レーザーテック・2026年6月期Q3、純利益7.8%増の568億円——サービス売上35%増が下支え、AI需要背景に高収益維持
売上高
1,695億円
+0.4%
通期予想
2,200億円
営業利益
782億円
-1.4%
通期予想
1,000億円
純利益
568億円
+7.8%
通期予想
720億円
営業利益率
46.1%
半導体検査装置の世界大手、レーザーテックが30日に発表した2026年6月期第3四半期(25年7月〜26年3月)の連結決算は、純利益が前年同期比 7.8%増 の 568億2,300万円 となった。AI(人工知能)向け先端半導体への投資拡大を背景に、装置の導入台数増加に伴う保守・サービス売上が大幅に伸長し、全体の収益を押し上げた。主力の装置販売は納入時期の影響で微減となったものの、営業利益率は 46.1% と極めて高い水準を維持しており、通期計画に対する進捗も概ね順調に推移している。
レーザーテック 2026年6月期 第3四半期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当第3四半期の売上高は前年同期比 0.4%増 の 1,695億3,900万円 と、前年並みの水準を確保した。営業利益は同 1.4%減 の 781億9,100万円 となったが、これは将来の成長に向けた研究開発費や人件費などの販管費が同 21.2%増加 したことが主な要因であり、本業の稼ぐ力に陰りは見られない。経常利益については、円安傾向に伴う為替差益 17億5,800万円 を計上したことなどにより、同 6.7%増 の 804億4,900万円 に拡大した。
半導体業界ではAI向けのGPU(画像処理半導体)やHBM(広帯域メモリ)に対する投資が世界的に加速しており、同社の最先端検査装置への需要は極めて旺盛だ。特にデバイスメーカーによる設備投資の意欲は強く、次世代プロセスへの移行が同社の中長期的な成長エンジンとなっている。足元の利益成長は、過去に納入した装置の保守契約やアップグレードといったストック型ビジネスが牽引する形となった。
業績推移(通期)
セグメント別動向
同社は検査・測定装置の単一セグメントだが、品目別の動きには明確な特徴が見られた。主力の「半導体関連装置」の売上高は前年同期比 6.7%減 の 1,246億6,400万円 となった。これは最先端装置の検収時期が第4四半期以降に重なっていることによる一時的な減少であり、受注環境そのものはAI需要を追い風に堅調さを維持している。
一方で、特筆すべきは「サービス」部門の急成長だ。売上高は前年同期比 35.5%増 の 420億6,300万円 に達し、全売上高に占める割合は 24.8% まで上昇した。これは世界各地で同社装置の稼働台数(インストールベース)が積み上がったことで、定期メンテナンスや部品交換の需要が安定的に発生する構造に変化していることを示している。このストックビジネスの拡大は、装置販売の波を吸収し、経営の安定性を高める重要な要素となっている。
| 品目別売上高 | 前年同期 | 当期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 半導体関連装置 | 1,335億円 | 1,246億円 | △6.7% |
| サービス | 310億円 | 420億円 | +35.5% |
| その他 | 42億円 | 28億円 | △33.3% |
| 合計 | 1,688億円 | 1,695億円 | +0.4% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 半導体関連装置 | 1,247億円 | 74% | — | — |
| サービス | 421億円 | 25% | — | — |
| その他 | 28億円 | 2% | — | — |
財務状況と資本政策
自己資本比率は前連結会計年度末の 63.7% から 72.5% へと大幅に上昇し、極めて強固な財務基盤を維持している。総資産は前期末比 187億8,900万円減 の 3,108億1,200万円 となったが、これは売掛金の回収が進んだことや、法人税等の支払いによる流動資産の減少によるものである。負債側では、前受金が 137億6,200万円減少 しており、受注から納入、検収に至るサイクルが着実に進行していることを示唆している。
株主還元については、積極的な姿勢を継続している。当期間中に約 120億円 を投じて 560,600株 の自己株買いを実施し、1株当たりの価値向上を図った。配当についても、中間配当 132円 を実施済みで、期末配当予想の 197円 と合わせた年間配当は 329円 を据え置いている。高い資本効率と株主への利益還元を両立させる経営判断が鮮明となっている。
リスクと課題
経営環境における主なリスクとして、同社は以下の要因を挙げている。
- 地政学リスクの増大: 中東情勢の緊迫化を背景とした資源・エネルギー価格の高騰が、サプライチェーンや物流コストに与える影響を注視している。
- インフレ懸念: 世界的な物価上昇に伴う金利動向の変化が、主要顧客である半導体メーカーの設備投資判断に影響を及ぼす可能性がある。
- 技術競争と人材確保: 最先端領域での優位性を維持するため、優秀なエンジニアの確保と研究開発への継続的な投資が不可欠となっている。
特に、先端半導体の輸出規制などの政治的要因は、同社の主要市場であるアジア圏での事業展開における不透明感として残っている。
通期見通し
2026年6月期の通期連結業績予想については、2026年1月30日に公表した数値を据え置いた。売上高は前期比 12.5%減 の 2,200億円 、営業利益は同 18.6%減 の 1,000億円 を見込む。一見すると減収減益の計画だが、これは前期に大型案件の検収が集中したことによる反動であり、受注残高や引き合いの状況を鑑みれば、成長トレンドの中での端境期との見方が強い。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 前期実績(参考) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,200億円 | 2,200億円 | 2,513億円 |
| 営業利益 | 1,000億円 | 1,000億円 | 1,228億円 |
| 純利益 | 720億円 | 720億円 | 846億円 |
今回の決算で最も注目すべきは、サービス売上高が35%超という高い伸びを見せた点です。装置販売はどうしても顧客の投資サイクルや検収タイミングに左右されますが、保守サービスという安定収益源が25%近いシェアを占めるようになったことは、収益構造の安定化という意味で大きなポジティブ材料と言えます。
また、営業利益率が依然として46%を超えている点は、同社の製品が「代替不可能」な高い付加価値を持っている証左です。通期予想が減益計画であるため表面上の数字に惑わされがちですが、AI半導体向けの需要はむしろ加速しており、次期以降の再成長に向けた仕込みの時期と捉えるのが妥当でしょう。
財務面でも自己資本比率を70%台に乗せつつ、120億円の自社株買いをきっちり実行するあたり、資本効率に対する経営陣の意識の高さが伺えます。投資家・学生双方にとって、日本を代表する「高収益・高技術企業」としての魅力が再確認された決算内容と言えます。
