日産自動車・2026年3月期通期、売上高4.9%減の12兆78億円——最終赤字5,330億円、次期黒字化へ「Re:Nissan」推進
売上高
12.0兆円
-4.9%
通期予想
13.0兆円
営業利益
580億円
-16.9%
通期予想
2,000億円
純利益
-533,095百万円
通期予想
200億円
営業利益率
0.5%
日産自動車が発表した2026年3月期通期決算は、売上高が前年比 4.9%減 の 12兆78億円 、営業利益は 16.9%減 の 580億円 となりました。世界的な販売台数の減少に加え、北米や欧州での事業用資産の減損損失を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純損失は 5,330億円 (前期は6,708億円の赤字)と依然として厳しい状況が続いています。同社は経営再建計画 「Re:Nissan」 をふまえ、次期の黒字浮上を目指す方針です。
業績のポイント
2026年3月期の業績は、世界的な需要変動と競争激化の波に直面する形となりました。売上高は 12兆78億円 (前年比 4.9%減 )、営業利益は 580億円 (前年比 16.9%減 )を記録しています。収益の柱となるグローバル小売台数は、日本や中国、欧州など主要市場での苦戦が響き、前年比 5.8%減 の 315万1千台 にとどまりました。
利益面では、米国での関税影響や為替変動、物価高騰によるコスト増が重くのしかかりました。これらに対し、徹底したコスト削減活動を推進したものの、販売台数の減少による利益押し下げ分を補うには至りませんでした。特に、北米市場における中古車価格の下落や、米国連邦EV税控除制度の廃止に伴う リース車両の減損 などが、営業利益を大きく圧迫する要因となりました。
最終的な損益については、固定資産の減損損失を特別損失として 2,401億円 計上したことが響き、当期純損失は 5,330億円 となりました。前年度(6,708億円の赤字)からは改善が見られるものの、依然として巨額の赤字を抱える状況です。就職活動中の学生や投資家にとっては、主力である自動車事業の収益性回復がいつ実現するのか、再建のスピード感が最大の注目点となります。
業績推移(通期)
セグメント別動向
日産自動車の事業は、厳しい状況が続く自動車事業と、安定した利益を稼ぎ出す販売金融事業の二極化が鮮明になっています。自動車事業は、販売台数の減少と生産コストの増加により、営業損失が継続する苦境にあります。一方、販売金融事業は高い利益率を維持しており、グループ全体の収益を下支えする構造が続いています。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 自動車事業 | 10兆6,898億円 | △2,399億円 | △2.2% |
| 販売金融事業 | 1兆3,180億円 | 2,979億円 | 22.6% |
| 連結合計 | 12兆0,078億円 | 580億円 | 0.5% |
自動車事業 は、主要市場でのシェア低下が深刻です。日本国内では小売台数が前年比 13.5%減 と大きく落ち込み、市場占有率は 8.8% まで低下しました。中国市場においても、現地のEVメーカーとの競争激化により小売台数が 6.3%減 となり、厳しい戦いを強いられています。北米では販売台数こそ微減(0.9%減)にとどまりましたが、インセンティブの増加やリース車両の資産価値低下が収益を悪化させました。
販売金融事業 は、売上高が前年比 4.4%増 と堅調に推移し、営業利益も 2,979億円 (前年比 4.3%増 )を確保しました。自動車本体の販売が苦戦する中で、クレジットやリースなどの金融サービスが利益の源泉となっています。しかし、北米での中古車価格下落は金融事業のリスク要因でもあり、今後の動向を慎重に見極める必要があります。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 自動車事業 | 10.7兆円 | 89% | -239,937百万円 | -2.2% |
| 販売金融事業 | 1.3兆円 | 11% | 2,979億円 | 22.6% |
財務状況と資本政策
財務基盤については、厳しい業績下でも一定の流動性を維持しています。2026年3月末の総資産は、有価証券の増加などにより前年末比 4.1%増 の 19兆8,124億円 となりました。一方で、純資産は利益剰余金の減少により 5,241億円 (前期比 3.7%減 )となり、自己資本比率は 24.2% (前期は26.1%)へ低下しています。
キャッシュ・フローの面では、自動車事業のフリーキャッシュ・フローが 4,808億円のマイナス となりました。しかし、下半期に限れば 1,120億円のプラス に転じており、ネットキャッシュは 1兆1,704億円 と健全な水準を維持しています。この手元資金は、将来の成長投資や構造改革の原資として極めて重要な意味を持ちます。
株主還元については、当期も 年間配当を無配 としました。巨額の最終赤字を計上している現状では、配当よりも経営基盤の立て直しと次世代技術への投資を優先する経営判断が下されています。投資家にとっては、次期の黒字化および復配のタイミングが焦点となります。
リスクと課題
同社が直面する経営課題は多岐にわたりますが、特に外部環境の変化に対する脆弱性の克服が急務です。決算短信では以下のリスクが強調されています。
- 米国市場の不透明性: 米国連邦EV税控除制度の廃止や、中古車価格の下落が継続するリスクがあります。これらはリース車両の残価設定に直接影響し、さらなる減損を招く恐れがあります。
- グローバルなインフレ影響: 原材料価格の変動や物流コスト、労務費の上昇が利益を圧迫しています。次期は 850億円 の原材料価格変動による減益要因を見込んでいます。
- 中国市場での競争激化: 現地EVメーカーの台頭により、日系メーカー全体の苦戦が続いています。ブランド力の再構築と、競争力のある新車投入が不可欠です。
- ガバナンスと訴訟リスク: 過去の有価証券報告書の虚偽記載に関連した訴訟が国内外で続いており、進行状況によっては業績に影響を与える可能性があります。
通期見通し
2027年3月期(次期)について、日産自動車は 「黒字浮上」 を目指す意欲的な計画を発表しました。グローバル小売台数を前年比 4.7%増 の 330万台 と見込み、販売パフォーマンスの改善やモノづくりコストの削減を徹底するとしています。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 12兆78億円 | 13兆0,000億円 | +8.3% |
| 営業利益 | 580億円 | 2,000億円 | +244.8% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △5,330億円 | 200億円 | — |
増益の柱として、販売パフォーマンスの改善で 1,550億円 、モノづくりコストの減少で 3,400億円 のプラス影響を見込んでいます。一方で、為替前提を1ドル150円、1ユーロ175円と設定しており、為替やインフレによるコスト増(計約800億円)を経営努力で跳ね返せるかが試される1年となります。
日産自動車の決算は、数字上は非常に厳しい「耐え忍ぶ時期」を象徴しています。特筆すべきは、本業の自動車事業が約2,400億円もの営業赤字を出しながら、販売金融事業が約3,000億円の利益を出して連結ベースの営業黒字を死守しているという「金融が支える車会社」の構図です。
注目すべき「裏側」の動きとして、自社利用ソフトウェアの耐用年数を5年から8年に延長するという 会計上の見積りの変更 を行っています。これにより当期の営業利益が 110億円 押し上げられており、なりふり構わず利益を捻出しようとする姿勢が見て取れます。また、製品保証引当金の見積り変更でも 366億円 の利益押し上げ効果が出ています。
次期予想の営業利益2,000億円という数字は、これらの一過性の会計処理に頼らず、純粋に「モノづくりコスト」を 3,400億円 削減できるかにかかっています。就活生にとっては、この過酷な構造改革期を「チャンス」と捉えられるタフさが求められる環境と言えるでしょう。投資家視点では、北米でのEV関連の逆風が一段落し、底打ちを確認できるかが焦点です。
