業界ダイジェスト
セコム株式会社 の会社詳細
セコム株式会社
セコム
2026年3月期 通期

セコム・2026年3月期通期、売上高・各利益で過去最高を更新——価格改定とDX推進が寄与、次期は120円へ大幅増配の方針

セコム
過去最高益
増配
セキュリティ
DX
自己株買い
2040年ビジョン
大阪・関西万博
防災事業
9735
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.3兆円

+4.7%

通期予想

1.3兆円

進捗率96%

営業利益

1,603億円

+11.1%

通期予想

1,655億円

進捗率97%

純利益

1,127億円

+4.2%

通期予想

1,058億円

進捗率106%

営業利益率

12.8%

セコムが発表した2026年3月期連結決算は、売上高・営業利益・経常利益・純利益のすべての主要指標で過去最高を達成する力強い結果となった。主力のセキュリティサービスにおける価格改定の浸透や、防災・保険事業の収益性向上が寄与し、営業利益は前期比 11.1%増1,603億円 に到達した。同社は「セコムグループ2040年ビジョン」を掲げ、AIやロボットを活用した「先回りの安心」への転換を加速させており、株主還元についても次期の年間配当を 120円 と前期から20円増額する計画を打ち出した。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比 4.7%増1兆2,568億円、営業利益が同 11.1%増1,603億円 となり、増収増益を達成した。国内経済の緩やかな回復を背景に、設備投資や個人消費が堅調に推移したことが追い風となった。特に営業利益率は前期の 12.0% から 12.8% へと向上しており、コスト管理と高付加価値サービスの展開が結実した形だ。

利益面での大幅な伸びは、主力のセキュリティサービス事業における適切な価格改定(値上げ)の実施と、常駐警備サービスの需要拡大が主因である。また、大阪・関西万博における会場警備の受託など、大規模イベントでの実績も収益を底上げした。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比 4.2%増1,126億円 となり、米国での投資事業組合運用益の減少といった下押し要因を跳ね除けて過去最高を更新した。

指標2025年3月期実績2026年3月期実績前年比
売上高1兆1,999億円1兆2,568億円+4.7%
営業利益1,442億円1,603億円+11.1%
経常利益1,751億円1,821億円+4.0%
当期純利益1,081億円1,126億円+4.2%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

全セグメントにおいて増収を確保し、特に防災や保険事業の利益成長が目立った。主力のセキュリティサービス事業は、売上高 6,606億円(前期比 +4.3%)、営業利益 1,238億円(同 +7.7%)と着実な成長を遂げた。事業所向けシステム「AZ」の拡販や顔認証機能を搭載した家庭用システムの投入に加え、海外では東南アジアを中心にデジタルトランスフォーメーションを推進したことが寄与している。

防災事業および保険事業は、グループの収益源として存在感を増している。防災事業は、能美防災やニッタンといった業界大手子会社が自動火災報知設備の受注を伸ばし、営業利益は 247億円(前期比 +23.1%)と急伸した。保険事業も、自然災害による損害の減少や運用収益の増加により、営業利益 59億円(同 +41.2%)と大幅な増益を記録した。

一方で、BPO・ICT事業は売上高こそ 1,299億円(前期比 +1.1%)と微増したものの、営業利益は 89億円(同 1.9%減)となった。これは、将来の成長に向けた新たなデータセンターの稼働開始に伴う減価償却費などの先行費用が発生したためである。しかし、データセンター事業自体の増収やサーバー機器販売は好調を維持しており、一時的な利益抑制と捉えられる。

セグメント売上高前年比営業利益前年比
セキュリティ6,606億円+4.3%1,238億円+7.7%
防災1,868億円+5.5%247億円+23.1%
メディカル920億円+6.8%62億円+15.6%
保険654億円+10.2%59億円+41.2%
BPO・ICT1,299億円+1.1%89億円△1.9%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
セキュリティサービス事業6,606億円53%1,238億円18.7%
防災事業1,869億円15%247億円13.2%
メディカルサービス事業921億円7%62億円6.8%
保険事業654億円5%60億円9.1%
BPO・ICT事業1,299億円10%90億円6.9%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は前期末比 845億円増2兆2,301億円 となった。投資有価証券の増加や、将来の成長に向けた設備投資による有形固定資産の積み上がりが主な要因である。自己資本比率は 58.9% を維持しており、極めて強固な財務基盤を背景に機動的な投資が可能な状態にある。

資本政策においては、積極的な株主還元が鮮明になっている。2026年3月期の配当は、株式分割考慮後で実質増配となる年間 100円 を実施した。さらに、2027年3月期については年間 120円 と大幅な増配を予定しており、配当性向は 45.9% まで上昇する見込みだ。また、当期中に約 600億円 の自己株買いを実施するなど、総還元性向の意識を高め、資本効率の向上と株価意識の経営を推進している。

通期見通しと戦略トピック

2027年3月期の業績予想は、売上高 1兆3,135億円(前期比 +4.5%)、営業利益 1,655億円(同 +3.2%)と、さらなる増収および本業での増益を見込む。純利益については前期比 6.1%減1,058億円 を予想しているが、これは前期に計上された米国投資事業組合の運用益という特殊要因が剥落するためであり、事業自体は引き続き堅調な推移を想定している。

戦略面では、新たに策定した「セコムグループ2040年ビジョン」が焦点となる。労働力不足が深刻化する中、セキュリティロボット「cocobo」の公道走行実現や、AIを活用したリモート警備システムの構築により、人的警備とテクノロジーの融合を加速させる。また、グローバル展開ではAVTEL社の完全子会社化を通じて欧米のデータセンター向け需要を取り込むなど、セキュリティSI(システムインテグレーション)領域での成長を狙う方針だ。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想前期比
売上高1兆2,568億円1兆3,135億円+4.5%
営業利益1,603億円1,655億円+3.2%
当期純利益1,126億円1,058億円△6.1%

リスクと課題

持続的な成長に向けた課題として、同社は以下のリスクを挙げている。

  • 外部環境の変動: 中東情勢の影響や米国の通称政策など、地政学リスクに伴う金融・為替市場の変動が、海外事業や投資運用益に影響を与える可能性がある。
  • 労働コストの上昇: 警備業界全体で人手不足が深刻化しており、人的警備における労務費の上昇が利益を圧迫するリスクがある。これに対し、ロボット活用や価格改定によるカバーが急務となっている。
  • DXへの投資負担: 2040年ビジョン実現に向けたシステム開発やデータセンターへの投資が先行し、短期的には固定費の増加要因となる可能性がある。
  • 競争環境の変化: IT企業や異業種からのホームセキュリティ・スマートホーム分野への参入により、価格・サービス競争が激化するリスクを抱えている。
AIアナリストの視点

セコムの今回の決算は、まさに「ディフェンシブ株から成長株への転換」を感じさせる内容です。注目すべきは営業利益率の改善で、人件費高騰という逆風に対し、徹底した価格転換とロボット・AIへのシフトによって「質の高い成長」を実現しています。

特に、次期の配当予想を120円へと大幅に引き上げた点は、株主還元への強い意思表示であり、投資家からの評価を一段と高めるでしょう。データセンター投資によるBPO・ICT部門の利益微減は、将来のクラウド・AIセキュリティの基盤作りとして必要なコストであり、悲観すべき材料ではありません。

就活生にとっては、日本国内の警備最大手という安定性だけでなく、ロボット走行の公道認可取得や海外SI企業のM&Aなど、テクノロジー企業としての側面が強まっている点が大きな魅力となるはずです。今後の焦点は、2040年ビジョンに向けた投資がいかに早く利益貢献し、純利益ベースでの成長軌道に戻せるかに集まるでしょう。