テルモ株式会社 の会社詳細
テルモ株式会社
テルモ
2026年3月期 第3四半期

テルモ・2026年3月期Q3、純利益11%増の1,095億円——血液・細胞事業が牽引、大型買収で新領域へ

テルモ
4543
医療機器
増収増益
M&A
OrganOx
増配
カテーテル
CDMO
血漿ビジネス
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

8,316億円

+7.7%

通期予想

1.1兆円

進捗率75%

営業利益

1,449億円

+8.5%

通期予想

1,815億円

進捗率80%

純利益

1,095億円

+11.1%

通期予想

1,360億円

進捗率81%

営業利益率

17.4%

テルモが13日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)の連結決算は、売上収益が前年同期比 7.7%増8,315億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同 11.1%増1,095億円 となった。世界的な医療需要の拡大を背景に、カテーテル治療関連などの主力製品が堅調に推移したほか、北米での血漿ビジネスが大幅に伸長した。同社は期間中に英国の医療機器メーカー買収やドイツの製造拠点取得など、積極的な成長投資を断行しており、次なる成長ステージへの布石を打っている。

テルモ・2026年3月期Q3、純利益11%増の1,095億円——血液・細胞事業が牽引、大型買収で新領域へ

業績のポイント

当第3四半期累計期間の業績は、グローバルでの医療需要の回復と拡大に支えられ、増収増益を達成した。売上収益は 8,315億円(前年同期比 +7.7%)、本業の儲けを示す営業利益は 144,867百万円(同 +8.5%)を記録している。特に海外売上高が同 9.2%増 と全体の伸びを牽引しており、為替影響を除くベースでも 8.6% の増収を確保するなど実質的な成長が鮮明となっている。

同社が重視する経営指標である「調整後営業利益」は、前年同期比 8.9%増1,734億円 となった。これは買収に伴う無形資産の償却費や一時的な損益を除外した数値であり、収益力の底堅さを示している。原材料費の高騰や物流コストの負担は継続しているものの、増収効果と徹底した原価改善が利益を押し上げた格好だ。

指標2025年3月期 Q32026年3月期 Q3前年同期比
売上収益772,235百万円831,557百万円+7.7%
営業利益133,496百万円144,867百万円+8.5%
調整後営業利益159,301百万円173,466百万円+8.9%
四半期利益98,622百万円109,547百万円+11.1%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力である「心臓血管カンパニー」は、売上収益が 4,967億円(前年同期比 +7.0%)と好調を維持した。カテーテル治療に用いるアクセス製品などが米州を中心に拡大し、日本国内でもニューロ(脳血管)事業が成長を支えた。一方で、米州子会社における独占販売権の契約見直しに伴い、約 44億円 の減損損失を計上したが、セグメント全体の成長がこれを補った。

「血液・細胞テクノロジーカンパニー」は、売上収益 1,685億円(前年同期比 +13.8%)と最も高い伸び率を記録した。北米において血漿(けっしょう)を採取するためのデバイスや関連ビジネスが大きく進展したことが主因だ。血液センター向けの需要が安定して推移しており、同社の新たな収益の柱として存在感を高めている。

「メディカルケアソリューションズカンパニー」は、売上収益 1,631億円(前年同期比 +2.2%)となった。国内の一部事業終了による影響を、製薬会社向けの薬剤充填済みシリンジなどのファーマシューティカルソリューション事業の伸長がカバーした。また、新たに連結対象となった「OrganOx」セグメントは、北米市場を中心とした事業拡大により 28億円 の売上を計上している。

セグメント名売上収益前年同期比調整後営業利益利益率
心臓血管4,967億円+7.0%1,293億円26.0%
メディカルケア1,631億円+2.2%197億円12.1%
血液・細胞1,685億円+13.8%252億円15.0%
OrganOx28億円5億円18.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
心臓血管カンパニー4,968億円60%1,293億円26.0%
メディカルケアソリューションズカンパニー1,632億円20%197億円12.1%
血液・細胞テクノロジーカンパニー1,685億円20%252億円15.0%
OrganOx29億円0%5億円18.1%

財務状況と資本政策

2025年12月末時点の総資産は、前期末比 4,285億円増2兆2,569億円 と大幅に拡大した。この急増の背景には、英国OrganOx社の買収に伴いのれん及び無形資産が 2,553億円 増加したことや、製造拠点取得による有形固定資産の増加がある。積極的なM&Aを実行したことで、バランスシートの規模は一段と拡大している。

負債面では、買収資金の充当を目的とした借入れなどにより、社債及び借入金が 2,249億円 増加した。これにより親会社所有者帰属持分比率は前期末の 74.8% から 67.5% へと低下したが、依然として健全な水準を維持している。キャッシュフロー面でも、営業活動により 1,419億円 のキャッシュを創出しており、投資と財務のバランスを考慮した経営が続いている。

株主還元については、増配方針を継続している。2026年3月期の年間配当は、前期実績から4円増配となる 30円(中間15円、期末予想15円)を予定している。成長投資への資金配分を優先しつつも、安定的な配当を通じて株主への利益還元を強化する姿勢を鮮明にしている。

戦略トピック:大型買収とCDMO事業の強化

今期、テルモは将来の成長を左右する2つの重要な投資を実行した。第一に、2025年10月に英国のOrganOx Limitedを完全子会社化したことだ。同社は臓器保存デバイスの専門メーカーであり、この買収によりテルモは移植医療分野という新たな高成長市場への参入を果たした。未充足の医療ニーズが大きい分野での主導権確保を狙う。

第二に、2025年9月にWuXi Biologics社からドイツ・レバークーゼンの薬剤製品工場を取得した。これはバイオ医薬品の製造受託(CDMO)事業のグローバル展開を加速させるための拠点だ。薬剤と投与デバイスを組み合わせたコンビネーションプロダクトの需要は世界的に高まっており、欧州に生産拠点を持つことで、製薬会社への供給体制と開発スピードを一段と強化する方針だ。

リスクと課題

今後の懸念材料として、以下の要因が挙げられている。

  • 為替変動リスク: 海外売上比率が高いため、円高への反転は業績の下押し要因となる(通期予想レートは1ドル148円)。
  • 減損リスク: 今回の心臓血管事業のように、独占販売権などの無形資産について、市場環境の変化に伴う減損が利益を圧迫する可能性がある。
  • 買収先の統合(PMI): OrganOx社などの大型買収について、期待通りのシナジーを発揮し、早期に収益貢献させられるかが焦点となる。
  • 事業再編費用: 収益性向上のための事業再編に伴い、一時的な費用(今期は既に約79億円計上)が発生し、短期的な利益の重石となるリスクがある。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月公表の数値を据え置いた。売上収益は過去最高の 1兆1,080億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は 1,360億円 を見込む。第3四半期までの進捗は順調であり、第4四半期も主力事業の成長が継続するとみている。

項目前回予想今回予想(据置)前期実績前期比
売上収益1,108,0001,108,0001,036,448+6.9%
営業利益181,500181,500157,690+15.1%
税引前利益181,500181,500156,063+16.3%
当期利益136,000136,000116,916+16.3%
AIアナリストの視点

今回の決算で最も注目すべきは、テルモが「心臓血管カンパニー」一本足打法からの脱却を、実力と投資の両面で進めている点です。

数値面では、血液・細胞テクノロジーが二桁増収と目覚ましく、収益の多角化が実を結んでいます。一方で、財務諸表を詳しく見ると、OrganOxの買収により「のれん」と「無形資産」が急増しており、投資家としては今後これらの資産が期待通りのキャッシュを生むか、あるいは減損リスクとならないかを注視する必要があります。

AIとしての見立ては、ドイツ工場の取得など「デバイス×医薬品」のCDMO領域への本格参入は、非常に理に適った戦略だと評価します。参入障壁が高い領域にリソースを集中させており、短期的には有利子負債が増えていますが、中長期的な競争優位性は一段と高まったと言えるでしょう。就活生にとっては、既存の医療機器メーカーという枠を超えた「ヘルスケア・プラットフォーマー」への変貌期として非常に面白いフェーズにある企業です。