業界ダイジェスト
関西電力株式会社 の会社詳細
関西電力株式会社
関西電力
2026年3月期 通期

関西電力・2026年3月期通期、純利益9.6%減の3,800億円——燃料費調整で減収も年間75円へ増配

関西電力
増配
自己資本比率
原子力発電
燃料費調整制度
インフラ
きんでん
資産売却
GX
就活
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

4.1兆円

-6.5%

通期予想

4.5兆円

進捗率90%

営業利益

4,376億円

-6.7%

通期予想

2,500億円

進捗率175%

純利益

3,801億円

-9.6%

通期予想

3,100億円

進捗率123%

営業利益率

10.8%

関西電力が発表した2026年3月期(2025年度)の連結決算は、売上高が前年同期比 6.5%減4兆566億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同 9.6%減3,800億円 となった。燃料価格の下落に伴う燃料費調整制度の影響で減収となったが、期末配当を前回予想から引き上げ、年間では前期比15円増の 75円 とする。財務体質の改善が進む一方、次期は原子力の定期検査増による利用率低下を見込み、保守的な業績予想を提示した。

トーク

関西電力 2026年3月期 通期決算

さくら × けんじ の対話形式解説

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業績のポイント

当連結会計年度の業績は、前年度の歴史的な高水準からは一転して、売上高・各利益項目ともに前年を下回る結果となった。主力のエネルギー事業において、燃料価格の下落を電気料金に反映させる燃料費調整制度の影響により、販売電力料収入が減少したことが減収の主因である。

一方で、支出面では他社からの購入電力料や火力発電用の燃料費が大幅に減少(前年比 -6.4%)した。これにより、売上高の減少分を一定程度相殺し、営業利益は 4,375億円(前年比 -6.7%)を確保した。経常利益についても、為替差益の増加などが寄与し、前年比 2.5%減5,185億円 と微減にとどめている。

項目2025年3月期(前期)2026年3月期(当期)前年同期比
売上高4兆3,371億円4兆566億円-6.5%
営業利益4,688億円4,375億円-6.7%
経常利益5,316億円5,185億円-2.5%
親会社株主に帰属する当期純利益4,203億円3,800億円-9.6%

就職活動中の学生や投資家が注目すべきは、純利益が 3,800億円 と高水準を維持している点だ。これは中期経営計画「KX」で掲げた財務目標を概ね達成する水準であり、エネルギー価格の激しい変動下でも収益基盤の強靭化が進んでいることを示唆している。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、エネルギー事業が減益となった一方、送配電や生活・ビジネスソリューション事業が利益を伸ばし、多角化戦略が功を奏している。

エネルギー事業は、売上高が 3兆2,613億円(前年比 -7.9%)、セグメント利益(経常利益)が 3,773億円(同 -8.3%)となった。販売電力料収入の減少が響いた形だが、原子力発電所の高稼働(利用率 84.1%)を維持したことで、高価な火力発電燃料の消費を抑制し、利益の急落を防いだ。

送配電事業は、売上高が 3,862億円(同 -0.7%)と横ばいだったが、セグメント利益は 630億円(同 +13.0%)と二桁増益を達成した。需給調整取引に伴う地帯間での調整費用が減少したことが利益を押し上げた格好だ。

情報通信事業は、モバイル事業「mineo」や法人向けサービスの好調により内部売上を含む売上高は増加したが、連結子会社の除外影響等により、セグメント利益は 470億円(同 +0.3%)と微増にとどまった。

生活・ビジネスソリューション事業は、関電不動産開発による賃貸収入の増加や、住宅分譲事業における原価率の改善が寄与し、セグメント利益が 390億円(同 +49.0%)と大幅な伸びを見せた。

セグメント名売上高前年比セグメント利益前年比
エネルギー3兆2,613億円△7.9%3,773億円△8.3%
送配電3,862億円△0.7%630億円+13.0%
情報通信2,221億円△0.6%470億円+0.3%
生活・ビジネス1,868億円+1.7%390億円+49.0%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
エネルギー事業3.3兆円80%3,774億円11.6%
送配電事業3,862億円10%631億円16.3%
情報通信事業2,222億円6%471億円21.2%
生活・ビジネスソリューション事業1,868億円5%390億円20.9%

財務状況と資本政策

財務体質は急速に改善している。総資産は設備投資の進展により 9兆8,546億円(前期比 +2,019億円)に拡大した一方、有利子負債は 4兆2,666億円(同 -2,051億円)と着実に削減された。この結果、自己資本比率は前期の31.8%から 35.1% へと 3.3ポイント上昇 し、経営の安定性が増している。

株主還元については、好調な財務状況を背景に積極的な姿勢を示した。2026年3月期の期末配当を従来予想から15円積み増し、年間で 75円(中間30円、期末45円)とした。さらに、次期(2027年3月期)の配当予想については、連結配当性向25~35%を目安とする新方針に基づき、年間 80円 への増配を計画している。「安定的な配当」から「業績連動を意識した増配」へのシフトが明確になった決算といえる。

通期見通しと戦略トピック

2027年3月期の通期業績予想は、売上高 4兆5,000億円(前期比 +10.9%)、純利益 3,100億円(同 -18.4%)を見込む。売上高は燃料価格の上昇前提により増加するが、利益面では原子力利用率が70%程度(当期は84.1%)まで低下することや、インフレに伴う修繕費・諸経費の増加を織り込み、減益を予想している。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(予想)増減率
売上高4兆566億円4兆5,000億円+10.9%
営業利益4,375億円2,500億円-42.9%
純利益3,800億円3,100億円-18.4%

重要な戦略トピックとして、持分法適用会社である株式会社きんでんの自己株式公開買付けへの応募を決定した。これにより、2027年3月期において約 1,050億円 の関係会社株式売却益(特別利益)を計上する見込みだ。このキャッシュは脱炭素化(GX)に向けた成長投資や、さらなる財務基盤の強化に充てられることが期待される。

リスクと課題

今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げている。

  • 原子力利用率の変動: 定期検査のタイミングによる利用率の低下は、火力代替コストの増大に直結する。2027年3月期は利用率 70% 前後を想定しており、これが下振れした場合の収益悪化リスクがある。
  • 外部環境の不透明感: 全日本原油CIF価格の想定を 80ドル/バレル、為替レートを 160円/ドル と設定している。想定以上の円安や資源高は、収益の圧迫要因となる。
  • インフレによるコスト増: 資材費や人件費の高騰により、送配電設備の維持管理費や工事物量にかかる諸経費が増加傾向にあり、利益を押し下げる要因となっている。
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、業績が「燃料価格次第」の状況から脱却しつつある点です。売上高は減少したものの、原子力発電の安定稼働と非電力事業(不動産・情報通信)の成長により、純利益ベースでは底堅さを見せました。

特に、財務体質の指標である自己資本比率が35%を超えてきたことは、かつての震災後の苦境を知る投資家にとっては大きな安心材料でしょう。また、持分法会社の「きんでん」株式を一部売却し、1,000億円規模のキャッシュを手にすることも、次なる成長投資への布石として評価できます。

今後の焦点は、来期予想で示された「原子力利用率の低下(84%→70%)」を、他事業の成長やコスト削減でどこまでカバーできるか、そして新配当方針(配当性向25〜35%)に基づいた株主還元がどこまで継続されるかにあります。インフレによる諸経費増という新たな課題に対し、電力業界のリーダーとしてどのような効率化を打ち出すかが注目されます。