朝日インテック・2026年6月期Q3、純利益204%増の266億円——米欧での循環器製品好調とM&A寄与で大幅増益
売上高
1,084億円
+18.0%
通期予想
1,411億円
営業利益
374億円
+45.5%
通期予想
422億円
純利益
267億円
+204.2%
通期予想
306億円
営業利益率
34.5%
医療用カテーテル大手の朝日インテックが発表した2026年6月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 18.0%増 の 1,083億6,600万円 、営業利益が 45.5%増 の 374億1,400万円 と大幅な増収増益となりました。主力である米欧市場でのPCI(心疾患治療)ガイドワイヤー等の販売が極めて好調に推移したほか、前期に計上した多額の減損損失が解消したことで、親会社株主に帰属する四半期純利益は 204.2%増 の 266億5,700万円 へと急拡大しました。新中期経営計画「Building the Future 2030」の初年度として、国内外で高い成長性を維持しています。
業績のポイント
朝日インテックの当第3四半期累計期間は、主力のメディカル事業とデバイス事業の両輪が力強く成長しました。売上高は 1,083億6,600万円 (前年同期比 +18.0% )に達し、売上総利益も生産性改善や高付加価値製品の伸長により 767億8,800万円 (同 +23.3% )と大きく伸びています。米国内での販売体制強化に伴う営業費用や研究開発費の増加を、売上高の成長が大幅に上回る形で吸収しました。
利益面では、営業利益が 374億1,400万円 (前年同期比 +45.5% )と過去最高水準を記録しています。特筆すべきは純利益の伸び率で、前期に実施した減損損失の反動もあり 266億5,700万円 (同 +204.2% )となりました。為替環境についても、ユーロやタイバーツに対して円安が進行したことが収益を押し上げる要因となっています。
| 項目 | 2025年6月期 Q3 | 2026年6月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 91,815百万円 | 108,366百万円 | +18.0% |
| 営業利益 | 25,715百万円 | 37,414百万円 | +45.5% |
| 経常利益 | 25,594百万円 | 37,207百万円 | +45.4% |
| 四半期純利益 | 8,763百万円 | 26,657百万円 | +204.2% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
メディカル事業は、売上高 947億6,600万円 (前年同期比 +14.6% )、セグメント利益 361億3,200万円 (同 +31.8% )と、全地域で増収を達成しました。特に海外市場では、主力の循環器領域においてPCIガイドワイヤーや貫通カテーテルが好調に推移したほか、末梢血管や腹部血管系などの非循環器領域も大きく成長しています。国内市場においても、非循環器領域の仕入製品が寄与し、堅調な推移を見せました。
デバイス事業は、売上高 136億円 (前年同期比 +49.5% )、セグメント利益 72億7,400万円 (同 +88.6% )と爆発的な成長を遂げました。この急成長の背景には、当期より連結子会社化したニッタモールド社の業績寄与があります。また、米国企業向けの循環器系カテーテル部材やアジア向けの超音波カテーテル部材の取引が増加したほか、レジャー関連の産業部材も海外市場で好調を維持しました。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| メディカル事業 | 94,766百万円 | +14.6% | 36,132百万円 | +31.8% |
| デバイス事業 | 13,600百万円 | +49.5% | 7,274百万円 | +88.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| メディカル事業 | 948億円 | 87% | 361億円 | 38.1% |
| デバイス事業 | 136億円 | 13% | 73億円 | 53.5% |
財務状況と資本政策
財務基盤は一段と強化されており、総資産は前期末比 105億4,200万円 増の 2,037億3,000万円 となりました。現金及び預金が 55億9,600万円 増加したほか、好調な販売を背景に売掛金も積み上がっています。一方で、長期借入金の返済が進み、負債合計は 52億6,200万円 減少しました。この結果、自己資本比率は前期末の77.9%から 81.6% へと上昇し、非常に強固な財務体質を維持しています。
資本政策においては、株主還元への積極的な姿勢が鮮明になっています。当期は 105億5,300万円 の自己株式の取得を実施したほか、取得した自己株式の一部(6,301,300株)を消却しました。配当についても、通期予想で1株当たり 46.10円 (前期実績24.23円)と、実質的な大幅増配を計画しています。利益成長を背景に、成長投資と株主還元の両立を図る経営判断が示されています。
リスクと課題
今後の懸念材料としては、以下の要因が挙げられます。
- 為替変動リスク: 海外売上比率が高いため、円高局面では収益が目減りする可能性があります。現在は円安が追い風となっていますが、各通貨(ドル・ユーロ・バーツ・元)の動向には注視が必要です。
- 研究開発・営業費用の増大: 米国市場での直接販売強化や次世代製品の開発に向けた投資を継続しており、これらの費用が先行して利益を圧迫する局面も想定されます。
- 競争環境の変化: 非循環器領域(末梢・脳血管等)への拡大を進める中で、競合他社とのシェア争いや診療報酬改定の影響を受けるリスクがあります。
- 地政学・サプライチェーンリスク: 生産拠点であるタイや中国など、グローバルな供給網における停滞やコスト上昇が課題となります。
通期見通し
2026年6月期の通期連結業績予想については、2026年2月に上方修正した数値を据え置いています。売上高は前期比 17.6%増 、純利益は前期比 139.9%増 と、過去最高益を更新する見通しです。第3四半期までの進捗率は高く、通期目標の達成に向けて順調な足取りを見せています。
| 項目 | 前回予想 | 当期実績(Q3累計) | 通期予想(修正後) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 141,142百万円 | 108,366百万円 | 141,142百万円 |
| 営業利益 | 42,220百万円 | 37,414百万円 | 42,220百万円 |
| 純利益 | 30,556百万円 | 26,657百万円 | 30,556百万円 |
朝日インテックの決算は、まさに「盤石」と言える内容です。注目すべきは、単なる為替効果による増益ではなく、循環器・非循環器の両領域で数量ベースの成長が見られること、そしてニッタモールドの連結化によるデバイス事業の垂直統合が成功している点です。
前期に多額の減損(約93億円)を計上して膿を出し切ったことで、今期の純利益は跳ね上がっていますが、営業利益ベースでも 45%増 という数字は、同社の製品が世界の医療現場で強力な競争力を維持している証左でしょう。
自己資本比率が 80% を超える中で、100億円規模の自社株買いと大幅増配を同時に進める姿勢は、投資家にとって極めてポジティブに映ります。今後は、新中期経営計画で掲げる非循環器領域(脳血管や消化器等)への多角化が、どれほどのスピードで利益貢献してくるかが焦点となります。就活生にとっても、ニッチトップの地位を確立しながら挑戦を続ける同社は、非常に安定感と成長性を兼ね備えた選択肢と言えます。
