ホンダ・2026年3月期Q3、営業利益48%減の5,915億円——四輪EV戦略見直しで巨額損失、二輪は過去最高益
売上高
16.0兆円
-2.2%
通期予想
21.1兆円
営業利益
5,915億円
-48.1%
通期予想
5,500億円
純利益
4,654億円
-42.2%
通期予想
3,000億円
営業利益率
3.7%
売上高は 15兆9,756億円(前年比 2.2%減)、営業利益は 5,915億円(同 48.1%減)と大幅な減益になりました。絶好調の二輪事業が過去最高益を更新して全体を支える一方、北米での政策転換やEV需要の減速を受け、四輪事業で2,793億円の損失を出したことが大きな重荷となりました。
業績のポイント
当第3四半期の決算は、稼ぎ頭の二輪と苦戦する四輪の明暗がはっきりと分かれました。
- 売上収益は 15兆9,756億円(前年比 2.2%減)と微減しました。
- 営業利益は 5,915億円(前年比 48.1%減)とほぼ半減しました。
- 四輪事業にて、北米でのEV税制優遇の廃止や排出規制の緩和といった市場環境の激変を受け、商品計画を大幅に見直しました。
- この方針転換に伴い、特定のEVモデルの開発中止や減損損失など、合計 2,793億円 の損失を出しました。
- 一方で、二輪事業はアジアを中心に販売を伸ばし、過去最高の業績で全体の利益を底支えしています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
- 二輪事業: 売上高 2兆9,336億円(前年比 8.3%増)、営業利益 5,465億円(同 8.9%増)。インドやベトナムでの販売が好調で、高い収益性を維持しています。
- 四輪事業: 売上高 10兆4,348億円(前年比 4.2%減)、営業利益は 1,664億円の赤字(前年は4,026億円の黒字)。前述のEV戦略見直しに伴う一時的な損失が響き、利益が消え去りました。
- 金融サービス事業: 売上高 2兆5,578億円(前年比 3.9%減)、営業利益 2,180億円(同 11.0%減)。オペレーティング・リース資産は増えたものの、前期ほどの利益は出ませんでした。
- パワープロダクツ事業他: 売上高 2,906億円(前年比 3.3%増)、営業利益は 65億円の赤字。研究開発費の負担などが継続しています。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 二輪事業 | 2.9兆円 | 18% | 5,466億円 | 18.6% |
| 四輪事業 | 10.4兆円 | 65% | -166,481百万円 | -1.6% |
| 金融サービス事業 | 2.6兆円 | 16% | 2,180億円 | 8.5% |
| パワープロダクツ事業及びその他の事業 | 2,907億円 | 2% | -6,596百万円 | -2.3% |
財務状況と資本政策
- 総資産は 32兆8,495億円 となり、前期末より 2兆736億円 増えました。主にリース資産の増加や円安による為替の影響です。
- 自己資本比率は 37.9% と、健全な水準を維持しています。
- 配当金は年間で 70円(前期比 2円増)を予定しており、減益の中でも株主還元を重視する姿勢を見せています。
- また、資本効率の向上のため、発行済株式の 14.1% にあたる大規模な自己株式の消却(2026年2月27日予定)を決定しました。
リスクと課題
- 米国の政策転換: トランプ政権下でのEV補助金廃止や関税の引き上げが、今後の北米販売に与える影響が不透明です。
- EV目標の下方修正: 2030年時点のEV販売比率目標を、従来の 30% から 20% へと引き下げました。現実的な路線へ舵を切ったものの、将来の成長性の再構築が急務です。
- 中国メーカーとの競争: アジア市場において、現地メーカーの追い上げにより競争が一段と激しくなっています。
通期見通し
通期の業績予想を下方修正しました。
- 売上収益: 21兆1,000億円(前期比 2.7%減)
- 営業利益: 5,500億円(前期比 54.7%減)
- 純利益: 3,000億円(前期比 64.1%減)
修正の理由は、四輪事業でのEV関連損失の発生と、市場環境の変化に伴う販売台数の見直しによるものです。
今回のホンダの決算は、非常に「苦い決断」が数字に表れた内容です。注目すべきは、2030年のEV販売比率目標を30%から20%へ引き下げた点です。北米での政治情勢の変化(補助金廃止など)をいち早く察知し、傷が浅いうちに商品計画を整理した格好ですが、その代償として約2,800億円もの損失を一度に出したインパクトは絶大です。
一方で、二輪事業の圧倒的な強さがホンダの「生命線」であることを再認識させられました。二輪単体で5,400億円以上の利益を叩き出しており、このキャッシュがあるからこそ、四輪の痛みを吸収しながら構造改革を進められています。
投資家目線では、大幅減益にもかかわらず増配を維持し、さらに発行済株式の14%という極めて大規模な自己株消却を発表した点が評価の分かれ道でしょう。利益が激減しても「株主還元の手は緩めない」という強い意志と、将来の1株当たり利益(EPS)を守る姿勢が見て取れます。今後は、軌道修正したEV戦略がどれだけ早く実を結ぶか、そして関税リスクをどう乗り越えるかが焦点となります。
