日産化学株式会社 の会社詳細
日産化学株式会社
日産化学
2026年3月期 第3四半期

日産化学・2026年3月期Q3、純利益10.5%増の350億円——AI向け半導体材料が好調、通期は増収増益を維持

4021
増収増益
半導体材料
AI投資
農業化学品
配当増額
自己株買い
高収益企業
過去最高水準
Vista2027
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1,954億円

+11.8%

通期予想

2,722億円

進捗率72%

営業利益

450億円

+9.5%

通期予想

590億円

進捗率76%

純利益

350億円

+10.5%

通期予想

440億円

進捗率80%

営業利益率

23.0%

日産化学が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 11.8%増1,954億円 、純利益が 10.5%増350億円 と大幅な増収増益を記録しました。世界的な人工知能(AI)関連の投資拡大を追い風に、半導体材料が極めて好調に推移したことが業績を牽引しました。主力の機能性材料事業が利益の柱として成長する一方、農業化学品事業も堅調な需要を維持しており、11月に発表した計画値を上回るペースで推移しています。

日産化学・2026年3月期Q3、純利益10.5%増の350億円——AI向け半導体材料が好調、通期は増収増益を維持

業績のポイント

2026年3月期第3四半期の連結業績は、売上高が 1,954億35百万円 (前年同期比 +11.8% )、営業利益が 449億84百万円 (同 +9.5% )、親会社株主に帰属する四半期純利益は 350億43百万円 (同 +10.5% )となりました。主要な利益指標すべてにおいて前年を上回り、特に期初からの累計期間として 過去最高水準の収益性 を維持しています。

業績向上の最大の要因は、世界的なテクノロジー投資の活発化に伴う半導体市場の回復です。特にAIサーバー向けなどで需要が急増している先端半導体用の材料が大幅な増収に寄与しました。また、11月時点での修正計画に対しても、売上高で +58億円 、営業利益で +33億円 の上ぶれ着地となっており、想定を上回る事業環境の好転が数字に表れています。

指標2025年3月期 Q3実績2026年3月期 Q3実績前年同期比
売上高1,748億円1,954億円+11.8%
営業利益410億円449億円+9.5%
経常利益433億円465億円+7.4%
四半期純利益317億円350億円+10.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

当期の成長を牽引したのは 機能性材料事業 です。売上高は 829億91百万円 (前年同期比 +11.9% )、営業利益は 267億67百万円 (同 +19.0% )と、利益面で全社の約6割を稼ぎ出す屋台骨となりました。顧客の稼働好調を受け、半導体用反射防止コーティング材(ARC®)や多層材料(OptiStack®)が大幅な増収となったほか、液晶配向材(サンエバー)などのディスプレイ材料も堅調に推移しました。

農業化学品事業 は、売上高 614億71百万円 (前年同期比 +14.3% )と伸長しました。動物用医薬品原薬「フルララネル」の販売が拡大したほか、国内では米価高騰に伴う農家の意欲向上を背景に、水稲用除草剤「アルテア」や「ベルダー」が好調でした。ただし、営業利益は 169億97百万円 (同 -6.4% )と、原材料費の変動や製品構成の変化により、前年同期を下回る結果となりました。

化学品事業 は、基礎化学品、ファインケミカルともに増収を確保しました。半導体洗浄用の高純度硫酸や、自動車向けの「アドブルー(高品位尿素水)」が寄与し、セグメント営業利益は 2億38百万円 (同 +16.1% )を確保しました。一方、ヘルスケア事業 は高コレステロール血症治療薬「リバロ」の原薬は増収となったものの、受託事業の低迷などにより、営業利益は 10億61百万円 (同 -35.8% )と苦戦を強いられました。

セグメント売上高営業利益利益率
化学品289億円2億円0.8%
機能性材料829億円267億円32.2%
農業化学品614億円169億円27.6%
ヘルスケア39億円10億円26.7%
卸売945億円29億円3.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
化学品事業289億円10%2億円0.8%
機能性材料事業830億円28%268億円32.2%
農業化学品事業615億円21%170億円27.6%
ヘルスケア事業40億円1%11億円26.7%
卸売事業945億円32%29億円3.1%

財務状況と資本政策

財務基盤は極めて強固な状態を維持しています。2025年12月末時点の総資産は、前連結会計年度末比で 93億81百万円 増の 3,401億44百万円 となりました。売上債権の回収が進む一方で、投資有価証券の評価額上昇や現金預金の積み増しが資産総額を押し上げました。自己資本比率は 71.1% と、前年度末(70.5%)からさらに改善しています。

キャッシュフローの面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 518億19百万円 の収入となり、税引前純利益の拡大によりキャッシュ創出力が高まっています。これを原資に、設備投資などの投資活動へ 153億36百万円 を投入しつつ、積極的な株主還元 も継続しています。

当期の配当については、第2四半期末の 70円 に対し、期末予想を 110円 としており、年間合計では前期実績を6円上回る 180円 を予定しています。また、当四半期中に約 83億円 の自己株買いを実施し、さらに 100万株の自己株式消却 を行うなど、資本効率の向上と株主への利益還元を経営の最優先事項の一つとして進めています。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月10日に公表した数値を据え置きました。売上高 2,722億円 (前期比 +8.3% )、営業利益 590億円 (同 +3.8% )を見込んでいます。第3四半期までの進捗率は営業利益ベースで 76.2% に達しており、通期計画の達成に向けた足取りは極めて順調です。

据え置きの背景には、不透明な外部環境があります。足元の半導体需要は極めて旺盛であるものの、主要国における貿易政策の変更や為替レートの変動など、世界経済の不確実性を慎重に見極める姿勢を崩していません。しかしながら、利益率の高い機能性材料が想定を上回るペースで推移していることから、期末に向けたさらなる上振れも期待されます。

項目前回予想今回予想(修正なし)前期実績
売上高2,722億円2,722億円2,512億円
営業利益590億円590億円568億円
親会社株主純利益440億円440億円430億円

リスクと課題

同社が直面している主なリスクと課題は以下の通りです。

  • 外部環境の変動: 世界的なインフレや金融政策の動向、特に主要国の貿易政策の変化が原材料調達や製品輸出に与える影響。
  • 半導体市場の循環性: AI向けは絶好調であるものの、PCやスマートフォン向けなど従来の民生品市場の回復遅れがリスク要因となります。
  • 製品ミックスの悪化: 農業化学品セグメントに見られるように、売上が増加しても高付加価値品の比率低下やコスト増により利益が相殺される懸念があります。
  • 新事業の育成: ヘルスケア事業の収益低下が続いており、既存薬のパテントライフを補完する新規開発品の早期収益化が課題です。
AIアナリストの視点

日産化学の決算は、同社がいかに「化学」という枠組みを超えて「先端材料メーカー」として成功しているかを物語っています。特に機能性材料の営業利益率が 32.2% に達している点は、一般的な化学メーカーとしては異例の高水準であり、AIブームの恩恵を直接的に受けている証左です。

注目すべきは、単なる一過性のブームに乗るだけでなく、農業化学品事業という「安定した収益源」と、半導体材料という「成長エンジン」のバランスが取れている点です。フルララネル(動物用医薬品)が安定したロイヤリティを生み出し、そのキャッシュをR&Dや株主還元(総還元性向75%以上目標)に回す循環が確立されています。

懸念点としては、ヘルスケア事業の減益傾向が挙げられますが、全社利益に占める割合は小さく、当面は機能性材料の伸びがこれを十分にカバーするでしょう。投資家にとっては、増配と自社株買いの両輪を回す株主重視の姿勢も非常に魅力的に映るはずです。