住友金属鉱山・2026年3月期Q3、純利益265%増の1,081億円——銅・金価格高騰で通期予想を大幅上方修正、配当も増額
売上高
1.3兆円
+4.9%
通期予想
1.7兆円
営業利益
1,483億円
+208.0%
通期予想
2,090億円
純利益
1,082億円
+265.3%
通期予想
1,400億円
営業利益率
11.9%
住友金属鉱山が9日に発表した2026年3月期第3四半期決算は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期比約3.7倍の1,081億円と、記録的な増益となりました。銅や金の国際価格が想定を上回って推移したことに加え、前年同期に苦戦した製錬事業が劇的な黒字転換を果たしたことが主因です。好調な業績を受け、同社は通期の利益予想を前回比約1.9倍へ引き上げ、年間配当も当初予想から大幅に積み増す方針を打ち出しました。

業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、売上高が前年同期比4.9%増の1兆2,507億円、税引前利益が同208.0%増の1,482億円となりました。前年同期は金属価格の下落や製錬コストの増大に苦しみましたが、今期は主力の銅や金の価格が歴史的な高水準で推移したことが収益を押し上げる最大の原動力となりました。特に金価格は地政学リスクの高まりや米国の利下げ観測を背景に大幅に上昇し、1トロイオンスあたり3,626ドル(前年同期は2,492ドル)と、同社の利益に多大な貢献を果たしました。
利益面では、前期に計上された一時的な損失要因が解消されたことも大きく、親会社株主に帰属する当期純利益は1,081億円(前年比+265.3%)に達しました。円安基調は前期に比べやや落ち着いたものの、金属相場の恩恵がそれを上回る形で利益を創出する構造となっています。また、操業面でも国内鉱山や製錬所の稼働が概ね順調に推移したことが、増収増益の確実な裏付けとなりました。
業績推移(通期)
セグメント別動向
資源セグメントは、売上高2,020億円(前年比+27.4%)、セグメント利益977億円(同+22.7%)と極めて好調でした。銅価格の上昇に加え、カナダのコテ金鉱山が順調な操業を開始し、生産・販売数量の拡大が収益に寄与しました。チリのケブラダ・ブランカ銅鉱山では一部操業の制約が見られましたが、既存鉱山の損益好転がそれを補って余りある結果となりました。
製錬セグメントは、前年同期の赤字から脱却し、セグメント利益378億円(前年同期は213億円の赤字)とV字回復を遂げました。銅の買鉱条件の悪化という逆風はあったものの、金価格の高騰が収益を強力に支えたほか、フィリピンのニッケル製錬子会社における損失が縮小したことが大きく寄与しました。電気ニッケルやフェロニッケルの販売量も前年を上回り、全体的な稼働率の向上が見られました。
材料セグメントは、売上高2,044億円(同8.4%減)となった一方、利益は111億円(同366.3%増)と大幅な増益を達成しました。電気自動車(EV)向け電池材料の需要伸び悩みにより売上は減少しましたが、通信デバイス向け部材などの高付加価値製品が伸長し、製品構成の改善が利益率を押し上げました。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 資源 | 202,037 | +27.4% | 97,705 | +22.7% |
| 製錬 | 976,329 | +6.0% | 37,845 | 黒字転換 |
| 材料 | 204,412 | △8.4% | 11,144 | +366.3% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 資源 | 2,020億円 | 16% | 977億円 | 48.4% |
| 製錬 | 9,763億円 | 78% | 378億円 | 3.9% |
| 材料 | 2,044億円 | 16% | 111億円 | 5.5% |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の資産合計は、前期末比1,870億円増の3兆2,556億円となりました。これは金属価格の上昇に伴う棚卸資産の増加や、株価上昇による投資有価証券の評価増が主な要因です。一方で、自己資本比率は前期末の60.1%から58.4%へと微減しましたが、依然として強固な財務基盤を維持しています。
特筆すべきは、同日発表された株主還元方針の変更です。同社は配当性向を従来の35%以上から「40%以上」へ引き上げることを決定しました。これにより、2026年3月期の年間配当予想は、前回発表の104円から大幅に増額され、183円(前期実績104円)となる見込みです。業績連動型の還元姿勢をより鮮明にし、投資家への利益還元を強化する経営判断を下しました。
通期見通しの上方修正
足元の良好な金属相場と為替環境を踏まえ、同社は2026年3月期の通期連結業績予想を大幅に上方修正しました。銅の通期想定価格を1トンあたり10,137ドルから10,603ドルへ、金については1トロイオンスあたり3,626ドルから3,769ドルへと引き上げています。これにより、最終利益は前回予想の740億円から1,400億円へと約1.9倍に跳ね上がる見通しです。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,554,000 | 1,697,000 | 1,593,348 | +9.2% |
| 税引前利益 | 121,000 | 209,000 | 31,383 | +72.7% |
| 当期利益 | 74,000 | 140,000 | 16,487 | +89.2% |
修正の背景には、データセンター向けの銅需要が旺盛であることや、金価格が歴史的高値圏で安定していることがあります。下期も引き続き鉱山・製錬所の安定操業に注力し、外部環境の追い風を確実に利益へ結びつける構えです。
リスクと課題
業績は絶好調な一方で、中長期的な課題も散見されます。まず、ニッケル市場の供給過剰です。インドネシアでの増産が継続しており、市況が軟調に推移していることは製錬事業のリスク要因となります。また、材料事業においては、欧米での脱炭素政策の転換により車載用電池材料の需要伸び率が鈍化しており、市場環境の変化に柔軟に対応できるかどうかが焦点となります。
為替感応度も高く、日米の金利差縮小に伴う円高進行は、円建ての売上や利益を押し下げる要因となります。同社は第4四半期の想定為替レートを1ドル=155円と設定していますが、為替市場のボラティリティには引き続き警戒が必要です。
今回の決算は、資源高の恩恵をフルに享受した「教科書通りの好決算」といえます。特に金価格の暴騰が製錬セグメントの損益を劇的に改善させた点は、ポートフォリオの強みが出ています。
注目すべきは配当方針の変更です。利益が急拡大するタイミングでの配当性向引き上げ(40%以上)は、これまで「保守的」と見られがちだった同社のイメージを払拭し、投資家への強い還元姿勢を印象付けました。
- 強み: 銅・金のダブル高を享受できる権益構造。コテ金鉱山の寄与。
- 懸念点: ニッケル市況の低迷継続と、EV電池材料のモメンタム低下。
- 今後の焦点: 2030年のビジョンに向けた、材料事業の次なる成長ドライバーの確立。特に電池材料に次ぐ第2、第3の柱をどう育てるかに注目が集まります。
