清水建設・2026年3月期Q3、営業利益108%増の745億円——国内採算改善と資産売却で大幅増益、年間配当も増額修正
売上高
1.4兆円
+7.6%
通期予想
2.0兆円
営業利益
745億円
+108.6%
通期予想
1,100億円
純利益
810億円
+99.6%
通期予想
1,100億円
営業利益率
5.2%
大手ゼネコンの清水建設が5日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)の連結決算は、本業の儲けを示す営業利益が前年同期比で2倍以上に急拡大した。手持ちの大型工事が順調に進捗したことに加え、工事採算の劇的な改善や開発案件の売却、さらには政策保有株式の売却益が寄与し、各利益項目で大幅な増益を達成した。好調な進捗を受け、同社は通期業績予想と配当予想の上方修正も同時に発表している。

業績のポイント
当第3四半期の売上高は前年同期比 7.6%増 の 1兆4,293億円、営業利益は同 108.6%増 の 745億円 となった。前年同期は資材高や労務費上昇に苦しんだが、今期は手持ちの大型工事が順調に進んだことで完成工事高が伸長し、利益率も大きく回復した。親会社株主に帰属する四半期純利益は、北米不動産子会社での減損損失を計上したものの、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益が大きく上回り、同 99.6%増 の 809億円 となっている。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,279億円 | 1兆4,293億円 | +7.6% |
| 営業利益 | 357億円 | 745億円 | +108.6% |
| 経常利益 | 412億円 | 805億円 | +95.5% |
| 四半期純利益 | 405億円 | 809億円 | +99.6% |
この大幅な利益成長の背景には、建設業界全体で進む「採算重視の受注戦略」が実を結び始めたことがある。同社は国内の建築・土木の両部門において、徹底したコスト管理と設計変更の獲得により完成工事総利益率を向上させた。また、不動産開発事業における物件売却が計画通りに進んだことも、利益の押し上げに大きく貢献した。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力となる「建設事業」は、売上高が 1兆347億円、セグメント利益が前年同期比 165.9%増 の 437億円 となり、全体の成長を牽引した。特に国内建築部門において、受注時の採算見極めが厳格化されたことや、進行中工事での徹底した原価低減が寄与している。国内土木部門も同様に、手持ち工事の採算改善が進み、利益率は前年同期の 8.4% から 10.6% へと大きく向上した。
「投資開発事業」では、開発物件の売却が順調に進んだことで、セグメント利益は 93億円(前年同期は56億円)を確保した。一方で、「道路舗装事業(日本道路)」を含むその他の事業も堅調に推移している。特筆すべきは、2025年10月に連結子会社であった日本道路を完全子会社化した点であり、グループ一体経営によるシナジー創出を加速させている。
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 建設事業 | 1兆347億円 | 437億円 | 4.2% |
| 投資開発事業 | 303億円 | 93億円 | 30.9% |
| 道路舗装事業 | 1,260億円 | 85億円 | 6.8% |
| その他 | 3,325億円 | 199億円 | 6.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 当社建設事業 | 1.0兆円 | 72% | 438億円 | 4.2% |
| 当社投資開発事業 | 304億円 | 2% | 94億円 | 30.9% |
| 道路舗装事業 | 1,261億円 | 9% | 86億円 | 6.8% |
財務状況と資本政策
総資産は、受取手形や完成工事未収入金の増加などにより前期末から 501億円 増の 2兆5,743億円 となった。有利子負債は 6,572億円 と前期末比で 658億円 増加したが、これは事業規模の拡大や日本道路の完全子会社化に伴う資金需要に対応したものである。自己資本比率は純利益の積み上げにより前期末から 0.8ポイント 上昇し、 34.9% と安定した財務基盤を維持している。
資本政策においては、株主還元の拡充を明確に打ち出した。機動的な自己株式取得として、2025年5月に決議した 100億円 を上限とする取得を順次進め、当期間中に約 99億円 分の取得を完了させた。さらに、業績の好調を背景に配当予想を大幅に上方修正しており、「増収増益と還元強化」の両立を鮮明にしている。
通期見通しの上方修正
同社は決算発表に合わせ、2026年3月期の通期業績予想を上方修正した。売上高は前回予想から 1,000億円 上積みの 2兆100億円、純利益は 350億円 増の 1,100億円 を見込む。国内建設事業の採算が期初想定を上回って推移していることに加え、保有株式の売却による特別利益の計上が利益を押し上げる。これに伴い、年間配当予想も従来の44円から 65円 (前期実績38円)へと大幅に引き上げた。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆9,100億円 | 2兆100億円 | 1兆9,443億円 |
| 営業利益 | 780億円 | 1,100億円 | 710億円 |
| 純利益 | 750億円 | 1,100億円 | 660億円 |
| 年間配当金 | 44円 | 65円 | 38円 |
リスクと課題
足元の業績は好調だが、中長期的には外部環境の変化がリスク要因として挙げられている。国内では供給面における建設資材・エネルギー価格のさらなる高止まりや、2024年問題に伴う労務費の継続的な上昇が、再び利益率を圧迫する可能性がある。海外事業、特に北米市場では、不動産市況の変化に伴う減損リスクを当四半期でも計上しており、ポートフォリオの再評価が課題となる。
また、今回の利益増には政策保有株式の売却という一時的な要因も含まれている。そのため、本業である建設事業において、いかに持続的な生産性向上を図り、資産売却に頼らず高い利益水準を維持できるかが、投資家からの評価を分ける焦点となるだろう。
今回の決算で最も注目すべきは、清水建設が長らく課題としてきた「採算性の改善」に明確な道筋をつけたことです。国内の大型工事において、原材料高を克服し利益率を10%台まで回復させた点は、同社の施工管理能力と交渉力の強さを示しています。
- 純利益の増益率が営業利益を上回っているのは、政策保有株式の売却という「資産の入れ替え」を加速させているためです。これは資本効率を重視する市場の要求に応える動きとして評価されます。
- 一方で、北米不動産での減損計上は、海外市場の不確実性を再認識させる結果となりました。国内の堅調さでカバーできているものの、海外事業の立て直しが次の焦点になるでしょう。
- 就活生の視点では、日本道路の完全子会社化に見られる「グループ一体経営」へのシフトに注目です。従来の請負業から、開発・運営・メンテナンスまでを統合する「プラットフォーム型」の成長戦略が見えてきます。
