古河電工・2026年3月期Q3、純利益2.1倍の355億円——データセンタ需要と円安で上方修正、40円の大幅増配
売上高
9,489億円
+7.6%
通期予想
1.3兆円
営業利益
351億円
+11.9%
通期予想
560億円
純利益
355億円
+117.0%
通期予想
540億円
営業利益率
3.7%
古河電気工業が2月9日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)連結決算は、売上高が前年同期比 7.6%増 の 9,488億円 、最終的な儲けを示す純利益は同 2.1倍 の 355億円 と大幅な増益を記録した。データセンタ向け投資需要の継続や円安による押し上げ効果に加え、政策保有株式の売却益などが利益を大きく底上げした。同社は業績の好調を受け、通期予想の上方修正と年間40円の増配を同時に発表している。

業績のポイント
当第3四半期の連結累計期間は、全般的に堅調な需要環境に恵まれた。売上高は 9,488億円 (前年同期比 7.6%増 )、営業利益は 351億円 (同 11.9%増 )となり、情報通信や自動車部品などの主力事業が収益を牽引した。特に営業外では円安に伴う為替差損益の改善や持分法投資利益の増加が寄与し、経常利益は 407億円 (同 12.8%増 )に達している。
親会社株主に帰属する四半期純利益は 355億円 (同 117.0%増 )と、前年同期の 163億円 から2倍以上の急拡大を見せた。これは本業の回復に加え、投資有価証券売却益として184億円を特別利益に計上したことや、退職給付制度の改定に伴う利益が寄与したためである。1株当たり純利益も 504.31円 と、前年同期の 232.17円 から大幅に向上している。
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別の状況を見ると、データセンタ市場の活況を背景とした「インフラ」部門の躍進が目立つ。一方で、原材料価格の高騰が利益を圧迫する領域も見られた。
| セグメント名 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| インフラ | 2,621億円 | +17.8% | 82億円 | +75億円 | データセンタ向け好調 |
| 電装エレクトロニクス | 5,598億円 | +3.6% | 214億円 | △3.8% | ワイヤハーネス堅調 |
| 機能製品 | 1,192億円 | +6.4% | 106億円 | △13.0% | 銅価高騰が影響 |
| サービス・開発等 | 304億円 | +16.1% | △50億円 | 13億円悪化 | 研究開発費の負担 |
インフラ事業では、情報通信ソリューションがデータセンタ関連製品の売上増により利益を押し上げた。エネルギー分野でも国内の超高圧・再エネ関連の需要が引き続き堅調だった。一方、電装エレクトロニクス事業は、主力の自動車用ワイヤハーネスが堅調に推移したものの、為替や銅価格の影響に加え、事業分離を決定した電池事業(古河電池)の売上減少が響き、利益面では微減となった。機能製品事業については、データセンタ関連は伸びたものの、銅価高騰や台湾ドル高によるコスト増、半導体用テープの需要変化が利益を押し下げる要因となった。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| インフラ | 2,621億円 | 28% | 82億円 | 3.1% |
| 電装エレクトロニクス | 5,598億円 | 59% | 214億円 | 3.8% |
| 機能製品 | 1,192億円 | 13% | 106億円 | 8.9% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 399億円増加 し、 1兆279億円 となった。投資有価証券の時価上昇や棚卸資産の増加が主な要因である。負債については、コマーシャル・ペーパーの発行などにより借入金が増加した一方、純利益の積み上げにより自己資本も充実した。この結果、自己資本比率は前期末の 34.6% から 36.7% へと 2.1ポイント上昇 し、財務体質の改善が進んでいる。
株主還元策については、期末配当予想を従来の120円から160円へと、40円の大幅な増額修正を行った。これは好調な業績推移に加え、資本効率の向上と株主への利益還元を重視する経営姿勢を示したものである。通期の1株当たり純利益予想 767.00円 に対しても安定した還元水準を維持する方針だ。
通期見通しの上方修正
同社は、最新の市場環境や為替動向を反映し、2026年3月期の通期業績予想を上方修正した。想定以上の円安推移が全セグメントでプラスに働いたほか、自動車部品や情報通信分野での需要が前回予想時を上回る見込みとなったためだ。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績(参考) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,700億円 | 1兆3,000億円 | 1兆2,017億円 |
| 営業利益 | 480億円 | 560億円 | 470億円 |
| 経常利益 | 520億円 | 65,000億円 | 485億円 |
| 当期純利益 | 350億円 | 54,000億円 | 333億円 |
特に純利益については、有価証券売却益などの特殊要因に加え、営業利益の積み増しが効く形となる。ただし、機能製品セグメントでは銅価高騰の影響を慎重に見込んでおり、セグメント間で明暗が分かれるものの、全体としては過去最高水準の利益を見込んでいる。
戦略トピック:古河電池の事業分離
今回の決算における重要な経営判断として、連結子会社であった古河電池の事業分離(株式譲渡)が挙げられる。同社は2025年12月24日付で、アドバンテッジパートナーズ等のファンドが出資する特別目的会社へ古河電池を譲渡した。これは中期経営計画で掲げる「事業ポートフォリオの見直し」の一環である。
かつてはグループの有力事業であった電池部門を切り離すことで、成長分野である次世代インフラ(データセンタ等)やオートモビリティへの経営資源集中を鮮明にした。分離に伴い、今後は連結売上高が減少するものの、資本効率の改善と財務の健全化を加速させる狙いがある。
リスクと課題
経営陣は今後のリスク要因として、以下の点を挙げている。
- 原材料価格の変動: 銅価格やエネルギー価格の高騰が続いており、製品価格への転嫁が遅れるリスクがある。
- 為替変動の影響: 足元では円安が寄与しているが、急速な円高局面への転換は収益を圧迫する要因となる。
- 地政学リスクとサプライチェーン: 海外展開が進む中で、地域的な紛争や貿易規制による供給網の分断が懸念される。
- 構造改革の進捗: 古河電池に続く不採算事業や低成長事業の再編が、計画通りに進むかが焦点となる。
古河電工の今回の決算は、まさに「攻めと守りの経営」が結実した内容と言えます。
特筆すべきは、単なる円安の恩恵だけでなく、データセンタ需要という明確な成長の波をインフラ事業で捉えられている点です。また、長年の課題であった古河電池の事業分離を断行したことは、同社が「伝統的な電線メーカー」から「高付加価値なインフラ・電装メーカー」へ脱皮しようとする強い意志を感じさせます。
投資家視点では、政策保有株式の売却益を原資の一部としつつも、40円という大幅な増配に踏み切った点が評価されます。これは資本効率(ROE)の向上を求める市場の要請に応えるものであり、低PBR改善に向けた具体的なアクションとして好感されるでしょう。
懸念点は機能製品部門に見られるコスト転嫁の難しさですが、不採算事業の切り離しによる利益率の底上げが進めば、構造的な収益力はさらに高まるはずです。就活生にとっても、同社は安定したインフラ企業という側面だけでなく、ダイナミックな事業再編を推進する変革期の企業として魅力的に映るのではないでしょうか。
