中部電力・2026年3月期第3四半期、純利益21%増の2,025億円――JERAの持分法利益が押し上げ、浜岡原発審査停止の影響を注視
売上高
2.6兆円
-3.2%
通期予想
3.5兆円
営業利益
1,686億円
-8.4%
純利益
2,026億円
+21.2%
通期予想
1,850億円
営業利益率
6.6%
中部電力は2026年2月16日、2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)の連結決算を発表しました。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期比 21.2%増 の 2,025億円 となりました。燃料価格の低下に伴う燃料費調整制度の影響で売上高は減少したものの、火力発電事業を担う持分法適用会社「JERA」の収益改善が利益を大きく押し上げました。一方で、浜岡原子力発電所の審査における不適切事案に伴う損失計上など、中長期的な課題も浮き彫りとなっています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の売上高(営業収益)は、前年同期比 3.2%減 の 2兆5,663億円 となりました。これは主に燃料価格の下落が電気料金に反映される燃料費調整制度の影響によるもので、実質的な販売価格が低下したことが要因です。営業利益は 1,685億円 (前年同期比 8.4%減 )となりましたが、経常利益は 2,407億円 (同 8.3%増 )と増益を確保しています。
経常利益が増益となった最大の要因は、持分法適用会社であるJERAの業績改善です。JERAにおける燃料価格変動の期ずれ影響が好転し、持分法による投資損益が 948億円 (前年同期比 +426億円 )に拡大したことが、本業の営業減益を補いました。四半期純利益についても、これらの経常利益の増加に加え、法人税等の負担軽減もあり、前年同期を大きく上回る 2,025億円 を確保しました。
| 項目 | 前年同期(2025/3 Q3) | 当期(2026/3 Q3) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆6,516億円 | 2兆5,663億円 | △3.2% |
| 営業利益 | 1,841億円 | 1,685億円 | △8.4% |
| 経常利益 | 2,222億円 | 2,407億円 | +8.3% |
| 四半期純利益 | 1,671億円 | 2,025億円 | +21.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
販売事業を担う「ミライズ」セグメントは、売上高が 2兆1,153億円 (前年同期比 1.3%減 )、セグメント利益が 1,113億円 (同 2.4%減 )となりました。他社との競争激化や節電意識の定着により販売電力量が伸び悩んだほか、燃料費調整の影響が売上を下押ししました。利益面では、販売価格へのコスト転嫁を進めたものの、微減にとどまっています。
送配電事業の「パワーグリッド」セグメントは、売上高 6,751億円 (前年同期比 1.3%減 )、セグメント利益 303億円 (同 45.8%増 )と大幅な増益を達成しました。修繕費の発生時期のずれやコスト削減努力が寄与し、効率的な運営が利益を押し上げました。電力供給の安定性を維持しつつ、収益性を改善させる傾向が続いています。
火力発電・燃料事業の「JERA」に関連する持分法投資利益は 987億円 (前年同期比 64.2%増 )と非常に好調でした。海外事業の収益貢献に加え、燃料価格の安定化に伴う期ずれ影響が利益を押し上げる構造となっています。中部電力全体の利益の約4割をこのセグメントが支える構図がより鮮明になりました。
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 前年同期比(利益) |
|---|---|---|---|
| ミライズ | 2兆1,153億円 | 1,113億円 | △2.4% |
| パワーグリッド | 6,751億円 | 303億円 | +45.8% |
| JERA(持分法) | ― | 987億円 | +64.2% |
| その他 | 4,947億円 | 1,139億円 | +81.8% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ミライズ | 2.1兆円 | 82% | 1,113億円 | 5.3% |
| パワーグリッド | 6,752億円 | 26% | 304億円 | 4.5% |
| JERA(持分法利益のみ) | 0百万円 | 0% | 987億円 | — |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末から 3,746億円 増加し、 7兆4,994億円 となりました。これは再生可能エネルギーへの投資継続や、将来の安定供給に向けた設備投資の拡充に伴う固定資産の増加が主な要因です。一方で、自己資本比率は 40.1% と前年度末の 39.1% から改善し、財務基盤の健全性は着実に高まっています。
株主還元については、2026年3月期の年間配当を前期の60円から10円増配し、 70円 (中間35円、期末35円予想)とする方針を維持しています。安定的な利益成長を背景に、株主への利益還元を強化する姿勢を示しています。自己資本の積み増しと株主還元のバランスを重視する経営判断がなされています。
リスクと課題:浜岡原発の審査停止
今回の決算において特筆すべきリスクは、浜岡原子力発電所の新規制基準適合性審査における不適切事案です。地震動評価のプロセスにおいて、説明内容と異なる手法が用いられていた疑いから、原子力規制委員会により審査が停止されました。これにより、審査に関連する委託契約の一部解除を余儀なくされ、 117億円 の費用を営業外費用として計上しています。
この問題は単なる一時的な費用発生にとどまらず、再稼働時期がさらに不透明になるという事業継続上の重大な懸念をはらんでいます。会社側は、原子力事業の固定資産(約823億円)の回収可能性については現時点で問題ないと判断していますが、今後の審査動向や規制当局の判断次第では、将来のキャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす可能性があります。ガバナンス体制の再構築と、審査の早期再開に向けた信頼回復が急務となっています。
通期見通し
2026年3月期の通期業績予想については、前回発表の数値を据え置いています。売上高は 3兆5,500億円 (前期比 3.2%減 )、純利益は 1,850億円 (同 8.5%減 )を見込んでいます。第3四半期時点の純利益が既に通期予想を超過していますが、冬場の燃料価格変動や浜岡原発に関連する追加コストの発生可能性を考慮し、慎重な姿勢を崩していません。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績(2025/3) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆5,500億円 | 3兆5,500億円 | 3兆6,675億円 |
| 経常利益 | 2,300億円 | 2,300億円 | 2,765億円 |
| 当期純利益 | 1,850億円 | 1,850億円 | 2,022億円 |
| 1株当たり利益 | 244.90円 | 244.90円 | 267.58円 |
中部電力の決算は、表面上の「純利益21%増」という力強い数字の裏に、依存度の高いJERAの収益貢献と、自社でコントロールが難しい原子力発電の停滞という、対照的な二面性が見て取れます。
投資家としての注目点は以下の通りです。
- JERAへの利益依存: 連結利益の相当部分を持分法利益が占めており、世界的なエネルギー価格の動向が直結する構造です。自社のミライズやパワーグリッドといった国内基盤の収益性改善がどこまで進むかが鍵となります。
- ガバナンスと原子力リスク: 浜岡原発の「不適切事案」は、技術的なミス以上に組織の誠実性が問われる問題です。審査停止が長期化すれば、将来の電力構成戦略(エネルギーミックス)に狂いが生じ、カーボンニュートラル目標への影響も避けられません。
就活生への視点:
- 中部電力は安定したインフラ企業である一方、JERAを通じたグローバルなエネルギー転換や、再生可能エネルギーへの巨額投資など、ダイナミックな変化の渦中にあります。浜岡原発の問題からわかる通り、高度な専門性と強い倫理観が求められる現場であることを認識しておく必要があります。
