三菱マテリアル・2026年3月期Q3、純利益26%減の363億円——製錬事業の採算悪化が重荷も、加工事業は買収で急拡大
売上高
1.3兆円
-13.4%
通期予想
1.8兆円
営業利益
274億円
-15.2%
通期予想
470億円
純利益
364億円
-26.0%
通期予想
200億円
営業利益率
2.1%
三菱マテリアルが12日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)連結決算は、親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比 26.0%減 の 363億8,700万円 となった。主力の金属事業において、銅や金といった金属価格の上昇という追い風があったものの、製錬手数料(TC/RC)の条件悪化や金生産量の減少が本業の利益を押し下げた。一方で、ドイツの希少金属メーカー買収の効果により、加工事業の売上高は前年同期から約 1.5倍 に急拡大しており、ポートフォリオの転換が鮮明となっている。

業績のポイント
2026年3月期第3四半期の連結売上高は、前年同期比 13.4%減 の 1兆2,844億円 と減収となった。営業利益も 15.2%減 の 273億7,900万円 にとどまり、主力の金属事業における採算性の低下が全体を押し下げる結果となった。世界経済が米国の政策動向により不透明感を増すなか、自動車関連の需要は緩やかに回復したものの、AI関連を除く半導体需要の停滞や為替の円高基調が収益の重荷となった。
一方で、経常利益については前年同期比 7.6%増 の 611億5,700万円 と増益を確保した。これは本業の利益減を、海外の持分法適用会社からの受取配当金増加が補ったためである。最終利益が大幅な減益となった背景には、前年同期に計上した持分変動利益の剥落に加え、当期に固定資産の 減損損失 を計上したことが影響している。資源価格のボラティリティが高いなかで、本業の稼ぐ力をいかに維持するかが課題となっている。
| 指標 | 2025年3月期Q3 | 2026年3月期Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,836億円 | 1兆2,844億円 | △13.4% |
| 営業利益 | 322億円 | 273億円 | △15.2% |
| 経常利益 | 568億円 | 611億円 | +7.6% |
| 四半期純利益 | 491億円 | 363億円 | △26.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
金属事業は、売上高が前年同期比 21.9%減 の 8,548億円、営業利益が 77.0%減 の 51億円 と大幅な減益に見舞われた。銅や金の国際価格は堅調に推移したが、原料となる鉱石の買鉱条件(TC/RC)が歴史的な水準で悪化したことが直接的な要因となった。製錬事業におけるマージンの圧縮に加え、金生産量の減少も響いた形だ。ただし、鉱山からの受取配当金を含む経常利益ベースでは346億円を確保し、下支え役を果たしている。
高機能製品事業は、売上高が 7.5%増 の 4,143億円、営業利益が約 4倍 の 98億円 と好調だった。銅加工事業において自動車向けなどの販売数量が増加したほか、銅価格の上昇を適切に製品価格へ転嫁できたことが利益を押し上げた。電子材料分野ではシール製品の販売が減少したものの、一部の半導体関連製品で回復の兆しが見られたことが収益の改善に寄与した。
加工事業は、2024年12月に連結子会社化した エイチ・シー・スタルク・ホールディングス社 の貢献により、売上高が 49.3%増 の 1,656億円 と飛躍的に成長した。営業利益も 53.1%増 の 105億円 と二桁増益を達成している。タングステン製品や超硬工具の販売増加に加え、戦略的な値上げが浸透したことで、同社の成長エンジンとしての存在感が高まっている。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 前年同期比(売上) |
|---|---|---|---|
| 金属事業 | 8,548億円 | 51億円 | △21.9% |
| 高機能製品 | 4,143億円 | 98億円 | +7.5% |
| 加工事業 | 1,656億円 | 105億円 | +49.3% |
| 再生可能エネルギー | 42億円 | 6億円 | △33.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 金属事業 | 8,548億円 | 67% | 347億円 | 4.1% |
| 高機能製品 | 4,143億円 | 32% | 94億円 | 2.3% |
| 加工事業 | 1,657億円 | 13% | 91億円 | 5.5% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末から 5,498億円 増加し、2兆9,292億円 となった。主な要因は、貴金属取引に伴う貸付け金地金の増加や、加工事業の拡大に伴う棚卸資産の積み増しである。負債についても、預り金地金や有利子負債が増加したことで 5,050億円 増の 2兆1,911億円 となっている。資産の膨張に伴い、自己資本比率は前期末の 28.5% から 24.5% へと低下した。
キャッシュマネジメントの観点では、グローバルでの資金効率向上を狙い、一部の海外子会社を対象とした「ノーショナルプーリング」を導入した。これにより、グループ全体での余剰資金を一元管理し、金利コストの低減を図る構えだ。配当政策については、期末配当予想を 50円(年間合計 100円)で据え置いており、安定的な株主還元を継続する方針を示している。
リスクと課題
今後の経営において最大の懸念点は、金属事業における 買鉱条件(TC/RC)の低迷長期化 である。銅精鉱の需給逼迫を背景に、製錬業者が受け取る手数料が低水準で推移しており、本業の収益構造を圧迫している。また、再生可能エネルギー事業においては、2025年4月に発生した落雷により 安比地熱発電所 が操業を停止しており、持分法投資損益の悪化という形で利益を押し下げる要因となっている。
さらに、以下のリスク要因が挙げられる。
- 為替変動リスク: 米国の関税政策や金利動向に伴うドル円相場の急激な変動。
- 地政学リスク: 原燃料の安定調達に影響を及ぼす供給網の分断。
- エネルギー価格: 製錬プロセスで多用する電力・燃料価格の再上昇。
通期見通し
2026年3月期の通期業績予想について、同社は売上高と純利益を下方修正する一方、営業利益と経常利益は上方修正した。加工事業の買収効果や高機能製品の回復を反映させる一方で、金属事業の減収や減損損失の発生を織り込んだ。純利益が前期比で大幅なマイナスとなるのは、前期に計上された非経常的な利益の剥落が主因である。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | - | 1兆7,600億円 | 1兆9,629億円 |
| 営業利益 | - | 470億円 | 371億円 |
| 経常利益 | - | 76,000億円 | 602億円 |
| 当期純利益 | - | 200億円 | 340億円 |
今回の決算は、伝統的な「資源価格依存」から「高付加価値加工」へのポートフォリオ転換が過渡期にあることを象徴しています。
- 注目点: ドイツのHCスタルク社の連結化により、加工事業が利益の柱として育ちつつある点は極めてポジティブです。製錬手数料(TC/RC)の悪化という外部環境に左右されやすい金属事業の弱点を、加工事業の成長が補う構造が明確になりました。
- 懸念点: 自己資本比率が24.5%まで低下している点は、成長投資に伴う負債増として注視が必要です。また、地熱発電所の落雷による操業停止は、カーボンニュートラル戦略の一翼を担うセグメントだけに、早期復旧と再発防止が急務となります。
- 今後の焦点: 製錬事業の構造改革と、買収した加工事業のシナジーをいかに早期に創出できるかが、株価回復の鍵を握るでしょう。
