古河電工・2026年3月期通期、純利益2.1倍の725億円——データセンタ需要が追い風、配当方針にDOE導入
売上高
1.3兆円
+8.8%
通期予想
1.5兆円
営業利益
639億円
+35.8%
通期予想
950億円
純利益
725億円
+117.4%
通期予想
820億円
営業利益率
4.9%
古河電気工業が発表した2026年3月期通期決算は、売上高が1兆3,075億円(前期比+8.8%)、営業利益が638億円(同+35.8%)と大幅な増収増益となった。AI投資の拡大に伴う光ファイバなどデータセンタ関連製品の伸長や、自動車部品の堅調な推移に加え、販売価格の適正化が寄与した。親会社株主に帰属する当期純利益は725億円(同+117.4%)と前期から倍増しており、成長事業への集中と構造改革が着実に実を結んでいる。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、世界的なデジタル化の進展を背景としたインフラ投資が強力な牽引役となった。売上高は1兆3,075億円(前期比+8.8%)に達し、営業利益も638億円(同+35.8%)と高い伸びを記録した。増益の主因は、AI関連を中心とした設備投資の活発化により、高付加価値な光通信製品の販売が拡大したことにある。
利益面では、売上増加による利益押し上げ効果に加え、生産性の改善や原材料価格の変動に応じた販売価格の適正化が進んだ。経常利益は758億円(同+56.4%)となり、さらに投資有価証券の売却益や退職給付制度の改定に伴う特別利益を計上したことで、純利益は725億円(同+117.4%)と過去最高水準の大幅な増益を達成した(前年の純利益は333億円)。
| 指標 | 当期実績 | 前期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,075億円 | 1兆2,017億円 | +8.8% |
| 営業利益 | 638億円 | 470億円 | +35.8% |
| 経常利益 | 758億円 | 485億円 | +56.4% |
| 当期純利益 | 725億円 | 333億円 | +117.4% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
各セグメントにおいて事業環境の変化に対応した戦略が奏功している。特にインフラ部門の収益性向上が顕著であり、グループ全体の成長をリードしている。
インフラ事業は、売上高3,708億円(前期比+20.0%)、営業利益214億円(同+276.1%)と劇的な改善を見せた。データセンタ向けのローラブルリボンケーブルや高付加価値なレーザダイオードチップなどの光関連製品が北米を中心に好調だったことが主要因だ。また、電力インフラにおいても再生可能エネルギー向けの海底線需要が底堅く推移し、事業運営体制の刷新による効率化も寄与した。
電装エレクトロニクス事業は、売上高7,650億円(前期比+3.9%)、営業利益338億円(同+3.9%)を確保した。米国の通商政策や為替の影響、人件費高騰という逆風があったものの、国内向けワイヤハーネスの堅調な需要や、エレクトロニクス材料における高付加価値製品の販売拡大でカバーした。銅地金価格の高騰も売上高を押し上げる要因となった。
機能製品事業は、売上高1,610億円(前期比+9.6%)、営業利益153億円(同+8.9%)となった。データセンタ関連投資の活況を背景に、放熱・冷却製品や半導体製造用テープが好調に推移した。2025年度より稼働を開始した新工場による供給体制の強化も、収益拡大を支える基盤となっている。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 前年比(利益) |
|---|---|---|---|
| インフラ | 3,708億円 | 214億円 | +276.1% |
| 電装エレクトロニクス | 7,650億円 | 338億円 | +3.9% |
| 機能製品 | 1,610億円 | 153億円 | +8.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| インフラ | 3,709億円 | 28% | 214億円 | 5.8% |
| 電装エレクトロニクス | 7,651億円 | 59% | 339億円 | 4.4% |
| 機能製品 | 1,611億円 | 12% | 154億円 | 9.5% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比783億円増の1兆664億円となった。現預金や棚卸資産の増加に加え、株価上昇に伴う投資有価証券の評価増が要因である。一方、有利子負債は3,167億円と、前年末比で105億円の増加に留め、自己資本比率は前年末の34.6%から39.1%へと4.5ポイント改善し、財務体質の強化が進んでいる。
資本政策においては、積極的な株主還元策を打ち出した。今期の年間配当は前期の120円から大幅増額となる210円を実施する。さらに、今後の配当指標として単年度の業績に左右されにくい株主資本配当率(DOE)3.5%を目途とする新方針を導入した。また、投資家層の拡大を目的として、2026年7月1日を効力発生日とする1株から10株への株式分割の実施も決定した。
通期見通しと戦略トピック
2027年3月期の連結業績予想は、売上高1兆4,600億円(前期比+11.7%)、営業利益950億円(同+48.8%)とさらなる成長を見込んでいる。データセンタ市場の活況継続に加え、事業構造の変革が収益にフル寄与する見通しだ。
戦略的な動きとして、富士通オプティカルコンポーネンツの買収完了が挙げられる。これにより、5G/B5G時代に不可欠な光デバイス技術を強化し、世界トップレベルのシェア獲得を狙う。一方で、古河電池の株式譲渡や中国における電力ケーブル事業の持分譲渡など、不採算・ノンコア事業の切り離しを大胆に進めており、リソースを成長分野である「情報・エネルギー・モビリティー」の融合領域へ集中させる姿勢を鮮明にしている。
| 項目 | 2027年3月期予想 | 2026年3月期実績 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,600億円 | 1兆3,075億円 | +11.7% |
| 営業利益 | 950億円 | 638億円 | +48.8% |
| 純利益 | 820億円 | 725億円 | +13.1% |
リスクと課題
好調な業績の一方で、経営陣は以下のリスク要因を注視している。
- 外部環境の不透明感: 米国の通商政策による調達コスト増加や、中東情勢の緊迫化による物流網への影響。
- 市況変動リスク: 銅地金価格の大幅な変動が製品マージンや棚卸資産に与える影響。
- 事業競争の激化: 中国市場における景気減速とそれに伴う価格競争の激化(特に電力ケーブル分野)。
- 労働力不足: 国内外における人件費の上昇および高度な専門スキルを持つ人材の確保・育成。
今回の決算で最も注目すべきは、単なる利益成長だけでなく、「稼ぐ力の構造的変化」が見える点です。
- 収益構造の転換: かつては銅価などの市況に左右されやすい「素材メーカー」の側面が強かったですが、現在はAIやデータセンタという成長分野で光デバイス等の高付加価値製品を供給する「ソリューション・プロバイダー」への脱皮が成功しつつあります。特にインフラ事業の利益率改善は目覚ましいものがあります。
- 大胆なポートフォリオ管理: 古河電池の売却や富士通系光コンポーネント事業の買収など、25中計で掲げた「選択と集中」を口先だけでなく実行に移している点が投資家から高く評価されるポイントでしょう。
- 株主還元の強化: 利益成長を背景に、配当指標をDOE(株主資本配当率)へ切り替えたことは、安定的な還元を重視する姿勢の現れであり、資本効率を意識した経営(ROIC重視)への本気度が伺えます。今後、株式分割による流動性向上も相まって、市場での再評価(リレーティング)が期待できる内容です。
