レオパレス21・2026年3月期Q3、営業利益12.5%増の286億円——家賃単価上昇が寄与、特損計上で純利益は減少
売上高
3,327億円
+2.7%
通期予想
4,441億円
営業利益
286億円
+12.5%
通期予想
348億円
純利益
100億円
-34.9%
通期予想
130億円
営業利益率
8.6%
レオパレス21が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 2.7%増 の 3,327億1,000万円、営業利益が同 12.5%増 の 286億4,500万円 と増収増益を達成しました。主力とする賃貸事業において、家賃単価の上昇基調が継続したことが収益を押し上げ、人的投資に伴う販管費の増加を吸収しました。一方で、純利益は自己新株予約権の消却に伴う特別損失の計上により、同 34.9%減 の 100億1,400万円 にとどまりました。本業の稼ぐ力は着実に向上しているものの、資本政策に伴う一時的要因が最終利益に影響した形です。
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、売上高が 3,327億1,000万円(前年同期比 +2.7%)、営業利益は 286億4,500万円(同 +12.5%)となりました。増益の主要因は、賃貸事業における収益性の改善です。期中平均入居率は 85.36% と前年並みを維持する一方、成約家賃単価指数は前年同期末比で 7ポイント上昇 の 118 となり、トップラインの底上げに寄与しました。
費用面では、従業員の待遇改善や増員といった「人的投資」により販売費及び一般管理費が 390億9,700万円(同 +14.9%)に増加しましたが、増収効果と原価抑制によってこれを十分にカバーしました。利益率の指標となるEBITDAも 310億5,400万円(同 +10.4%)と順調に推移しています。
ただし、最終的な親会社株主に帰属する四半期純利益は 100億1,400万円(同 △34.9%)と減益となりました。これは資本政策の一環として、自己新株予約権消却損 100億6,800万円 を特別損失として計上したことが大きく影響しています。これは財務体質の健全化と資本構成の最適化を目的とした一過性の動きであり、事業自体の不振を示すものではないという判断がなされています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力である賃貸事業が全体を牽引する一方、シルバー事業やその他事業では課題が残る結果となりました。各セグメントの詳細は以下の通りです。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 賃貸事業 | 3,212億円 | +2.7% | 347億円 | +9.5% | 10.8% |
| シルバー事業 | 103億円 | △0.4% | △7億円 | — | — |
| その他事業 | 11億円 | +21.5% | △19億円 | — | — |
賃貸事業は、入居率の安定と家賃単価の改善が功を奏しました。特に空室損失引当金の戻入や家賃原価の減少が発生したことで、セグメント利益は 347億4,700万円(前年同期比 +9.5%)と大きく伸長しました。依然としてグループ全体の収益基盤としての存在感を強めています。
シルバー事業は売上高 103億3,400万円(同 △0.4%)となり、営業損失は 7億3,600万円(前年同期は5億9,700万円の損失)と赤字幅が拡大しました。施設数は85施設で推移していますが、稼働率の向上や運営の安定化が急務となっています。この課題に対し、会社側はシルバー事業の一部を子会社へ分割し、経営課題の明確化と早期黒字化を目指す方針を打ち出しています。
その他事業(リゾート事業等)は、売上高は増加したものの、営業損失は 19億6,500万円(前年同期は18億2,500万円の損失)となりました。全社費用(調整額)の負担もあり、主力以外のセグメントにおける採算性の向上が中長期的な課題として浮き彫りになっています。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 賃貸事業 | 3,212億円 | 97% | 347億円 | 10.8% |
| シルバー事業 | 103億円 | 3% | -736百万円 | — |
| その他事業 | 12億円 | 0% | -1,965百万円 | — |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末から 524億7,700万円減少 し、 1,641億4,700万円 となりました。主な要因は、自己株式の取得に関連する現金及び預金の減少( △418億9,300万円)です。純資産も、自己株式の消却や取得により 489億2,100万円減少 し、 393億4,700万円 となりました。この結果、自己資本比率は前年度末の37.5%から 20.6% へと 16.9ポイント低下 しています。
特筆すべきは、積極的な株主還元と資本構成の是正です。2025年7月に 715億5,200万円 を投じて大規模な自己株式の公開買付け(TOB)を実施し、その後9月に 1億3,204万株の自己株式を消却 しました。これにより、1株当たりの価値向上を図る姿勢を明確にしています。配当については、第2四半期末に 5円 を実施済みで、期末も 5円 の予想を据え置き、年間合計 10円 を予定しています。
また、資金調達面ではみずほ銀行より 300億円のリファイナンス を実施することを決定しました。既存ローンの返済に充てるとともに、借入条件の見直しを通じて財務基盤の安定性と柔軟性を高める狙いがあります。
戦略トピック:シルバー事業の会社分割と財務特約
今回の決算と併せて、経営の効率化に向けた重要な決定が発表されました。まず、シルバー事業のうち有料老人ホーム22施設に係る事業を、2026年4月1日付で完全子会社の株式会社アズ・レジデンスへ承継させる「会社分割」を実施します。これは中期経営計画「New Growth 2028」に基づくもので、不採算部門の切り分けによる早期黒字化への執念が伺えます。
また、新しく締結された300億円のローン契約には「各年度の営業損益・経常損益を赤字にしないこと」や「ネットデット対EBITDA比率を5倍以内に抑えること」といった財務特約が付されています。これらは、過去の経営危機を乗り越えた同社に対し、金融機関が安定的な収益維持と規律ある財務運営を求めていることを示唆しています。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月に修正した数値を据え置いています。賃貸事業の堅調な推移を見込む一方、下半期も人的投資やシステム投資を継続する方針です。なお、純利益については前年比で減益予想となっていますが、これは前述の特別損失計上が主因であり、経常利益ベースでは前年比 22.5%増 と、本業の成長力は加速する見通しです。
| 項目 | 前回予想 | 当回予想 | 前期実績 (2025/3) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,441億円 | 4,441億円 | 4,320億円 |
| 営業利益 | 348億円 | 348億円 | 292億円 |
| 経常利益 | 330億円 | 330億円 | 269億円 |
| 純利益 | 130億円 | 130億円 | 178億円 |
| 1株当たり利益 | 38.79円 | 38.79円 | 56.14円 |
リスクと課題
今後の懸念材料として、以下の要因が挙げられます。
- 入居率の維持: 第3四半期末の入居率が前年同期比でわずかに低下しており、春の引っ越しシーズンに向けた募集競争の激化がリスクとなります。
- 金利上昇の影響: リファイナンスにより財務基盤を固めたものの、変動金利での借入が含まれる場合、国内の金利上昇が金利負担増を招く可能性があります。
- シルバー事業の再建: 会社分割による構造改革が、計画通り早期の黒字化に結びつくかが焦点です。
- 財務特約の遵守: ローン契約に付された利益維持の特約を遵守し続ける必要があり、経営の自由度が一定の制約を受ける側面があります。
レオパレス21の決算からは、かつての経営危機の影を払い落とし、「量より質(単価)」の経営へシフトした自信が読み取れます。特に成約家賃単価指数が118まで上昇している点は、インフレ局面においてコスト増を価格転嫁できている強みを示しています。
注目すべきは、純利益の減少を厭わず、Fortress Investment Group関連の新株予約権整理や大規模な自己株取得といった「資本の整理」を断行した点です。これにより自己資本比率は低下しましたが、ROE(自己資本利益率)の向上や株主還元意識の高さは投資家にポジティブに映るでしょう。
今後の焦点は、足並みを揃えきれていないシルバー事業の切り離しが、どれだけ早くグループ全体の利益率を押し上げるかです。本業が盤石であるうちに、負の遺産や不採算部門をどこまでスリム化できるかが、次の成長ステージへの鍵となります。
