業界ダイジェスト
野村マイクロ・サイエンス株式会社 の会社詳細
野村マイクロ・サイエンス株式会社
野村マイクロ・サイエンス
2026年3月期 通期

野村マイクロ・サイエンス・2026年3月期、大型案件の反動で売上高41.6%減——次期はAI需要を背に過去最高更新へ

野村マイクロ・サイエンス
減収減益
V字回復
半導体製造装置
超純水
AI需要
増配
中期経営計画
受注高急増
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

562億円

-41.6%

通期予想

970億円

進捗率58%

営業利益

67億円

-56.6%

通期予想

160億円

進捗率42%

純利益

38億円

-62.6%

通期予想

111億円

進捗率34%

営業利益率

11.9%

超純水製造装置大手の野村マイクロ・サイエンスが発表した2026年3月期連結決算は、売上高が前期比 41.6%減562億4500万円 、営業利益が同 56.6%減66億6700万円 と大幅な減収減益となりました。前期に計上された日米での超大型案件の反動に加え、一部案件の工期遅延が響いた形ですが、会社側はこれを「一時的な端境期」と位置付けています。一方で、同時に発表された2027年3月期の業績予想では、生成AI向け半導体投資の拡大を背景に、売上高 970億円 (前期比 72.5%増 )と、過去最高業績の更新を見込む強気なV字回復シナリオを提示しました。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高 562億4500万円 (前年比 41.6%減 )、営業利益 66億6700万円 (同 56.6%減 )、純利益 38億1800万円 (同 62.6%減 )と、前年度の急成長から一転して厳しい着地となりました。この大幅な落ち込みの主因は、前期に業績を大きく押し上げた米国および日本での超大型水処理装置案件が完了したことによる「大型案件の反動減」です。さらに、受注済みの一部案件で着工時期が次期にずれ込んだことも、当期の数字を押し下げる要因となりました。

利益面でも、売上高の減少に伴う固定費負担の相対的な上昇に加え、前年度に寄与した高採算案件の構成比が低下したことで、営業利益率は前期の 16.0% から 11.9% へと低下しました。ただし、半導体メーカーの保守・点検等を含む「メンテナンスおよび消耗品」事業の売上高は 186億2600万円 (同 19.9%増 )と着実にストック型収益を積み上げており、装置販売の変動をカバーする構造強化が進んでいる点はポジティブな要素と言えます。受注高については 476億9400万円 (同 49.5%減 )となりましたが、これは次期以降の大型案件受注を控えた一時的な停滞と分析されています。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

地域別の動向では、前年度に成長を牽引した米国と日本の落ち込みが目立つ一方、韓国が急成長を遂げるなど、地域ごとの投資サイクルの違いが鮮明に表れました。

セグメント売上高前年比営業利益前年比概況
日本257億68百万円△2.8%30億83百万円△23.1%大型装置の工事は進捗したが、前年度の高採算案件の反動が利益を圧迫した。
韓国91億58百万円+184.1%4億2百万円+25.7%前期受注の大型案件が順調に工期を迎え、大幅な増収を達成。
中国76億87百万円△22.7%94百万円△90.5%半導体関連投資の一服感から受注が低迷し、利益は損益分岐点付近まで悪化した。
台湾35億35百万円△17.6%7億54百万円△51.4%消耗品は堅調だったが、大型装置の着工遅延が響き減収減益となった。
米国100億78百万円△80.8%23億55百万円△72.3%前期の記録的な大型案件完了の反動が最も顕著に表れた。

日本セグメントは主力の拠点として底堅く推移しましたが、米国セグメントは売上高が前期の約5分の1に縮小しており、同社の業績が大手半導体メーカーの特定の大型投資プロジェクトに大きく左右される特性が改めて浮き彫りになりました。一方で、韓国では新規の大型案件が寄与し始めており、地域ポートフォリオによるリスク分散が一定程度機能しています。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
日本258億円46%31億円12.0%
韓国92億円16%4億円4.4%
中国77億円14%94百万円1.2%
台湾35億円6%8億円21.3%
米国101億円18%24億円23.4%

通期見通し

2027年3月期の通期見通しについて、同社は極めて意欲的な増収増益予想を掲げています。生成AIサーバー向け先端ロジック半導体やDRAM(次世代メモリー)への投資再開を背景に、各国で大型装置の受注が再び活発化すると見込んでいます。特に、受注高予想は前期比 245.5%増1,647億80百万円 という驚異的な数値を提示しており、これは将来的な売上計上の強力な裏付けとなります。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高562億円970億円+72.5%
営業利益66億円160億円+140.0%
経常利益56億円150億円+166.5%
純利益38億円111億円+190.7%

この強気な見通しの背景には、AIサーバー向けの先端半導体分野での投資意欲が世界的に旺盛であることがあります。2026年以降はAI関連の需要がさらに高まると予測されており、同社の得意とする先端半導体製造に不可欠な超純水製造システムの需要もV字回復に向かう公算が大きくなっています。この計画が達成されれば、売上・利益ともに過去最高を大幅に塗り替えることになります。

財務状況と資本政策

財務面では、2026年3月期末の総資産は前期末比 64億9200万円減1,102億9000万円 となりました。売掛金の回収が進んだ一方で、たな卸資産(仕掛品)が増加しており、次期以降の大型案件に向けた準備が進んでいることが見て取れます。自己資本比率は前期末の 31.2% から 35.6% へと上昇し、財務健全性は向上しています。

キャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが 46億7900万円の収入 と、前期の202億円の支出から大幅に改善しました。これは前期に積み上がった売上債権の回収が進んだことが主な要因です。株主還元策としては、配当性向 30% を目標にバランスの取れた還元を実施する方針を継続しています。2026年3月期の年間配当は 81円 (前期比1円増)とし、次期の2027年3月期は業績回復を見込み、年間 85円 への増配を予定しています。

リスクと課題

好調な次期予想を掲げる一方で、経営陣は以下のリスク要因を注視しています。

  • 地政学リスクの長期化: 米中の通商摩擦や中東情勢の悪化、ウクライナ情勢などは、半導体メーカーの投資判断やサプライチェーンに多大な影響を及ぼす可能性があります。
  • 半導体サイクルの変動: 生成AI需要は強力ですが、その他の民生用半導体市場の回復が遅れた場合、顧客の設備投資計画が修正されるリスクがあります。
  • 案件の大型化と集中: 同社の業績は数件の「超大型案件」への依存度が高く、特定のプロジェクトの工期が数ヶ月ずれるだけで、四半期単位の業績が大きく上下するボラティリティの高さが課題です。

これらの課題に対し、同社は中期経営計画「TTT-26」に基づき、シンガポール拠点の設立による「製造拠点の分散化」や、製薬業界などの非半導体分野への進出を図り、収益基盤の多様化を急いでいます。

AIアナリストの視点

2026年3月期の決算数値だけを見ると非常に厳しい「崖」のような減益に見えますが、これは野村マイクロ・サイエンス特有の「大型案件の計上タイミング」によるものであり、投資家は表面的な減益よりも、同時に発表された次期の強気なガイダンスに注目すべきでしょう。

特筆すべきは、2027年3月期の受注高予想が 1,647億円 と、当期の売上の約3倍に相当する規模であることです。これはAI関連の投資が単なる期待ではなく、実効性のある受注として同社に届き始めていることを示唆しています。

懸念点としては、中国市場での利益率の大幅な悪化が挙げられます。米中対立の中で中国国内の投資が変調をきたしており、この地域の収益性回復がV字回復の確実性を高める鍵となるでしょう。就活生にとっては、同社が「水処理」というニッチながら半導体製造に不可欠な技術を握っており、世界中の先端工場に深く食い込んでいる強みを持つ一方で、受注の波が激しい業界であることを理解しておく必要があります。