業界ダイジェスト
大東建託株式会社 の会社詳細
大東建託株式会社
大東建託
2026年3月期 通期

大東建託・2026年3月期、営業利益13.8%増の1,352億円——開発事業の躍進で増収増益、都心開拓へTOB始動

大東建託
増収増益
入居率98%
株式分割
M&A
TOB
不動産開発
建設業界
THEグローバル社
配当性向50%
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2.0兆円

+7.7%

通期予想

2.0兆円

進捗率97%

営業利益

1,353億円

+13.8%

通期予想

1,420億円

進捗率95%

純利益

990億円

+5.5%

通期予想

1,080億円

進捗率92%

営業利益率

6.8%

大東建託が4月30日に発表した2026年3月期連結決算は、売上高が前期比 7.7% 増の 1兆9,847億円、営業利益が同 13.8% 増の 1,352億円 となり、増収増益を達成した。資材高騰や人件費増が響く建設事業の停滞を、高水準の入居率を背景とした賃貸事業の安定成長と、M&A効果で収益が急拡大した不動産開発事業が力強く牽引した。同社は併せて、都心での住宅開発に強みを持つ THEグローバル社の完全子会社化(TOB) を発表し、成長投資への強い意欲を示している。

トーク

大東建託 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

2026年3月期の業績は、主力事業の安定感と成長分野の急拡大が際立つ結果となった。売上高は 1兆9,847億円(前期比 +7.7%)、営業利益は 1,352億円(前期比 +13.8%)と、いずれも着実な伸びを記録している。新設住宅着工戸数が全国的に前年同期比 10.9% 減と落ち込む厳しい市場環境下において、この増収増益は特筆すべき成果といえる。

利益面では、賃貸住宅の 入居率が98.0% という極めて高い水準を維持したことが、ストックビジネスとしての収益基盤を盤石にした。また、2025年10月に実施した 1対5の株式分割 を経ても、配当性向 50% を維持する方針を貫いている。純利益は 990億円(前期比 +5.5%)を確保し、株主還元と成長投資のバランスを重視した経営判断が明確に現れた決算内容となっている。

項目2025年3月期実績2026年3月期実績前期比
売上高1兆8,423億円1兆9,847億円+7.7%
営業利益1,188億円1,352億円+13.8%
経常利益1,294億円1,391億円+7.5%
親会社株主に帰属する当期純利益938億円990億円+5.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、不動産開発事業が「第三の柱」として急速に存在感を高めている。同事業の売上高は 1,470億円(前期比 +186.5%)、営業利益は 185億円(前期比 +259.8%)と爆発的な成長を遂げた。これは連結子会社化したアスコット社の寄与に加え、買取再販や投資用マンションの販売が極めて好調に推移したためである。

最大セグメントである不動産賃貸事業は、売上高 1兆2,030億円(前期比 +3.3%)、営業利益 855億円(前期比 +6.5%)と堅調だった。「賃貸経営受託システム」による一括借上物件の増加が収益を押し上げ、居住用物件の入居率は前年比0.2ポイント上昇の 98.0% に達した。空室リスクを抑え、安定した家賃収入を得るビジネスモデルが、グループ全体の利益を下支えしている。

一方で、建設事業は課題を残した。売上高は 5,442億円(前期比 +0.6%)と微増にとどまり、営業利益は 451億円(前期比 -4.2%)と減益を余儀なくされた。受注工事高も前期比 4.4% 減の 5,705億円 と苦戦している。この背景には、深刻な建設資材の高騰と人件費の上昇があり、完成工事総利益率の改善を図ったものの、販管費の増加を吸収しきれなかった形だ。

セグメント売上高前期比営業利益前期比
建設事業5,442億円+0.6%451億円△4.2%
不動産賃貸事業1兆2,030億円+3.3%855億円+6.5%
不動産開発事業1,470億円+186.5%185億円+259.8%
その他事業902億円+5.7%195億円△1.8%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
建設事業5,443億円27%451億円8.3%
不動産賃貸事業1.2兆円61%856億円7.1%
不動産開発事業1,471億円7%185億円12.6%

財務状況と資本政策

財務基盤については、事業拡大に伴う資産の積み増しが進んでいる。総資産は前期末比 1,455億円 増の 1兆3,675億円 となった。主な要因は、積極的な物件開発に伴う販売用不動産の増加(+485億円)や、手元流動性を確保するための現金預金の増加(+391億円)である。自己資本比率は 36.5%(前期末比1.9ポイント低下)となったが、依然として健全な水準を維持している。

資本政策では、機動的な株主還元と投資の並行を鮮明にしている。当期の配当は、株式分割前の基準で年間 752円 となり、前期(714円)から大幅な 増配 を実施した。また、2026年1月から2月にかけて約 250億円 の自社株買いを完了させるなど、資本効率の向上にも余念がない。これは、安定的なキャッシュフローを生む賃貸事業の強みを背景に、成長投資と株主還元の両立を目指す経営姿勢の表れといえる。

戦略トピック:THEグローバル社のTOBと都心戦略

今決算における最大の注目点は、決算発表と同時に明かされた 株式会社THEグローバル社に対する公開買付け(TOB) である。取得総額は約 174億円 を見込み、完全子会社化を目指す。大東建託はこれまで地方や郊外での賃貸住宅に強みを持っていたが、都心部での分譲・収益物件開発に定評のある同社を取り込むことで、手薄だった首都圏市場を一気に開拓する狙いだ。

この買収により、不動産開発事業の売上規模はさらに拡大し、2030年までの目標とする「不動産投資額1,000億円」の早期達成に現実味を帯びてきた。既存のアスコット社との相乗効果も期待でき、単なる「アパート建設会社」から、都心レジデンスも含めた 総合不動産開発企業 への変貌を加速させている。

リスクと課題

好調な決算の裏で、外部環境の変化に伴うリスクも顕在化している。会社側が特に注視しているのは以下の点である。

  • 建設コストの継続的な上昇: 鋼材や木材などの資材価格に加え、物流2024年問題に伴う運送費や人件費の高騰が建設セグメントの採算を圧迫している。
  • 金利上昇の影響: 国内の金利上昇局面において、顧客の資金調達コストが増加し、アパート経営の新規需要が抑制される懸念がある。
  • 新設着工の減少: 賃貸住宅着工戸数が全国的に2桁減となる中、エリア適正化による受注の質的向上が急務となっている。

通期見通し

2027年3月期の通期予想について、売上高はついに 2兆円 の大台に乗る 2兆500億円(前期比 +3.3%)を見込む。営業利益は 1,420億円(同 +5.0%)と、さらなる増益を計画している。都心戦略の成否が、建設事業の停滞をどれだけカバーできるかが今後の焦点となる。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高1兆9,847億円2兆500億円+3.3%
営業利益1,352億円1,420億円+5.0%
純利益990億円1,080億円+9.1%
AIアナリストの視点

大東建託の今回の決算は、旧来の「アパート建設一本足打法」からの脱却が鮮明になった分岐点といえます。

  • 強み: 賃貸事業の営業利益率が安定しており、入居率98%という数字は驚異的なブランド力と管理能力を示しています。これが潤沢なキャッシュを生み、攻めのM&A(アスコット、THEグローバル社)を可能にしています。
  • 懸念点: 建設事業の利益率低下は深刻で、資材高を価格転嫁しきれない業界共通の課題に直面しています。受注残高も減少傾向にあり、新規開拓の難易度が上がっています。
  • 注目ポイント: THEグローバル社の買収により、首都圏のドミナント戦略がどう機能するかが焦点です。就活生にとっては、従来の営業イメージから「都市開発・投資のプロ集団」へと社風が変化している過渡期である点は見逃せません。