業界ダイジェスト
住友不動産株式会社 の会社詳細
住友不動産株式会社
住友不動産
2026年3月期 通期

住友不動産・2026年3月期、純利益2,125億円で13期連続の過去最高益——東京のオフィス賃貸が牽引し、営業利益は3,000億円目前

過去最高益
住友不動産
オフィスビル賃貸
13期連続増益
政策保有株式縮減
株式分割
マンション価格上昇
第十次中期経営計画
不動産セクター
ROE向上
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

1.1兆円

+4.3%

通期予想

1.1兆円

進捗率99%

営業利益

2,992億円

+10.2%

通期予想

3,200億円

進捗率93%

純利益

2,125億円

+10.9%

通期予想

2,230億円

進捗率95%

営業利益率

28.3%

住友不動産が13日に発表した2026年3月期の連結決算は、最終的な儲けを示す純利益が前期比 10.9%増212,535百万円 となり、13期連続で過去最高益を更新 した。東京中心部でのオフィスビル需要の回復を背景に、主力の不動産賃貸事業が過去最高の増益幅を記録し、業績全体を力強く押し上げた。売上高、各段階利益のすべてで過去最高を更新しており、「第十次中期経営計画」の初年度として極めて順調な滑り出し を見せている。

業績のポイント

2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比 4.3%増1,057,765百万円、営業利益が 10.2%増299,155百万円 となった。これにより、売上高は2期連続、営業利益は4期連続、経常利益は5期連続での過去最高更新となった。増益の最大の要因は、東京のオフィスビルを中心とする不動産賃貸事業の好調だ。空室率の大幅な改善と既存ビルの賃料値上げが浸透し、部門利益を大きく押し上げた。

また、不動産販売事業においてもマンション価格の上昇を背景に高水準の利益を確保した。一方で、営業外損益では支払利息の増加(前期比67億円悪化)があったものの、政策保有株式の売却益を特別利益に計上したことで相殺し、最終利益の大幅増益につなげた。経営の効率性を示す自己資本当期純利益率(ROE)は 9.2% と高水準を維持している。

項目前期実績 (2025/3)当期実績 (2026/3)前年同期比
売上高1,014,2391,057,765+4.3%
営業利益271,516299,155+10.2%
経常利益268,323289,233+7.8%
親会社株主に帰属する当期純利益191,681212,535+10.9%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力の 不動産賃貸事業 は、売上高 460,637百万円(前期比 +6.2%)、営業利益 210,181百万円(同 +11.4%)と、過去最高の増益額で全社の成長を牽引した。期末の既存ビル空室率は、前期末の5.8%から 4.3% へと大幅に改善。働きやすいオフィス環境を求める企業の需要が旺盛で、既存ビルの賃料改定も着実に進んだ。さらに、高級賃貸マンション「ラ・トゥール」やホテル、イベントホールなどの稼働率向上と単価上昇も寄与している。

不動産販売事業 は、売上高 324,033百万円(前期比 +9.9%)、営業利益 76,223百万円(同 +18.7%)となった。「シティタワー虎ノ門」など都心案件の引き渡しが順調に進み、販売戸数こそ減少したものの、マンション価格の上昇により 利益率は大幅に向上 した。次期以降の計上予定分も着実に契約が進んでおり、収益の柱としての安定感を示している。

一方、注文住宅などを手掛ける ハウジング事業 は苦戦した。売上高は 188,876百万円(前期比 △7.8%)、営業利益は 13,420百万円(同 △37.8%)と大幅な減益となった。建築基準法改正に伴う一時的な受注の落ち込みや、分社化に伴う費用発生が響いた。ただし、足元では環境性能を訴求した高付加価値商品の受注が回復傾向にあり、期末の受注残高はコロナ禍以降で最高水準に達している。

セグメント売上高営業利益利益率
不動産賃貸460,637210,18145.6%
不動産販売324,03376,22323.5%
ハウジング188,87613,4207.1%
ステップ(流通)75,36023,60131.3%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
不動産賃貸4,606億円44%2,102億円45.6%
不動産販売3,240億円31%762億円23.5%
ハウジング1,889億円18%134億円7.1%
ステップ754億円7%236億円31.3%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は前期末比 4,632億円増7兆1,856億円 となった。販売用不動産への投資や、ムンバイ子会社への増資を含む有形固定資産の取得が主な要因だ。負債面では、コマーシャル・ペーパーの発行を増やした一方で、有利子負債の長期比率は 94%、固定金利比率は 81% と高い水準を維持しており、将来的な金利上昇リスクに対しても強固な財務基盤 を構築している。

株主還元については、2026年1月1日付で実施した 1株につき2株の株式分割 を考慮した実質的な増配方針を維持している。また、特筆すべきは 政策保有株式の縮減 だ。当期中に取得価格ベースで 884億円分 を縮減し、対株主資本比率を 7.8% まで低下させた。これにより、当初の縮減目標を 2年前倒しで達成 しており、資本効率の改善に対する経営陣の強い意志が窺える。

通期見通し

2027年3月期の通期連結業績予想は、売上高 1兆700億円、営業利益 3,200億円、純利益 2,230億円 を掲げ、さらなる過去最高益の更新 を目指す。引き続き、東京のオフィスビル市場の需給逼迫を追い風に賃貸事業が業績を牽引する見通しだ。また、ハウジング事業においても豊富な受注残を背景に業績の反転攻勢を見込んでいる。

項目2026/3実績2027/3予想増減
売上高1,057,7651,070,000+1.2%
営業利益299,155320,000+7.0%
経常利益289,233300,000+3.7%
純利益212,535223,000+4.9%

リスクと課題

好調な業績の裏で、会社側は以下の課題を挙げている。第一に、国内の 金利上昇 局面において、オフィス賃料の改定を計画通り進められるかという点だ。第二に、高止まりする 建築費の上昇 や工期の長期化への対応である。これらに対し、同社は高付加価値な商品開発と契約時期の調整などで利益率を確保する方針だ。また、成長の「第四の柱」として期待される インド・ムンバイ事業 の進捗も、中長期的な株主価値向上の鍵となる。

AIアナリストの視点

住友不動産の決算は、まさに「都心オフィス一極集中」戦略の勝利と言えます。特に空室率が4.3%まで低下し、実質的な値上げに成功している点は、リモートワーク普及後のオフィス不要論を跳ね返す強さを示しています。

注目すべきは、単なる利益の積み上げだけでなく、コーポレートガバナンスへの積極的な対応 です。政策保有株式の縮減目標を2年前倒しで達成したことは、海外投資家からの評価を意識した動きでしょう。また、2026年初頭の株式分割により、投資家層の拡大も図っています。

懸念材料としては、ハウジング事業の利益率低下が挙げられますが、全社利益に対するインパクトは賃貸事業の増益分で十分カバーできています。今後は、国内市場の成熟を見据えたインド市場での開発事業が、同社の「新たな成長エンジン」としてどこまで具体化するかが焦点となるでしょう。