大手電力3社・2026年3月期通期——稼ぐ力の関西電力と巨額損失の東電、明暗分かれた決算
今期の総括
原発稼働の安定が収益格差を決定づけた
燃料価格の下落で各社は減収となりました。しかし、本業の儲けには差が出ています。原子力発電が安定した関西電力は、10.8%という高い利益率を誇ります。一方、東京電力HDは、本業は回復したものの廃炉費用で4,543億円もの最終赤字となりました。経営基盤の格差が浮き彫りになった一年です。
業界全体の動き
電力業界全体を揺らした共通の動きは以下の通りです。
- 燃料価格の下落:石炭やLNGの価格が落ち着きました。これが電気料金を下げる要因となり、3社とも減収となりました。
- 期ずれ影響の好転:燃料費の変動が料金に反映されるまでのズレが、利益を押し上げる要因に変わりました。
- 原子力の活用格差:再稼働が進む企業と、進まない企業で、発電コストに大きな差が出ています。
- 非電力事業の成長:通信や不動産など、電気以外の分野で稼ぐ動きが加速しています。
売上高 前年同期比
全社マイナス成長ですが、これは販売量減よりも燃料安による単価下落というテクニカルな要因が強めです。
純利益 前年同期比
中部電力が唯一の最終増益。東電の巨額損失により、業界の最終利益の明暗が最も激しく分かれました。
勝者と敗者:収益力の関電、重い課題の東電
今期の勝者は関西電力です。売上高は40,566億円(前年比-6.5%)ですが、営業利益は4,376億円とトップです。営業利益率は10.8%に達し、他社を圧倒しています。
一方、最も苦戦したのは東京電力HDです。営業利益は3,377億円(前年比+44%)と、本業は絶好調でした。しかし、燃料デブリ取り出し費用の見直しで、9,138億円もの特別損失を出しました。結果、最終利益は4,543億円の赤字に沈みました。本業の稼ぎが事故対応に消える構造が続いています。
勝者
関西電力
苦戦
東京電力ホールディングス
売上高ランキング
売上規模では東京電力HDが首位ですが、全社的に燃料費調整の影響で前年を下回る結果となりました。
営業利益ランキング
売上で劣る関西電力が利益で首位となり、原子力発電によるコスト競争力の高さが証明されています。
営業利益率ランキング
関西電力が唯一10%超えを達成。東電と中部電の利益率には、依然として大きな開きがあります。
注目の動き・戦略比較
各社の戦略にも違いが見えます。
- 中部電力:持分法会社のJERAが貢献しました。燃料調達の改善で、純利益は2,278億円(前年比+12.7%)と増益です。自己資本比率も4割を超え、財務の健全さが光ります。
- 関西電力:高い利益を背景に、年間配当を75円へ増配しました。株主還元に積極的な姿勢を見せています。
- 東京電力HD:本業の収益性は改善しています。コスト削減の努力が、3,000億円超の営業利益を支えています。
業界共通のリスク
- 原子力規制の動向:中部電力の浜岡原発のように、審査の遅れが経営の重荷になります。
- 燃料価格の再高騰:地政学リスクにより、再びコストが跳ね上がる恐れがあります。
- 金利上昇の影響:巨額の設備投資が必要な業界です。利上げは利払い負担を増やします。
就活生・転職希望者へ
安定志向の人には、財務が健全で利益率も高い関西電力や中部電力が魅力的に映るでしょう。一方、東京電力HDは、巨額の赤字を抱えつつも、国のエネルギー政策の最前線にいます。社会的な使命感を持って働きたい人には、やりがいの大きい環境と言えます。どの会社も「電気を売るだけ」から脱却しようとしており、新しいビジネスに挑戦するチャンスは広がっています。
