業界ダイジェスト
株式会社安藤・間 の会社詳細
株式会社安藤・間
安藤・間
2026年3月期 通期

安藤ハザマ・2026年3月期通期、純利益12.5%増の297億円——海外M&Aと累進配当で攻めの姿勢を鮮明化

安藤ハザマ
1719
ゼネコン
増収増益
累進配当
M&A
シンガポール展開
中期経営計画
建設DX
株主還元
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

4,396億円

+3.4%

通期予想

4,900億円

進捗率90%

営業利益

336億円

-4.6%

通期予想

340億円

進捗率99%

純利益

297億円

+12.5%

通期予想

222億円

進捗率134%

営業利益率

7.6%

中堅ゼネコンの安藤ハザマが発表した2026年3月期通期決算は、売上高が 4,396億円(前年比 +3.4%)、親会社株主に帰属する当期純利益が 297億円(前年比 +12.5%)と、最終増益を確保しました。資材高の影響で営業利益は微減したものの、政策保有株の売却による特別利益の計上が利益を押し上げました。同時に発表された新中期経営計画では、シンガポール企業の買収による海外事業の強化や、1株当たり80円以上の累進配当の導入など、株主還元と成長投資の両輪を加速させる方針を打ち出しています。

業績のポイント

安藤ハザマの当連結会計年度は、公共・民間の両投資が底堅く推移したことで、売上高は 4,396億円(前年比 +3.4%)と増収を達成しました。一方で、建設業界全体の課題である資材価格の高騰や労務費の上昇が利益を圧迫し、本業の儲けを示す営業利益は 336億円(前年比 △4.6%)となりました。しかし、事業ポートフォリオの最適化を進める中で投資有価証券売却益を 103億円 計上したことが大きく寄与し、最終的な純利益は 297億円(前年比 +12.5%)と力強い伸びを見せました。

特筆すべきは、建設業界の厳しいコスト環境下でも、手持ち工事の着実な進捗により増収基調を維持している点です。自己資本当期純利益率(ROE)は 15.7% と高い水準を維持しており、効率的な経営が継続されています。今回の決算は、コスト増という外部要因を、資産売却やセグメントごとの収益管理によってカバーし、投資家への還元原資をしっかりと確保した内容と言えます。

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力である土木事業は、国内の公共投資が堅調だったことを背景に、売上高 1,408億円(前年比 +6.1%)、営業利益 154億円(前年比 +2.0%)と増収増益を達成しました。特に高速道路の更新事業や防災関連の大型案件が寄与し、収益性の高い受注が維持されています。

一方で建築事業は、売上高こそ 2,622億円(前年比 +0.4%)と横ばいを維持したものの、営業利益は 243億円(前年比 △9.4%)と苦戦しました。民間設備投資の意欲は依然として高いものの、工事採算の悪化が利益を押し下げた形です。今後は選別受注の徹底と、ICT活用による施工効率化が課題となります。

セグメント売上高前年比営業利益前年比営業利益率
土木事業1,408億円+6.1%154億円+2.0%11.0%
建築事業2,622億円+0.4%243億円△9.4%9.3%
グループ事業265億円+11.5%20億円+90.5%7.6%
その他99億円+37.6%9億円+46.5%9.5%

注目の「グループ事業」は、建設用資材の販売やリースが好調で、営業利益が前年比で ほぼ倍増 するなど、多角化戦略が実を結び始めています。

セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
土木事業1,409億円32%155億円11.0%
建築事業2,623億円60%244億円9.3%
グループ事業265億円6%20億円7.6%

戦略トピック:海外展開の加速と新中計

今回の決算と併せて、同社はシンガポールのリニューアル建築大手「QXY Resources Pte.Ltd.」の全株式取得(子会社化)を発表しました。取得価額は約 45億円 で、東南アジアでの成長を加速させる戦略的な布石です。シンガポールは都市再生需要が極めて高く、安定した収益基盤として期待されています。

また、2027年3月期から始まる「中期経営計画2028」では、「魅力的な企業であり続ける」ことを基本方針に掲げました。国内の労働力不足を見据え、ICTやAIによる施工の自動化・省人化に注力するほか、エネルギー事業への投資も継続します。M&Aと先行投資を組み合わせ、従来の受注型ビジネスから、より付加価値の高い「ストックビジネス」への転換を急いでいます。

財務状況と資本政策

財務面では、総資産が前年末比で 396億円 増加し 4,115億円 となりました。これは投資有価証券の含み益拡大や現預金の増加によるものです。自己資本比率は 50.6%(前期は46.0%)へと大幅に上昇し、ゼネコンの中でも極めて盤石な財務体質を構築しています。

株主還元については、2026年3月期の年間配当を前期比10円増の 80円 としました。さらに、新たな資本政策として 「累進配当制度(年間80円以上)」 を導入。業績の変動にかかわらず、最低でも80円の配当を維持し、利益成長に伴う増配を目指す方針です。この積極的な還元姿勢は、資本効率の向上を求める投資家からの強い支持を得る要因となりそうです。

リスクと課題

将来のリスク要因として、会社側は以下の点を挙げています。

  • 深刻な担い手不足: 建設技能労働者の減少と高齢化に伴い、人財確保に向けた処遇改善コストの増大が懸念されます。
  • コスト動向: 労務費や資材価格が再び急騰した場合、現在の手持ち工事の採算が悪化するリスクがあります。
  • 地政学リスク: 中東情勢や米国の通商政策の変化が、グローバルなサプライチェーンや経済環境に与える影響に注視が必要です。
  • 海外事業の統合リスク: 今回のシンガポール企業の買収において、期待したシナジー(相乗効果)を早期に発揮できるかが焦点となります。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想は、売上高 4,900億円(前期比 +11.5%)と大幅な増収を見込む一方、親会社株主に帰属する当期純利益は 222億円(前期比 △25.4%)と減益を予想しています。これは前期に計上した多額の有価証券売却益という特殊要因が剥落するためで、本業の営業利益は 340億円(前期比 +1.1%)と微増を確保する計画です。

指標2026年3月期実績2027年3月期予想前期比
売上高4,396億円4,900億円+11.5%
営業利益336億円340億円+1.1%
当期純利益297億円222億円△25.4%
年間配当金80円84円+4円
AIアナリストの視点

安藤ハザマの今回の決算は、伝統的なゼネコンの枠組みを超えようとする「攻めの姿勢」が際立つ内容でした。特に、ROE目標(12%以上)の維持を掲げつつ、配当を「累進的」と定義したことは、資本市場に対する強力なメッセージとなります。

注目すべきはシンガポールのQXY社買収です。単なる規模拡大ではなく、リニューアル(改修)市場に強みを持つ企業を選んだ点は、国内のインフラ更新需要の高まりとも親和性が高く、技術交流による国内事業へのシナジーも期待できます。

懸念点は建築事業の利益率改善です。資材・労務費の上昇をどの程度受注価格に転嫁できるか、また、AIやICTを用いた施工の自動化がどこまで実質的なコスト削減に寄与するかが、次期の業績予想達成の鍵を握るでしょう。投資家にとっては、成長性と安定した配当利回りの双方が魅力的な銘柄としての地位を固めつつあると言えます。