ホシザキ・2026年12月期Q1、営業利益10.9%増の170億円——国内外で需要旺盛、米州M&Aも寄与
売上高
1,356億円
+14.7%
通期予想
5,200億円
営業利益
170億円
+10.9%
通期予想
556億円
純利益
112億円
+3.5%
通期予想
382億円
営業利益率
12.6%
業務用厨房機器大手のホシザキが発表した2026年12月期第1四半期(1〜3月)決算は、売上高が前年同期比 14.7%増 の 1,355億5,200万円 、営業利益は同 10.9%増 の 170億2,700万円 と増収増益となった。国内ではインバウンド需要の回復に伴う飲食店や宿泊施設の設備投資が堅調に推移し、海外では米州での企業買収の効果やインド市場の成長が大きく貢献した。同社は独自の指標として 「調整後営業利益」 を重視しており、のれん償却費等を除く実質的な収益力も同 19.0%増 と力強い伸びを見せている。
業績のポイント
当第1四半期の連結業績は、売上高・各利益項目ともに前年同期を上回る好調な滑り出しとなった。売上高は 1,355億5,200万円 (前年同期比 +14.7% )に達し、経常利益は 173億2,400万円 (同 +11.0% )、親会社株主に帰属する四半期純利益は 112億1,000万円 (同 +3.5% )を計上した。原材料価格の高騰や人手不足による人件費増といったコストアップ要因はあるものの、主力製品である製氷機や冷蔵庫の拡販、および価格改定の浸透が利益を押し上げた格好だ。
特筆すべきは、同社が経営指標として採用している 「調整後営業利益」 の推移である。これは、企業結合に伴うのれんや無形固定資産の償却費、およびトルコ子会社等での超インフレ会計の影響を控除した数値で、事業本来の「稼ぐ力」をより鮮明に示すものだ。この調整後営業利益は 201億4,700万円 (前年同期比 +19.0% )となり、通常の営業利益を上回る成長率を記録した。積極的なM&Aによって拡大した海外事業の収益性が、償却負担をこなしつつ着実に向上していることを物語っている。
| 項目 | 当第1四半期実績 | 前年同期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,355億円 | 1,181億円 | +14.7% |
| 営業利益 | 170億円 | 153億円 | +10.9% |
| 調整後営業利益 | 201億円 | 169億円 | +19.0% |
| 四半期純利益 | 112億円 | 108億円 | +3.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
日本セグメントは、売上高 650億1,800万円 (前年同期比 +7.1% )、調整後営業利益 114億8300万円 (同 +12.2% )と堅調だった。飲食店向けだけでなく、病院・福祉施設やスーパーマーケットといった「飲食外市場」への深掘りが功を奏している。特に ノンフロン自然冷媒 を使用した環境配慮型製品への買い替え需要が強く、インバウンド需要の回復を背景とした店舗の設備投資意欲も追い風となった。
米州セグメントは、売上高が 351億6,500万円 (同 +30.1% )と大幅な増収を記録した。前連結会計年度に実施した企業買収が大きく寄与し、製氷機やディスペンサの販路が拡大している。利益面では、買収に伴うのれん等の償却負担を考慮した「調整後営業利益」で 25億9,800万円 (同 +35.2% )を確保しており、買収シナジーが着実に顕在化している。米国経済の先行き不透明感はあるものの、顧客との関係強化を通じてシェアを伸ばしている。
欧州およびアジアセグメントも成長が加速している。欧州は、調整後営業利益が前年同期比で 2.1倍 となる 14億8700万円 に急増し、グループ内連携による拡販が実を結んだ。アジアでは、特に経済成長が著しい インド市場 において冷蔵庫等の販売が極めて好調に推移しており、地域全体の売上高を前年同期比 15.6%増 の 236億1,600万円 に引き上げた。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 調整後営業利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 650億円 | +7.1% | 114億円 | +12.2% |
| 米州 | 351億円 | +30.1% | 25億円 | +35.2% |
| 欧州 | 144億円 | +16.3% | 14億円 | +113.1% |
| アジア | 236億円 | +15.6% | 45億円 | +22.3% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 650億円 | 48% | 115億円 | 17.6% |
| 米州 | 352億円 | 26% | 12億円 | 3.3% |
| 欧州 | 145億円 | 11% | 93百万円 | 0.6% |
| アジア | 236億円 | 17% | 43億円 | 18.3% |
財務状況と資本政策
財務状態については、総資産が前期末比 78億4,000万円増 の 5,834億8,700万円 となった。棚卸資産や売掛金が増加した一方で、株主還元や投資に充当する手元資金も厚く維持されている。自己資本比率は 67.4% と極めて高い水準にあり、攻めの投資を継続できる強固な財務基盤が同社の特徴である。
資本政策の面では、株主還元を一段と強化する姿勢が鮮明になっている。当第1四半期において、約 65億7,200万円 (1,286,100株)の 自己株式取得 を実施した。これは「株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記」として報告されており、資本効率の向上と株主への利益還元を両立させる経営判断によるものである。2026年12月期の年間配当予想についても、中間 55円 、期末 60円 の合計 115円 を維持しており、継続的な配当実施を計画している。
通期見通し
2026年12月期の通期連結業績予想については、2024年2月公表の数値を据え置いた。売上高は前期比 7.0%増 の 5,200億円 、営業利益は同 7.1%増 の 556億円 を見込む。第1四半期の進捗は順調だが、世界的な経済情勢の不確実性や、インフレに伴うコスト増加の影響を慎重に見極める姿勢を崩していない。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,200億円 | 修正なし | 4,858億円 | +7.0% |
| 営業利益 | 556億円 | 修正なし | 519億円 | +7.1% |
| 調整後営業利益 | 682億円 | 修正なし | 611億円 | +11.6% |
| 当期純利益 | 382億円 | 修正なし | 381億円 | +0.1% |
リスクと課題
好調な業績の裏側で、同社は複数の外部リスクを注視している。まず、国内市場における 深刻な人手不足 は、顧客である飲食業界の投資判断を遅らせる要因となり得る。また、原材料費や物流費の断続的な上昇に対して、継続的に製品価格へ転嫁できるかどうかが中長期的な採算維持の鍵となる。
海外事業においては、中東地域の地政学リスクや欧州・中国の景気停滞が不透明要因として挙げられる。特にトルコなどインフレが激しい地域での事業運営は、為替変動や会計基準の影響を受けやすく、経営の難易度を高めている。同社はこれらの不確実性に対し、グローバルでのサプライチェーン最適化と、高付加価値製品へのシフトによる利益率向上で対抗する構えだ。
ホシザキの決算で特筆すべきは、M&Aによる成長を「調整後営業利益」という指標で正当化し、投資家に分かりやすく示している点です。従来の日本企業の多くはのれん償却による利益押し下げを懸念しがちでしたが、同社はキャッシュ創出力に裏打ちされた事業の実力をアピールすることで、グローバル企業としての評価を高めています。
就活生の視点では、単なる「冷蔵庫メーカー」ではなく、環境(ノンフロン)やDX(保守サービスの効率化)を軸に、飲食外の成長市場(医療・物流)へシフトしている戦略的な柔軟性に注目すべきです。インド市場の急成長は今後の最大の見所であり、米州での買収案件がどう利益貢献していくかが、通期での上方修正の鍵を握ると見ています。
