収益力と株主を重視する経営姿勢を示す重要な指標となります。
通期見通し
2027年3月期の通期見通しについては、売上高 2兆9,000億円(前期比 -5.5%)、営業利益 2,000億円(同 -16.9%)と、 慎重な減収減益予想 を示しています。これは、前期の利益率が例外的に高かった反動に加え、不透明な通商政策や為替変動リスクを織り込んだためです。
| 項目 | 2026/3実績 | 2027/3予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆672億円 | 2兆9,000億円 | △5.5% |
| 営業利益 | 2,407億円 | 200,000億円 | △16.9% |
| 当期純利益 | 1,773億円 | 170,000億円 | △4.1% |
リスクと課題
同社が直面する最大の課題は、建設業界全体の問題でもある 「技能労働者の不足」と「建設コストの上昇」 です。受注環境は堅調ですが、人件費の上昇や資材調達の遅延がプロジェクトの採算を悪化させるリスクを常に孕んでいます。
また、海外事業においては金利動向が不動産取引市況に与える影響が大きく、特に北米市場での売却タイミングの判断が今後の利益成長の鍵を握ります。同社は自動化・省人化技術の開発や、リスク管理体制の更なる強化を通じて、これらの課題を克服し、中長期的な成長を目指す方針です。
鹿島建設の今期決算は、まさに「スーパーゼネコンの底力」を見せつけた内容と言えます。特筆すべきは営業利益の伸び率(+58.5%)で、これは単なる市況の良さだけでなく、不採算案件を排除し、受注後の徹底したコスト管理を行う「利益重視の経営」が実を結んだ結果です。
投資家の視点では、好決算と同時に発表された400億円の自社株買いが好材料です。配当性向40%という目標を掲げ、キャッシュを溜め込まずに市場へ還元する姿勢は高く評価されるでしょう。
一方で、来期予想を控えめに出す「保守的な見通し」はゼネコン特有の傾向ですが、資材高や人手不足の影響をどこまでテクノロジー(自動化施工など)で吸収できるかが今後の焦点となります。就活生にとっても、安定した財務基盤と高い収益性を両立している点は、大きな魅力として映るはずです。
