長谷工・2026年3月期通期、純利益59.2%増の548億円——施工効率化で利益率向上、次期は100円への増配を計画
売上高
1.3兆円
+8.1%
通期予想
1.4兆円
営業利益
987億円
+16.6%
通期予想
1,100億円
純利益
548億円
+59.2%
通期予想
660億円
営業利益率
7.8%
マンション建設最大手の長谷工コーポレーションが発表した2026年3月期の連結決算は、売上高が前期比 8.1%増 の 1兆2,731億円 、純利益が同 59.2%増 の 548億円 と大幅な増収増益となった。主力の建設事業において工事の進捗が順調だったことに加え、「完成工事総利益率の改善」が利益を大きく押し上げた。同社は株主還元も強化しており、年間配当を前期から10円増の 95円 としたほか、次期は 100円 への増配を計画している。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、売上高 1兆2,731億3,600万円 (前期比 +8.1% )、営業利益 987億4,300万円 (同 +16.6% )、親会社株主に帰属する当期純利益 548億3,900万円 (同 +59.2% )と、すべての指標で前年を上回る好決算となった。特に純利益の伸びが際立っているが、これは完成工事高の増加に伴う増益に加え、前期に計上した減損損失などの反動要因も寄与している。
好業績の背景にあるのは、マンション市場の価格上昇と、同社が進める施工効率化の進展だ。首都圏のマンション平均価格は 9,383万円 と5年連続で過去最高を更新しており、こうした市場環境下で、土地情報収集力を活かした特命受注が堅調に推移した。また、「受注時採算の改善」が実を結び、連結営業利益率は前期の 7.2% から 7.8% へと上昇した。資材価格や労務費の高騰という逆風に対し、生産体制の効率化で対抗した格好だ。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆1,773億円 | 1兆2,731億円 | +8.1% | - |
| 営業利益 | 847億円 | 987億円 | +16.6% | 7.8% |
| 経常利益 | 834億円 | 940億円 | +12.8% | 7.4% |
| 純利益 | 344億円 | 548億円 | +59.2% | 4.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の建設関連事業は、売上高 8,200億8,800万円 (前期比 +5.3% )、営業利益 685億3,600万円 (同 +21.6% )と大幅な増益を達成した。首都圏での供給戸数が絞り込まれる中、200戸以上の大規模物件の受注が順調に推移し、受注時採算の改善によって 「完成工事総利益率」 が向上したことが利益を大きく押し上げた。
不動産関連事業は、売上高 2,902億900万円 (前期比 +16.2% )、営業利益 355億7,900万円 (同 +9.2% )となった。分譲マンションの新規引渡しや収益不動産の売却が活発化したほか、不動産仲介の取扱件数が増加したことが増収に寄与した。マンション価格の高騰が続く中でも、立地の良い物件を中心に実需が衰えていないことが背景にある。
管理運営事業は、売上高 1,585億2,500万円 (前期比 +9.1% )、営業利益 82億1,400万円 (同 +26.6% )と好調を維持している。マンション管理戸数が 44万8,076戸 (同 1.1%増 )に拡大したほか、シニアサービスにおいて有料老人ホームの稼働数が 2,786戸 (同 2.5%増 )と伸びた。ストック型ビジネスとして安定した収益基盤を構築している。
海外事業については、売上高 43億1,400万円 に対し、営業損失 60億8,100万円 (前期は56億6,300万円の損失)を計上した。ハワイ州オアフ島での戸建分譲事業や商業施設運営を継続しているが、先行投資やプロジェクトの進捗に伴う経費が先行している段階にある。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 前期比(利益) |
|---|---|---|---|
| 建設関連 | 8,200億円 | 685億円 | +21.6% |
| 不動産関連 | 2,902億円 | 355億円 | +9.2% |
| 管理運営 | 1,585億円 | 82億円 | +26.6% |
| 海外 | 43億円 | △60億円 | - |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 建設関連事業 | 8,201億円 | 64% | 685億円 | 8.4% |
| 不動産関連事業 | 2,902億円 | 23% | 356億円 | 12.3% |
| 管理運営事業 | 1,585億円 | 13% | 82億円 | 5.2% |
財務状況と資本政策
2026年3月末時点の総資産は、前期末比 525億円増 の 1兆4,177億円 となった。手許現金の増加が主な要因である。自己資本比率は 39.7% (前期末は39.0%)と高い水準を維持しており、経営の健全性は強固だ。有利子負債は 4,259億円 と 54億円 増加したが、純利益の積み上がりにより自己資本が充実したことが比率の改善につながった。
資本政策においては、2025年2月に策定した中期経営計画「HASEKO Evolution Plan」に基づき、「総還元性向50%程度」を目標に掲げている。これを受け、当期の年間配当は前期の85円から10円増配の 95円 とし、配当性向は 46.4% となった。また、当期中に約 200億円 の自己株式取得を実施しており、利益の成長を積極的に株主へ還元する姿勢を明確にしている。
戦略トピック:ウッドフレンズの買収による木質化推進
今期の重要な経営判断として、2025年6月に実施した 「株式会社ウッドフレンズの連結子会社化」 が挙げられる。これは、脱炭素社会の実現に向けた「マンションの木造化・木質化」を加速させるための戦略的買収である。ウッドフレンズは国内材の活用に強みを持ち、林業から建築・販売まで一貫した体制を有している。
長谷工はこの買収により、自社独自のハイブリッド木造住宅の開発を一段と進める。マンションの共用棟や内装における木材活用を広げることで、環境負荷の低減と居住空間の付加価値向上を同時に狙う。単なる規模拡大ではなく、「持続可能な住まいづくり」というESGの観点からも重要な投資と位置づけられる。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想について、同社はさらなる増収増益を見込んでいる。売上高は前期比 8.4%増 の 1兆3,800億円 、営業利益は同 11.4%増 の 1,100億円 を計画する。マンションの供給単価上昇が続く中、豊富な受注残を背景に安定した収益確保を目指す方針だ。
配当についても、さらなる還元強化を打ち出している。2027年3月期の年間配当は 100円 と大台に乗せる予想を発表した。これは計画期間内の 「累進配当」 の実施を約束するものであり、投資家にとっての予見可能性を高めている。次期の予想配当性向は 40.1% となる見込みだ。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,731億円 | 1兆3,800億円 | +8.4% |
| 営業利益 | 987億円 | 110,000億円 | +11.4% |
| 純利益 | 548億円 | 660億円 | +20.4% |
| 年間配当 | 95円 | 100円 | +5円 |
リスクと課題
好調な業績の裏で、建設業界特有のリスクについても言及されている。主な懸念点は以下の通りである。
- 資材・労務費のさらなる高騰: 地政学リスクや円安の影響により、建築コストが一段と上昇するリスクがある。
- 労働力不足と「2024年問題」: 時間外労働の上限規制適用に伴う働き方改革への対応が必須となっており、技能労働者の確保が喫緊の課題となっている。
- 金利動向の影響: 変動型住宅ローン金利の動向次第では、消費者のマンション購入マインドが冷え込む可能性がある。
同社はこれらの課題に対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した設計施工情報のデジタル化や、AIによる効率化で生産性を高め、コスト競争力を維持する方針を示している。
長谷工コーポレーションの決算は、単なる建設会社から「住宅のトータルサービス企業」への脱皮が着実に進んでいることを示しています。
特筆すべきは、建築資材高騰という逆風下で 営業利益率を7.8%まで高めた施工管理能力 です。他社がコスト増に苦しむ中で、圧倒的なマンション供給シェアを背景とした調達力と、特命受注による適正利益の確保が効いています。
また、配当性向を意識した還元姿勢に加え、次期の 100円配当予告 は、市場に対して強い自信を示したものと言えます。ウッドフレンズの買収による「木造化」へのシフトは、環境規制が強まる将来を見据えた先行投資として、長期的な競争優位性につながるか注目されます。
