業界ダイジェスト
日産化学株式会社 の会社詳細
日産化学株式会社
日産化学
2026年3月期 通期

日産化学・2026年3月期、純利益15%増の497億円——AI向け半導体材料と農薬が好調、105億円の自社株買いも発表

日産化学
増収増益
半導体材料
AIサーバー需要
農業化学品
増配
自社株買い
過去最高益
化学業界
Vista2027
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

2,796億円

+11.2%

通期予想

2,897億円

進捗率97%

営業利益

636億円

+11.8%

通期予想

668億円

進捗率95%

純利益

497億円

+15.5%

通期予想

515億円

進捗率97%

営業利益率

22.7%

日産化学が15日に発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前期比 11.2%増2,795億円、純利益が同 15.5%増497億円 となり、大幅な増収増益を達成した。AIサーバー需要の急拡大に伴う 先端半導体材料 の出荷増加や、国内外での農業化学品の好調な推移が業績を大きく押し上げた。同社は好調な業績を背景に、年間配当を前期から28円増の 202円 とし、さらに発行済株式の1.56%にあたる 105億円 を上限とした 自社株買い の実施も公表した。

業績のポイント

日産化学の2026年3月期決算は、主要な事業セグメントが総じて好調に推移し、過去最高水準の利益を更新した。売上高は 2,795億円(前年比+11.2%)、営業利益は 635億円(前年比+11.8%)に到達。期初予想をも上回る着地となった。背景には、世界的なデジタル化の進展に伴う半導体市場の回復と、食料需要の高まりを受けた農薬市場の活況がある。

利益面では、特に高付加価値な半導体材料の構成比が高まったことで、営業利益率は 22.7% と極めて高い水準を維持した(前期は22.6%)。純利益についても 497億円(前年比+15.5%)を記録し、1株当たり当期純利益(EPS)は 368.26円 に伸長した。原材料価格の変動やサプライチェーンの混乱といった外部リスクを、成長分野での販売増とコストダウン努力で跳ね返した格好だ。

項目前期実績 (2025/3)当期実績 (2026/3)前年同期比業績予想比
売上高2,513億円2,795億円+11.2%+2.7%
営業利益568億円635億円+11.8%+7.7%
経常利益580億円658億円+13.6%+11.7%
純利益430億円497億円+15.5%+13.0%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力となる「機能性材料」および「農業化学品」の両セグメントが利益成長のエンジンとなった。機能性材料事業は、売上高 1,133億円(前年比+13.3%)、営業利益 353億円(前年比+20.5%)と大幅な伸びを記録した。AIサーバー向けに使用量が増加している先端半導体用の反射防止コーティング材(ARC®)や多層材料が、顧客の稼働好調を受けて過去最高の利益水準を牽引した。一方で、ディスプレイ材料は液晶パネル需要の変動により減収となったものの、半導体材料の圧倒的な成長がそれを補って余りある結果となった。

農業化学品事業も堅調で、売上高 962億円(前年比+11.6%)、営業利益 260億円(前年比+0.5%)を確保した。動物用医薬品原薬「フルララネル」の販売が拡大したほか、国内では米価上昇に伴う農家の意欲向上により水稲用除草剤が伸長。海外市場でも殺菌剤「ライメイ」などが好調に推移し、同社の安定した収益基盤としての役割を果たした。

化学品事業は、半導体洗浄用の高純度硫酸や、自動車向けの「アドブルー®」が増収に寄与し、営業利益は 11億円(前年同期は3億円)と大幅な改善を見せた。ヘルスケア事業については、高コレステロール血症治療薬「リバロ」の原薬が横ばいだったものの、受託事業の減少により売上高 52億円(前年比-12.8%)と苦戦した。

セグメント売上高営業利益営業利益率
機能性材料1,133億円353億円31.1%
農業化学品962億円260億円27.0%
卸売1,288億円38億円2.9%
化学品393億円11億円2.8%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
機能性材料1,134億円41%353億円31.2%
農業化学品962億円34%260億円27.1%
化学品393億円14%11億円2.8%
卸売1,289億円46%38億円3.0%

財務状況と資本政策

2026年3月期末の総資産は、現金や売上債権の増加により前期末から243億円増の 3,550億円 となった。自己資本比率は 71.9% と前期から1.4ポイント上昇し、強固な財務基盤を維持している。キャッシュフロー面では、営業活動により 641億円 のキャッシュを創出し、これを設備投資(211億円)や株主還元(361億円)に充当する、規律ある資金配分が行われている。

注目すべきは 積極的な株主還元方針 だ。同社は中期経営計画「Vista2027 Stage II」に基づき、配当性向 55%以上、総還元性向 75%以上 を目標に掲げている。これに基づき、年間配当は前期の174円から 202円 へ大幅に引き上げた。さらに、決算発表に合わせて上限 105億円(210万株)の 自社株買い の実施を決定しており、投資家への利益配分を最優先する姿勢を鮮明にしている。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想についても、増収増益の継続を見込んでいる。売上高は前期比3.6%増の 2,897億円、営業利益は同5.1%増の 668億円 を計画している。AI市場の拡大が続く半導体材料のさらなる成長に加え、海外農薬市場の深耕が寄与する見通しだ。

為替レートについては1ドル= 150円 を前提としている。配当についても、年間で前期比10円増の 212円(中間70円、期末142円)を予定しており、連続増配への期待が高まる内容となった。

指標2026/3実績2027/3予想前期比
売上高2,796億円2,897億円+3.6%
営業利益636億円668億円+5.1%
経常利益659億円688億円+4.4%
純利益497億円515億円+3.6%

リスクと課題

持続的な成長に向けて、同社は以下のリスク要因を注視している。

  • 外部環境の不透明感: 中東情勢の緊迫化による原燃料価格の再高騰や、サプライチェーンへの影響を懸念材料としている。
  • 研究開発の加速: 半導体材料の技術革新スピードが速いため、EUV材料やメタマテリアル材料など、次世代製品の早期立ち上げが不可欠となっている。
  • 農業化学品の影響: 天候不順や各国の規制動向、また米ドル等との為替変動が海外売上高に与える影響を課題として挙げている。

これらの課題に対し、同社は富山工場への新分析棟の建設や、M&Aを含めた戦略投資により、事業ポートフォリオの高度化を図る方針だ。

AIアナリストの視点

日産化学の決算は、まさに「デジタル」と「食料(農業)」という二大成長テーマを捉えた理想的な内容です。特筆すべきは、機能性材料セグメントの営業利益率が30%を超えている点であり、これは一般的な化学メーカーを大きく凌駕する「高付加価値ビジネスへの転換」が成功している証左です。

投資家目線では、利益成長に合わせた機動的な自社株買い(105億円)と、総還元性向75%という高い還元意欲が非常に魅力的です。AIサーバーという強力な追い風が吹く中で、先端材料のシェアをどこまで維持できるかが今後の焦点となります。

就職活動中の学生にとっても、高い利益率を背景とした安定的な経営基盤と、環境エネルギーやライフサイエンスといった新領域への投資姿勢は、将来性を感じるポイントになるでしょう。