りそなホールディングス・2026年3月期、純利益21%増の2,587億円——金利上昇で過去最高益、次期37円へ大幅増配
売上高
1.4兆円
+21.5%
営業利益
3,909億円
+33.8%
純利益
2,587億円
+21.3%
通期予想
3,100億円
営業利益率
28.8%
りそなホールディングスが発表した2026年3月期の連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比 21.3%増 の 2,587億円 となり、大幅な増益を記録しました。日本銀行の政策転換に伴う市場金利の上昇を受け、銀行本来の稼ぐ力である 国内預貸金利回り が改善したほか、決済や資産運用に関連する手数料収入が5期連続で過去最高を更新しました。好調な業績を背景に、2027年3月期の年間配当は前期比8円増の 37円 を計画しており、株主還元を一段と強化する方針です。
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、本業の収益力を示す経常収益が前期比 21.5%増 の 1兆3,572億円 、経常利益は同 33.8%増 の 3,909億円 となりました。最大の増益要因は、貸出金利回りの上昇に伴う「資金利益」の大幅な増加です。国内の金利環境が正常化に向かう中で、貸出金残高の積み上げと利鞘の改善が同時に進み、連結業務粗利益を大きく押し上げました。
顧客向けサービスによる「フィー収益」も堅調に推移しています。キャッシュレス決済の普及に伴う決済関連収益や、投資信託などの預かり資産残高(AUM)の拡大が寄与し、信託報酬と役務取引等利益の合計は 2,305億円(前期比 25億円増)と、 5期連続での過去最高更新 を達成しました。人件費やシステム投資などの経費は増加傾向にあるものの、収益の伸びがそれを大きく上回る理想的な決算内容となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 1兆1,174億円 | 1兆3,572億円 | +21.5% |
| 経常利益 | 2,921億円 | 3,909億円 | +33.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 2,133億円 | 2,587億円 | +21.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別の実質業務純益では、個人・法人部門が大きく伸びた一方で、市場部門が金利上昇局面でのポートフォリオ調整により苦戦するという、金利ある世界への移行期特有の構成となりました。
個人部門 は、住宅ローンを中心とした個人向け貸出の利回りが改善したほか、資産承継やコンサルティング業務へのニーズを捉え、実質業務純益は 1,732億円(前期比 34.9%増)と大幅な増益を達成しました。 法人部門 においても、企業の設備投資意欲の高まりを背景とした貸出金の増加に加え、事業承継や信託機能を活用したソリューション提供が奏功し、実質業務純益は 2,590億円(前期比 7.0%増)に拡大しました。
対照的に、 市場部門 は 880億円 の赤字(前期は 1,193億円 の赤字)を計上しました。これは、市場金利の上昇を見据えて、含み損を抱えた国内債券を中心に ポートフォリオの入れ替え(メンテナンス) を実施し、将来の収益力向上を優先して売却損を計上したためです。ただし、政策保有株式(持ち合い株)の売却損益は 1,200億円(前期比 323億円増)と大幅な利益を上げており、市場部門全体の損失を補っています。
| セグメント(実質業務純益) | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 個人部門 | 1,284億円 | 1,732億円 | +34.9% |
| 法人部門 | 2,420億円 | 2,590億円 | +7.0% |
| 市場部門 | △1,193億円 | △880億円 | 改善 |
| その他 | △27億円 | △383億円 | 悪化 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 個人部門 | 4,106億円 | 30% | 1,732億円 | 42.2% |
| 法人部門 | 4,855億円 | 36% | 2,591億円 | 53.4% |
| 市場部門 | -82,804百万円 | — | -88,003百万円 | — |
財務状況と資本政策
2026年3月末の総資産は、日本銀行への預け金の減少などにより、前期末比 1兆729億円減 の 76兆2,978億円 となりました。一方で、銀行の健全性を示す自己資本比率は、利益の積み上げにより 3.8%(前期末比 0.3ポイント上昇)に改善しています。貸出金は、地場企業や個人向けの需要が旺盛で、前期末比 3兆1,001億円増 の 47兆6,346億円 まで積み上がりました。
資本政策においては、 株主還元の積極化 が鮮明になっています。2026年3月期の年間配当は 29円(前期比4円増)となりましたが、次期(2027年3月期)はさらに8円の増配となる 37円 を予定しています。これは「総還元性向50%程度」という目標に向けた力強いコミットメントを示すものです。また、2026年5月には上限 350億円 の自社株買い枠を設定するなど、機動的な資本活用による株主価値の向上を追求しています。
リスクと課題
業績は絶好調ですが、会社側は外部環境の不確実性をリスク要因として挙げています。主な課題は以下の通りです。
- 外債・円債の金利リスク: 日本および米国の金利変動が、保有する有価証券の含み損益や資金運用収益に与える影響。特に金利の急激な上昇は、一時的な債券価格の下落を招く可能性があります。
- 与信費用のコントロール: 物価高騰や人件費上昇が中小企業の経営に与える負担を注視する必要があります。当期の与信費用は 140億円(前期比25億円増)に抑えられていますが、景気後退局面での倒産増加が潜在的なリスクです。
- 競争環境の変化: ネット銀行との住宅ローン金利競争に加え、異業種からの金融参入による顧客基盤の浸食が長期的課題となります。対面コンサルティングとデジタル技術の融合(ハイブリッド戦略)が鍵を握ります。
通期見通し
2027年3月期について、りそなHDは連結純利益 3,100億円(前期比 19.8%増)という意欲的な目標を掲げています。これは、国内金利の上昇がフルに収益に寄与し始めることに加え、法人・個人両面でのコンサルティング収益がさらに拡大することを見込んだものです。同社は中期経営計画において、2030年3月期のDOE(純資産配当率)目標を 3.5%程度 に引き上げるなど、増益と増配のサイクルをより強固にする構えです。
| 項目 | 前回予想 | 今回実績(2026/3) | 次期目標(2027/3) |
|---|---|---|---|
| 親会社株主に帰属する純利益 | 2,400億円 | 2,587億円 | 3,100億円 |
| 1株当たり当期純利益 | 105.74円 | 113.82円 | 137.60円 |
| 年間配当金 | 28円 | 29円 | 37円 |
戦略トピック:JR西日本との提携
今回の決算発表に合わせ、 西日本旅客鉄道(JR西日本)との資本業務提携 が発表されました。JR西日本が、りそなHD傘下の関西みらい銀行の株式20%(約900億円)を取得し、持分法適用会社化する計画です。りそなの持つ金融ノウハウとJR西日本の生活基盤を組み合わせ、関西経済の活性化や、ポイントサービスを介した顧客送客、キャッシュレス決済の普及などで相乗効果を狙います。この提携により、次期個別決算において約 400億円 の特別利益が計上される見通し(連結では相殺)であり、地域戦略の大きな転換点となりそうです。
今回のりそなHDの決算は、日本の銀行業界が「金利ある世界」に完全に回帰したことを象徴する、非常に力強い内容でした。
注目すべきは、単に金利上昇の恩恵を受けただけでなく、信託や決済などの フィービジネスで5年連続最高益 を更新している点です。これは、従来の銀行モデル(貸出利鞘への依存)から、持続的な手数料モデルへの転換が成功していることを示唆しています。
- 評価ポイント: DOE目標の導入と、次期の37円への大幅増配は、投資家から見て非常にポジティブです。また、JR西日本との提携は、銀行が単なる融資主体から「地域のプラットフォーマー」へと脱皮しようとする戦略的な一手として評価できます。
- 懸念点: 市場部門の赤字は、将来に向けた膿出し(デリスク)といえますが、金利の変動が激しい中で、債券運用の難易度は依然として高いままです。今後、市場部門がいかに安定した収益基盤に転換できるかが焦点となります。
就職活動中の学生にとっても、単なる「古い銀行」ではなく、ITや信託機能を駆使し、鉄道会社とも組むような コンサルティング・サービス企業 としての側面が強まっている点は、企業研究において重要なポイントになるでしょう。
