大東建託・2026年3月期Q3、売上高6%増の1兆4,435億円——開発事業が大幅増益で牽引、通期予想を上方修正
売上高
1.4兆円
+6.0%
通期予想
2.0兆円
営業利益
1,066億円
+3.7%
通期予想
1,350億円
純利益
762億円
-0.9%
通期予想
950億円
営業利益率
7.4%
大東建託が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 6.0%増 の 1兆4,435億円、営業利益は 3.7%増 の 1,065億円 と増収増益を確保しました。建設資材の高騰や完工時期の偏りにより主力の一角である建設事業が苦戦したものの、不動産開発事業の連結化効果や販売好調 が業績を大きく押し上げました。好調な進捗を受け、通期の業績予想を上方修正するとともに、約250億円規模の自社株買い を発表するなど、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしています。

業績のポイント
当第3四半期累計期間の日本経済は、賃上げによる個人消費の下支えや設備投資の回復が見られた一方で、エネルギー・資材価格の高止まりが続く不透明な環境となりました。このような中、大東建託の売上高は前年同期比 6.0%増 の 1兆4,435億7,100万円 と堅調に推移しました。営業利益は 3.7%増 の 1,065億8,700万円、経常利益は 0.4%増 の 1,092億1,600万円 となっています。
親会社株主に帰属する四半期純利益については、前年同期比 0.9%減 の 761億9,600万円 と微減となりましたが、これは前年同期に計上された特殊要因の反動によるもので、事業自体は総じて堅調です。特に 不動産開発事業の利益が前年比2.6倍 に急拡大しており、資材高に苦しむ建設事業を補完する成長エンジンとして機能しています。また、1株当たり純利益は 229.53円(株式分割考慮後)となりました。
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、不動産開発事業の躍進と不動産賃貸事業の安定性が際立つ結果となりました。主力3事業の状況は以下の通りです。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 3,980億円 | △0.7% | 310億円 | △15.1% |
| 不動産賃貸事業 | 8,945億円 | +3.1% | 673億円 | +7.9% |
| 不動産開発事業 | 877億円 | +159.5% | 95億円 | +160.6% |
建設事業 は、建築費の高騰や完工予定が下期に偏重した影響を受け、減益を余儀なくされました。完成工事総利益率は 25.1% と前年から 0.2ポイント 低下しています。一方、不動産賃貸事業 は、一括借上物件の増加と高水準の入居率(居住用 97.4%)を背景に、安定したストック収益を計上しました。
特筆すべきは 不動産開発事業 です。株式会社アスコットの連結子会社化に加え、収益不動産の販売棟数が大幅に増加したことで、売上・利益ともに前年同期から倍増以上の成長を遂げました。このほか「その他の事業」では、ガス供給や介護事業が利用者増により増収となりましたが、金融事業において調達金利の上昇が利益を圧迫する局面も見られました。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 3,981億円 | 28% | 310億円 | 7.8% |
| 不動産賃貸事業 | 8,945億円 | 62% | 673億円 | 7.5% |
| 不動産開発事業 | 878億円 | 6% | 95億円 | 10.8% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末比 763億円増加 し、1兆2,983億円 となりました。これは主に、開発用不動産や仕掛販売用不動産の積み増しによるものです。自己資本比率は 38.1% と、前期末から 0.3ポイント 低下したものの、依然として強固な財務基盤を維持しています。
資本政策においては、2025年10月1日付で 1対5の株式分割 を実施し、投資家層の拡大を図っています。また、2026年1月30日に決定した 自己株式の取得(250億円を上限) は、2月10日までに市場を通じて順調に完了しました。これにより、1株当たりの価値向上と資本効率の改善を並行して進めています。配当については、分割後の中間配当として 342円(分割前換算)を支払い済みで、期末配当予想は 74.60円(分割後)としています。
通期見通し
不動産開発事業の好調な進捗と不動産賃貸事業の安定推移を鑑み、通期の連結業績予想を上方修正しました。売上高、各利益ともに前回発表値を上回る見込みです。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,700億円 | 1兆9,800億円 | 1兆8,423億円 | +0.5% |
| 営業利益 | 1,250億円 | 1,350億円 | 1,188億円 | +8.0% |
| 純利益 | 900億円 | 950億円 | 938億円 | +5.6% |
修正の背景には、収益不動産の販売が計画を上回るペースで進んでいること や、入居率の維持による家賃収入の堅調さがあります。一方で、依然として資材価格の動向や金利上昇リスクには注視が必要な状況ですが、開発事業という新たな収益の柱が確立されたことで、ポートフォリオの多角化による耐性が強まっていると言えます。
リスクと課題
同社が直面する主な課題とリスクは以下の通りです。
- 建築コストの変動: 鋼材や木材、エネルギー価格の高止まりが建設事業の利益率を圧迫する要因となっており、価格転嫁やコストダウンの徹底が求められています。
- 金利上昇の影響: 国内の金利上昇は、金融事業における調達コスト増加や、顧客の不動産投資意欲の減退につながるリスクがあります。
- 市場環境の変化: 新設住宅着工戸数が全国的に減少傾向(前年同期比 13.7%減)にある中、既存エリアの適正化と新たな付加価値提案による受注確保が急務となっています。
- 地政学リスク: 国際情勢の不安定化によるサプライチェーンへの影響が、部材調達の遅延を招く可能性が言及されています。
大東建託の今回の決算は、これまでの「賃貸管理一本足打法」からの脱却が鮮明になった点が評価できます。特にアスコットの買収を含めた不動産開発事業へのシフトが、建設資材高による利益圧縮を見事にカバーしました。
投資家目線では、1対5という大胆な株式分割と、約250億円もの自社株買いをセットで行う「株主還元への本気度」がポジティブです。一方で、就活生にとっては、従来の「アパート経営の営業」というイメージだけでなく、開発や金融、エネルギー、介護など、多角的な事業展開を行う総合不動産企業としての側面を理解しておくことが重要でしょう。
懸念点は建設事業の利益率低下です。受注高も前年比で微減しており、建築費高騰に対して顧客がどこまで付いてこれるかが今後の焦点となります。金利上昇局面において、投資利回りをどう確保し、建設需要を維持できるかが、次のステージへの試金石となるでしょう。
