コスモエネルギーHD・2026年3月期、純利益28%増の740億円——石油事業の収益改善で増益も、次期は地政学リスクで大幅減益予想
売上高
2.7兆円
-4.4%
通期予想
2.9兆円
営業利益
1,448億円
+12.9%
通期予想
1,020億円
純利益
740億円
+28.4%
通期予想
440億円
営業利益率
5.4%
コスモエネルギーホールディングスが12日に発表した2026年3月期の連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前年同期比 28.4%増 の 740億円 となった。主力の石油事業において、在庫評価の影響を除いた実質的な収益力が改善したことが大きく寄与した。一方で、2027年3月期の業績予想については、中東情勢の緊迫化に伴う不透明感を背景に、純利益が 40.6%減 の 440億円 となる大幅な減益見通しを公表している。同社は<u>「三位一体の資本政策」</u>を掲げ、資本効率の向上を急ぐ構えだ。
業績のポイント
2026年3月期の連結業績は、売上高が前年同期比 4.4%減 の 2兆6,775億円 と減収になったものの、本業の儲けを示す営業利益は 12.9%増 の 1,447億円 と増益を確保した。売上高の減少は、ドバイ原油価格が期初の一バレル75ドル台から期中に下落基調をたどったことや、国内の石油製品需要が緩やかに減退したことが主な要因だ。しかし、営業利益ベースでは、石油事業におけるマージンの改善やコスト削減の取り組みが功を奏し、前期を上回る結果となった。
特筆すべきは、同社が推進してきた「第7次連結中期経営計画」の最終年度として、収益力の確保と資本政策の充実を同時に進めた点である。景気は緩やかな回復基調にあるものの、中東情勢の緊迫化や円安進行といった外部環境の激変に対し、機動的な在庫管理と販売戦略を展開した。その結果、経常利益は前期比 1.0%減 の 1,492億円 とほぼ横ばいながら、税引前利益の増加や法人税等の調整により、最終的な純利益は大幅な増益を達成した。
| 項目 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前期比 | 2027年3月期予想 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆7,999億円 | 2兆6,775億円 | △4.4% | 2兆8,700億円 |
| 営業利益 | 1,282億円 | 1,447億円 | +12.9% | 1,020億円 |
| 経常利益 | 1,507億円 | 1,492億円 | △1.0% | 1,150億円 |
| 純利益 | 576億円 | 740億円 | +28.4% | 440億円 |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の 石油事業 は、売上高が 2兆3,856億円 (前期比 1,213億円減 )、セグメント利益は 763億円 (前期比 145億円増 )となった。原油価格の下落により売上高は減少したが、在庫評価の影響を除いた実質的なセグメント利益は 928億円 (前期比 2億円増 )と堅調に推移した。国内需要の減退という構造的な課題に対し、製油所の高稼働維持と輸出の最適化を組み合わせることで、高い収益性を維持している。
石油化学事業 は、売上高 3,328億円 に対して 31億円 のセグメント損失(前期は50億円の損失)を計上した。依然として製品市況の低迷が続いているものの、千葉地区におけるエチレン生産の最適化や、第3エチレン製造装置の稼働停止といった<u>構造改革の効果</u>により、赤字幅は縮小傾向にある。今後は生産集約によるコスト競争力の強化が収益回復のカギとなる。
石油開発事業 は、売上高 1,304億円 (前期比 42億円減 )、セグメント利益 653億円 (前期比 171億円減 )と減益を余儀なくされた。これは主に前期比で原油価格が下落したことによる販売単価の低下が影響している。一方、再生可能エネルギー事業 は、新規サイトの運転開始が寄与し、売上高 165億円 (前期比 32億円増 )、セグメント利益 28億円 (前期比 15億円増 )と着実な成長を見せた。
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 前期比(利益) |
|---|---|---|---|
| 石油事業 | 2兆3,856億円 | 763億円 | +145億円 |
| 石油化学事業 | 3,328億円 | △31億円 | +19億円(改善) |
| 石油開発事業 | 1,304億円 | 653億円 | △171億円 |
| 再生可能エネルギー | 165億円 | 28億円 | +15億円 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 石油事業 | 2.4兆円 | 89% | 763億円 | 3.2% |
| 石油化学事業 | 3,328億円 | 12% | -3,084百万円 | -0.9% |
| 石油開発事業 | 1,304億円 | 5% | 653億円 | 50.1% |
| 再生可能エネルギー事業 | 165億円 | 1% | 28億円 | 16.7% |
財務状況と資本政策
2026年3月期末の総資産は、前期末比 400億円増 の 2兆1,966億円 となった。有形固定資産が 326億円増加 した一方、負債合計は 117億円増 の 1兆4,608億円 に抑えられている。特に長期借入金の返済( 744億円減 )を進めるなど、有利子負債の削減と財務体質の強化を継続している。この結果、自己資本比率は 27.6% と、前期末の 27.1% から 0.5ポイント改善した。
株主還元については、2025年10月1日付で実施した<u>「1株につき2株」の株式分割</u>を考慮した上で、積極的な姿勢を維持している。2026年3月期の年間配当金は分割後換算で 165円 (中間75円、期末90円)を予定しており、配当性向は 36.4% となる。また、期中に約 297億円 の自己株買いを実施したことも、資本効率の向上と株価意識の経営(PBR1倍超の達成)に対する強いコミットメントを示している。
リスクと課題
今後の経営において最大の懸念要因は、中東情勢の緊迫化に伴う地政学リスクである。同社は原油輸入の多くを中東地域に依存しており、特にホルムズ海峡の封鎖や原油価格の急騰は、調達コストの増大や安定供給体制に直接的な悪影響を及ぼすリスクがある。実際、2027年3月期の業績予想では、これらの不確実性を織り込み、原油価格 89ドル/bbl 、為替 155円/ドル という慎重な前提を置いている。
また、脱炭素社会への移行に伴う国内石油製品の需要減退は避けられない課題だ。これに対し、同社は石油化学事業の構造改革や、風力発電を中心とした再生可能エネルギー事業への投資を加速させている。既存の石油事業で稼いだキャッシュを、いかに迅速かつ効率的に「New領域」へ再投資し、収益の柱を多角化できるかが、中長期的な企業価値を左右することになる。
コスモエネルギーHDの今期決算は、原油価格の変動という外部要因を石油事業のオペレーション改善で跳ね返した、底堅い内容と評価できます。特に、市場が注目していた PBR1倍水準の達成 について、3カ年平均でクリアした点は、旧来の「石油元売り」から「資本効率重視のエネルギー企業」への脱皮を印象付けました。
一方で、来期の減益予想は、保守的な前提(ホルムズ海峡リスク等)を置いているとはいえ、投資家には慎重な姿勢として映るでしょう。石油化学事業の赤字が縮小傾向にあることは好材料ですが、本格的な黒字化にはまだ時間を要する見込みです。
就活生の視点では、同社が「Oil & New」というスローガンのもと、石油一辺倒から風力発電などのグリーンエネルギーへ大きく舵を切っている点は非常に魅力的なポイントです。伝統的なインフラ企業としての安定性と、エネルギー転換というダイナミックな変革期の両面を体験できるフェーズにあると言えます。
