中部電力・2026年3月期、純利益12.7%増の2,277億円——JERAの石炭調達力改善が寄与、年間配当は10円増配の70円
売上高
3.5兆円
-3.4%
営業利益
2,300億円
-5.0%
純利益
2,278億円
+12.7%
営業利益率
6.5%
中部電力が28日に発表した2026年3月期決算は、売上高が前期比3.4%減の 3兆5,460億円 となった一方、親会社株主に帰属する当期純利益は同12.7%増の 2,277億円 と増益を確保しました。燃料費調整制度の「期ずれ」影響が差益に転じたことや、持分法適用会社である JERAの火力事業における燃料調達コストの改善 が利益を押し上げました。好調な業績を背景に、年間配当は前期から10円増となる 70円 を実施し、株主還元を強化する姿勢を鮮明にしています。
中部電力 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当期の連結業績は、売上高が燃料費調整額の減少により 3兆5,460億円(前期比 3.4%減)となったものの、利益面では底堅い動きを見せました。営業利益は 2,304億円(同 5.0%減)と微減しましたが、持分法投資利益の増加により、経常利益は 2,910億円(同 5.3%増)と伸長しています。
利益増加の主因は、燃料価格の変動が販売価格に反映されるまでのタイムラグによる「期ずれ」影響です。前期は大きな差損を抱えていましたが、当期は 70億円 の差益へと改善しました。また、エネルギー市場の不透明感が続く中、電源調達ポートフォリオの最適化 を進めたことも、収益性の維持に大きく寄与しました。
| 項目 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3兆6,692億円 | 3兆5,460億円 | △3.4% |
| 営業利益 | 2,420億円 | 2,300億円 | △5.0% |
| 経常利益 | 2,764億円 | 2,910億円 | +5.3% |
| 当期純利益 | 2,020億円 | 2,277億円 | +12.7% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
小売事業を担う「ミライズ」セグメントは、売上高が 2兆8,592億円(前期比 3.5%減)、経常利益が 1,379億円(前期比 209億円の増益)となりました。電力・ガス販売収入は減少したものの、前述の期ずれ影響の改善に加え、需給状況に応じた機動的な電源調達が功を奏し、利益を大きく伸ばしました。
送配電事業の「パワーグリッド」は、売上高 9,286億円(同 3.6%減)、経常利益 475億円(前期並み)となりました。エリア内の電力需要減少に伴う託送収益の減少という逆風がありましたが、需給調整コストの抑制 や効率的な設備メンテナンスを徹底することで、利益水準を維持しました。
発電・燃料事業の「JERA」は、持分法による投資利益として 941億円(前期比 268億円の増益)を計上しました。世界的な石炭市場の需給緩和を捉えた戦略的な調達競争力の強化が、火力発電事業の収益改善に直結しました。これにより、グループ全体の経常利益の約3割をJERAが稼ぎ出す構図となっています。
| セグメント | 売上高 | 前期比 | 経常利益 | 増減額 |
|---|---|---|---|---|
| ミライズ | 2兆8,592億円 | △3.5% | 1,379億円 | +209億円 |
| パワーグリッド | 9,286億円 | △3.6% | 475億円 | +0億円 |
| JERA(持分法) | - | - | 941億円 | +268億円 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ミライズ | 2.9兆円 | 81% | 1,380億円 | 4.8% |
| パワーグリッド | 9,286億円 | 26% | 476億円 | 5.1% |
財務状況と資本政策
2026年3月末時点の連結総資産は、JERAへの長期投資の増加などにより、前期末比5,278億円増の 7兆6,527億円 となりました。純資産も当期純利益の積み上げにより 3兆2,128億円 まで拡大し、自己資本比率は 41.0% と前期末(39.1%)から改善しています。
資本政策においては、強固な財務基盤を背景に 株主還元の拡充 を進めています。当期の年間配当は、中間・期末ともに35円の合計 70円(前期は60円)を決定しました。これは期ずれ影響を除いた連結配当性向で 23.9% の水準であり、経営目標に掲げる成長と還元のバランスを維持しています。
キャッシュフロー面では、営業活動により 3,344億円 の資金を創出しました。これをJERAや再生可能エネルギー、送配電設備といった成長分野への投資(投資キャッシュフロー: △3,507億円)に充当しており、脱炭素化に向けた攻めの姿勢を維持しています。
リスクと課題
好調な決算の一方で、事業環境には複数のリスクが顕在化しています。会社側は特に以下の項目を重要な懸念事項として挙げています。
- 浜岡原子力発電所の審査停止: 基準地震動策定に関する不適切事案を受け、現在原子力規制委員会による審査が停止しています。再稼働の遅延は将来のキャッシュフロー悪化や追加の安全対策費用の増大を招く恐れがあります。
- 燃料・市場価格の不確実性: 中東情勢の緊迫化に伴い、LNGや原油の調達価格が急騰するリスクがあります。この影響により、次期(2027年3月期)の業績予想については「合理的な算定が困難」として現時点では 未定 とされています。
- 電力需要の減少: 人口減少や省エネの進展に加え、エリア内の産業構造の変化に伴う需要減退が中長期的な課題となっています。
中部電力の今回の決算は、燃料価格の安定とJERAの収益力強化が鮮明になった「実力値の向上」を感じさせる内容です。特に自己資本比率が4割の大台に乗ったことは、かつての燃料高騰で傷んだ財務の修復が完了したことを示唆しています。
一方で、投資家・就活生が注視すべきは「浜岡原発の不適切事案」の行方です。審査停止という異例の事態は、同社の脱炭素戦略や中長期の電源構成に小さくない影を落とします。次期予想を「未定」とした慎重な姿勢からも、外部環境への警戒感の強さが読み取れます。
強みとしては、ミライズ(小売)とJERA(燃料・発電)の連携によるバリューチェーンの堅牢さが挙げられます。他電力会社と比較しても、JERAを通じたグローバルな調達力は同社の大きな差別化要因となっており、燃料価格の乱高下に対する耐性は以前より高まっていると言えるでしょう。
