業界ダイジェスト
株式会社大和証券グループ本社 の会社詳細
株式会社大和証券グループ本社
大和証券グループ本社
2026年3月期 通期
2026年4月27日

大和証券G・2026年3月期通期、営業利益24%増の2,073億円——オリックス銀行を3,700億円で買収、銀行機能を大幅強化

大和証券
8601
増収増益
オリックス銀行
M&A
銀行戦略
増配
新NISA
ウェルスマネジメント
証券業界
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.5兆円

+7.0%

金融費用控除後

7,204億円

+11.5%

営業利益

2,073億円

+24.3%

純利益

1,753億円

+13.5%

営業利益率

14.1%

大和証券グループ本社が発表した2026年3月期通期決算は、委託手数料の増加やM&A業務の好調を背景に、営業利益が前年比24.3%増2,073億円と大幅な増益を記録しました。活況な株式市場を背景に、富裕層向けのウェルスマネジメント部門と投資銀行業務が業績を強力に牽引しました。また、同社は完全子会社の大和ネクスト銀行を通じてオリックス銀行を約3,700億円で買収することを決定し、従来の証券ビジネスに加え、ローンや信託機能を備えた総合金融グループへの転換を加速させています。

業績のポイント

当連結会計年度の業績は、主要な収益指標が軒並み前年を上回る好決算となりました。売上高にあたる営業収益は前年比7.0%増1兆4,679億円、純営業収益は同11.5%増7,204億円に到達しています。特に本業の儲けを示す営業利益は2,073億円(前年比+24.3%)と大きく伸長しました。最終的な親会社株主に帰属する当期純利益も1,752億円(前年比+13.5%)を確保し、株主還元も強化されています。

好業績の背景には、国内株式市場の活況に伴う売買手数料の増加があります。新NISA制度の浸透や株価上昇を受け、個人投資家の投資活動が活発化したことで、エクイティ関連収益が大きく底上げされました。また、コスト面ではシステム投資などの販売費・一般管理費が5,130億円(前年比+7.1%)と増加したものの、収益の伸びがこれを上回り、営業利益率の向上を実現しています。

項目2025年3月期実績2026年3月期実績前年比
営業収益1兆3,720億円1兆4,679億円+7.0%
純営業収益6,459億円7,204億円+11.5%
営業利益1,667億円2,073億円+24.3%
当期純利益1,543億円1,752億円+13.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

ウェルスマネジメント部門は、純営業収益2,957億円(前年比+15.6%)、経常利益1,120億円(前年比+38.9%)と、グループ全体の成長を牽引する柱となりました。市場環境の好転を捉えたコンサルティング営業が功を奏し、エクイティ収益が大幅に増加しました。特に「ファンドラップ」などの預かり資産ビジネスが安定的に推移しており、ストック型収益の積み上がりが利益の安定性に寄与しています。

アセットマネジメント部門は、純営業収益1,119億円(前年比+9.2%)を確保した一方で、経常利益は654億円(前年比15.5%減)と減益を余儀なくされました。公募投資信託の資金流入や株式相場の上昇はプラスに働いたものの、オルタナティブ投資において一部投資先の再評価に伴う減損処理や引当金の計上を行ったことが利益を押し下げる要因となりました。不動産セグメントでの物件売却益などのプラス要因を、評価損が打ち消す形となりました。

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門は、純営業収益2,573億円(前年比+9.9%)、経常利益589億円(前年比+38.0%)と躍進しました。インベストメント・バンキング業務において、国内外で大型のM&Aアドバイザリー案件を多数遂行したことが収益拡大に直結しています。また、機関投資家を相手とするマーケッツ業務でも、活発な株式市場を背景にフロー収益が拡大し、部門全体の収益性を押し上げました。

部門名純営業収益(前年比)経常利益(前年比)
ウェルスマネジメント2,957億円 (+15.6%)1,120億円 (+38.9%)
アセットマネジメント1,119億円 (+9.2%)654億円 (▲15.5%)
グローバル・M&IB2,573億円 (+9.9%)589億円 (+38.0%)
セグメント収益(控除後)構成比営業利益営業利益率
ウェルスマネジメント部門2,958億円41%1,120億円37.9%
アセットマネジメント部門1,119億円16%654億円58.5%
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門2,574億円36%590億円22.9%

※ セグメント収益は金融費用控除後ベース(収益合計のグロス値とは異なります)

戦略トピック:オリックス銀行の買収と銀行戦略

今回の決算における最大のトピックは、オリックス株式会社からオリックス銀行の全株式を取得し完全子会社化することに合意した点です。取得価額は約3,700億円を見込んでおり、2026年10月までの手続き完了を予定しています。この大型買収により、大和証券グループはオリックス銀行が持つ「不動産・信託融資のノウハウ」と「専門人材」を自社の顧客基盤と融合させる狙いがあります。

背景には、日本の「金利ある世界」への移行があります。従来の大和ネクスト銀行は預金集めと市場運用に特化していましたが、今後はオリックス銀行の融資機能を活かし、証券担保ローンや不動産・相続関連融資などの融資ビジネスを本格化させます。これにより、外部環境に左右されやすい証券手数料依存の収益構造から脱却し、金利収支による安定的な収益基盤の構築を急ぐ考えです。

財務状況と資本政策

当連結会計年度末の総資産は、トレーディング商品の増加などにより、前期末から約2兆円増加し38兆776億円となりました。自己資本比率は4.6%と、前期並みの水準を維持しています。一方、利益の蓄積に伴い純資産は2兆458億円まで増加しており、1株当たり純資産額も1,272円72銭(前期末比+113円90銭)へと向上しました。

株主還元については、配当性向を50%以上とする方針を継続しており、年間配当は前期の56円から8円増配となる64円を決定しました。さらに、2027年3月期までの中期経営計画期間中は、1株当たり配当の下限を44円に設定する安定配当策を導入しています。好調な業績をベースに、成長投資と株主還元のバランスを重視した資本政策を推進しています。

リスクと課題

同社が直面する主な課題とリスクは以下の通りです。これらにより、次期の業績予想は「合理的な算定が困難」として未定としています。

  • 市場環境の不確実性: 日本の金融政策変更(利上げ)に伴う市場のボラティリティ上昇や、グローバルな地政学リスクが投資活動を冷え込ませる懸念があります。
  • 買収に伴う統合リスク: オリックス銀行の買収(PMI)において、異なる企業文化の融合やシステム統合が遅延した場合、期待される相乗効果が発揮されないリスクがあります。
  • 競争環境の激化: ネット証券による手数料無料化や、他メガバンクグループによる証券・銀行一体戦略の強化により、顧客獲得競争が一段と厳しさを増しています。
  • 投資先の評価損: アセットマネジメント部門で見られたように、オルタナティブ投資領域における投資先の評価変動が利益の重石となる可能性があります。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も驚くべきは、オリックス銀行を3,700億円という巨額で買収するという経営判断です。これは同社の連結純利益の約2年分に相当する投資であり、単なる「証券会社」から、融資・信託機能を備えた「ハイブリッド型金融グループ」へ脱皮しようとする強い意志が感じられます。

強みと注目点:

  • ウェルスマネジメント部門の利益率向上が著しく、顧客の預かり資産を収益に変える「ストック型モデル」が着実に浸透しています。
  • 銀行買収により、預金という「粘着性の高い資金」を、より収益性の高い不動産融資や信託ビジネスに振り向けることが可能になります。これは利上げ局面で大きなアドバンテージとなります。

懸念点:

  • アセットマネジメント部門での評価損計上は、成長投資として進めてきたオルタナティブ領域の「産みの苦しみ」とも言えます。市場が不安定な中、こうした非公開資産の適正評価とリスク管理が今後の信頼回復の鍵となります。
  • 銀行買収後の統合プロセスにおいて、オリックス銀行が持つ独自の融資文化を維持しつつ、大和証券の顧客紹介とどう有機的に連携させるかが、中期的な株価の焦点になるでしょう。