業界ダイジェスト
大成建設株式会社 の会社詳細
大成建設株式会社
大成建設
2026年3月期 通期

大成建設・2026年3月期通期、営業利益56%増の1,879億円——建築事業の採算急回復、次期配当は380円へ大幅増額

大成建設
ゼネコン
増収増益
株主還元
増配
東洋建設
M&A
建築事業
建設DX
政策保有株式
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2.1兆円

-3.0%

通期予想

2.4兆円

進捗率86%

営業利益

1,880億円

+56.4%

通期予想

1,880億円

進捗率100%

純利益

1,700億円

+37.3%

通期予想

1,510億円

進捗率113%

営業利益率

9.0%

大成建設が14日に発表した2026年3月期決算は、本業の儲けを示す営業利益が前期比 56.4%増1,879億円 と大幅な増益を達成した。売上高は建築事業での受注選別の影響もあり同 3.0%減2兆890億円 となったが、徹底した採算管理により営業利益率は 9.0% (前期は5.6%)へと大きく改善している。また、次期より 配当性向の下限を40%に引き上げる 新たな資本政策を打ち出し、株主還元の姿勢を鮮明にした。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高が 2兆890億円(前期比 3.0%減)、営業利益が 187,973百万円(同 56.4%増)、当期純利益が 170,004百万円(同 37.3%増)となった。減収ながらも大幅な増益を確保できた最大の要因は、主力の 建築事業における採算性の劇的な改善 にある。前期まで重荷となっていた不採算案件の処理が概ね一巡し、高騰する資材価格への対応や適切な受注価格の確保が進んだことが利益を押し上げた。

また、投資有価証券の売却益が増加したことも純利益の拡大を後押しした(前期比 37.3%増)。企業価値の向上に向けた政策保有株式の縮減を加速させており、キャッシュ効率の改善にも着手している。一方で、受注高は前期並みの 2兆4,362億円 を確保しており、次期以降の施工量も安定的に推移する見通しだ。全体として、規模の追求から「利益重視」の経営への転換が着実に成果として現れた決算といえる。

指標2025年3月期2026年3月期前期比
売上高2兆1,542億円2兆890億円△3.0%
営業利益1,201億円1,879億円+56.4%
経常利益1,345億円1,957億円+45.6%
当期純利益1,238億円1,700億円+37.3%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

セグメント別では、建築事業が利益面で大きく牽引した。建築事業 の売上高は 1兆2,744億円(前期比 9.0%減)と減少したが、営業利益は 783億円(同 590.6%増)と爆発的な伸びを記録した。これは、施工効率の向上に加え、連結子会社を含めた 完成工事利益率の改善 が主因だ。大型案件でのコスト管理が徹底されたことが、前年比で約7倍という利益成長につながった。

土木事業 は売上高が 7,202億円(前期比 8.5%増)、営業利益が 955億円(同 9.1%増)と増収増益を達成した。公共投資が底堅く推移するなか、連結子会社の新規増加が売上を押し上げ、利益面でも採算の取れる案件を確実に積み上げた形だ。海洋土木に強みを持つ 東洋建設の連結化 も、土木分野の競争力強化に大きく寄与している。

開発事業 は、ビル賃貸市場におけるオフィス回帰の流れや堅調な投資意欲を背景に、売上高 1,542億円(前期比 5.1%増)、営業利益 239億円(同 2.0%増)と安定した収益を維持した。空室率の低下と賃料の上昇傾向が継続しており、不動産販売市場も活況を呈している。各セグメントがそれぞれの役割を果たし、グループ全体の収益基盤を支えている。

セグメント売上高 (億円)営業利益 (億円)営業利益率
土木事業7,20295513.3%
建築事業12,7447836.1%
開発事業1,54223915.5%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
土木事業7,202億円35%956億円13.3%
建築事業1.3兆円61%784億円6.1%
開発事業1,543億円7%240億円15.5%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は前期末から 2,857億円 増加し、2兆7,145億円 となった。これは主に、2025年9月に 東洋建設を完全子会社化 したことに伴う資産の受け入れが要因である。負債も有利子負債を中心に 1,964億円 増加したが、自己資本も利益の積み上げにより 948,075百万円 まで拡大しており、自己資本比率は 34.9% と健全な水準を維持している。

特筆すべきは、株主還元の強化である。同社は次期(2027年3月期)より、株主還元方針を従来の「配当性向30%」から 「下限付き配当性向40%」へ引き上げる ことを決定した。これにより、次期の年間配当金は当期の310円からさらに増額し、380円 を予定している。成長投資を優先しつつも、創出したキャッシュを機動的に株主に報いる姿勢を明確にした形だ。

また、キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 1,472億円の収入超(前期は138億円の支出超)に転換した。税金等調整前純利益の大幅増に加え、売上債権の回収が進んだことが寄与している。投資活動では東洋建設の株式取得等で 1,958億円の支出 となったが、本業でのキャッシュ創出力が回復している点は投資家にとってポジティブな材料といえる。

通期見通しと戦略トピック

2027年3月期の連結業績予想は、売上高が 2兆4,200億円(前期比 15.8%増)、営業利益が 1,880億円(同 0.0%増)、純利益が 1,510億円(同 11.2%減)を見込む。東洋建設の通期連結化により売上高は大きく伸びるものの、利益面では投資有価証券売却益などの一過性要因が剥落するため、実質的な巡航速度での利益計画となっている。

戦略面では、2026年度末までに政策保有株式の残高を連結純資産の 20%未満 に縮減する目標を継続している。売却で得た資金は、担い手確保や省人化、海外展開といった成長分野への投資に充当する方針だ。国内建設市場は底堅い一方で、中東情勢や米国の通商政策による資材高リスクは依然として残る。同社は 「利益重視の受注」と「デジタル化による生産性向上」 を両輪に、安定的な収益構造の構築を急ぐ考えだ。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想前期比
売上高2兆890億円2兆4,200億円+15.8%
営業利益1,879億円1,880億円+0.0%
当期純利益1,700億円1,510億円△11.2%

リスクと課題

今後の経営リスクとして、会社側は以下の点を挙げている。

  • 外部環境の不透明感: 中東情勢の悪化や米国の通商政策の変化による、エネルギー・資材価格の再上昇および納期の遅延リスク。
  • 労働力不足の深刻化: 建設業界全体の課題である「担い手確保」の難化に伴う労務費の上昇。これに対し、同社はDX(デジタルトランスフォーメーション)による省人化投資を加速させている。
  • 独占禁止法への対応: リニア中央新幹線工事に関連した独占禁止法違反に基づく排除措置命令等に対し、最高裁判所に上告中である。訴訟の行方がブランドイメージや今後の受注活動に与える影響には注意が必要だ。
AIアナリストの視点

大成建設の今回の決算は、長らく課題とされてきた「建築事業の不採算」を克服し、収益性がV字回復したことを示す力強い内容でした。

注目すべきは、単なる利益増にとどまらず、東洋建設の連結子会社化によって土木分野の競争力を補強し、さらに配当性向の下限を40%に引き上げるという非常に株主フレンドリーな方針を打ち出した点です。これは、同社が「規模から質」への転換を完了し、資本効率を重視するステージに入ったことを示唆しています。

一方で、2027年3月期の純利益が減益予想となっている点は、一見ネガティブですが、これは一過性の有価証券売却益の剥落が主因です。本業の営業利益ベースでは横ばいを維持しており、受注高も底堅いため、実力値としての収益力は向上していると評価できます。今後は、統合した東洋建設とのシナジーをどう早期に具現化していくか、そしてリニア関連の訴訟リスクをどう管理していくかが焦点となるでしょう。