SBIホールディングス・2026年3月期Q3、純利益245%増の3,491億円——金融・投資の両輪が牽引、次世代事業も黒字化
売上高
1.5兆円
+47.0%
営業利益
4,333億円
+141.6%
純利益
3,491億円
+245.1%
営業利益率
29.1%
SBIホールディングスが発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結決算は、収益が前年同期比 47.0%増 の 1兆4,896億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同 245.1%増 の 3,491億円 と大幅な増収増益となった。主力の金融サービス事業が堅調に推移したことに加え、PE投資事業における投資有価証券の評価益や売却益が大幅に拡大 したことが利益を押し上げた。また、前年同期に赤字だった次世代事業も黒字に転換するなど、グループ全体の収益力が一段と高まっている。
業績のポイント
当第3四半期の業績は、すべての主要利益項目で前年を大幅に上回る記録的な水準となった。税引前利益は前年同期比 141.6%増 の 433,315百万円 に達し、四半期利益は 164.4%増 の 343,201百万円 を記録した。この急成長の背景には、国内の証券・銀行・保険ビジネスを中核とする「金融サービス事業」の安定した成長と、ベンチャー企業等への投資を行う「PE投資事業」の爆発的な利益貢献がある。
特に、PE投資事業では投資先の公正価値評価が上昇 したことや、戦略的なエグジット(売却)が進んだことで、税引前利益が前年の 17,563百万円 から 95,238百万円 (前年同期比 442.3%増)へと跳ね上がった。また、2025年12月1日付で実施した 1対2の株式分割 を考慮した基本的1株当たり四半期利益は 546.54円 となり、前年同期の 167.33円 から大幅に向上している。これは、同社が推進する「オープンアライアンス」戦略や地方創生への取り組みが、実利を伴う形で結実し始めていることを示唆している。
| 指標 | 前年同期(2025/3 Q3) | 当期(2026/3 Q3) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 収益 | 1,013,394百万円 | 1,489,658百万円 | +47.0% |
| 税引前利益 | 179,378百万円 | 433,315百万円 | +141.6% |
| 親会社株主に帰属する四半期利益 | 101,157百万円 | 349,136百万円 | +245.1% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
各セグメントにおいて、市場環境の追い風を捉えた増益が目立つ。主力の 金融サービス事業 は、収益が前年同期比 40.1%増 の 1,215,236百万円、税引前利益が同 89.3%増 の 321,317百万円 となった。これは国内証券関連事業での取引活発化や、銀行・保険事業における顧客基盤の拡大が寄与している。特に金利環境の変化に伴う利ざやの改善や、デジタル金融サービスの浸透が収益性を底上げした格好だ。
PE投資事業(旧 投資事業)は、今期最も高い成長率を見せた。収益は前年同期比 160.7%増 の 151,763百万円 となり、税引前利益は 442.3%増 の驚異的な伸びを示した。第2四半期より、従来「金融サービス事業」に含まれていた一部の有価証券投資を本セグメントに組み替えた影響もあるが、国内外のITやバイオ関連ベンチャーへの投資が好調に推移していることが主因である。市場のボラティリティを好機に変える投資判断 が奏功している。
暗号資産事業 も堅調で、収益は 14.7%増 の 72,082百万円、税引前利益は 21.8%増 の 22,063百万円 を確保した。ビットコインをはじめとする暗号資産市場の活況を背景に、取引所サービスやカストディ業務が拡大している。また、特筆すべきは 次世代事業 で、前年同期の 10,908百万円の損失 から、今期は 22,365百万円の黒字 へと劇的な転換を遂げた。5-ALA関連の健康食品や医薬品、再生可能エネルギー事業などの先行投資フェーズから収益化フェーズへの移行が鮮明となっている。
| セグメント | 収益(百万円) | 税引前利益(百万円) | 利益前年比 |
|---|---|---|---|
| 金融サービス | 1,215,236 | 321,317 | +89.3% |
| PE投資 | 151,763 | 95,238 | +442.3% |
| 暗号資産 | 72,082 | 22,063 | +21.8% |
| 次世代事業 | 44,710 | 22,365 | 黒字転換 |
| 資産運用 | 29,231 | 5,592 | +28.0% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 金融サービス事業 | 1.2兆円 | 82% | 3,213億円 | 26.4% |
| PE投資事業 | 1,518億円 | 10% | 952億円 | 62.8% |
| 暗号資産事業 | 721億円 | 5% | 221億円 | 30.6% |
| 次世代事業 | 447億円 | 3% | 224億円 | 50.0% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前期末比で 5兆1,262億円 増加し、37兆2,397億円 に達した。銀行業や証券業の拡大に伴い、顧客預金や証券業関連資産が積み上がっている。親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)も 1兆7,359億円 へと増加し、親会社所有者帰属持分比率は前期末の 3.9% から 4.7% へと上昇した。財務基盤の拡充を進めつつ、積極的な事業投資を継続できる体制を維持している。
キャッシュフロー面では、営業活動によるキャッシュフローが 2兆78億円の収入 となり、前年同期の 1兆1,841億円 から大幅に増加した。これは主に顧客預金の増加(2.2兆円増)によるものである。一方、投資活動では投資有価証券の取得に 2.4兆円 を投じるなど、将来の収益源確保に向けた積極姿勢を崩していない。
配当については、2025年12月の株式分割(1:2)後、第2四半期末配当として分割前の基準で 40円 (前年同期は30円)を実施した。期末配当予想については、業績が市場環境に左右されやすい特性 を考慮し、現時点では「未定」としている。しかし、過去最高水準の利益を計上していることから、株主還元への期待は高まっている。2025年3月期実績は分割前換算で年間170円であったが、今期の好業績がどう反映されるかが焦点となる。
リスクと課題
同社は好決算の一方で、以下のリスク要因を注視している。
- 市場変動リスク: 証券・投資事業を主力とするため、国内外の株式市場や暗号資産市場の急落は、手数料収入の減少や投資先評価損に直結する。特に金利動向の変化は銀行事業の利ざやに大きな影響を与える。
- 業績予想の困難性: 市場環境への依存度が高いため、通期の業績予想を公表していない。これは投資家にとって先行き不透明感として意識される可能性がある。
- 次世代事業の継続性: 今期黒字化したバイオやWeb3事業だが、研究開発費や先行投資が先行する分野であり、安定した収益柱として定着するかは依然として不透明な要素が残る。
- 地政学・規制リスク: 海外展開を加速させる中で、各国の金融規制の変化や地政学的リスクが事業継続に影響を及ぼすリスクがある。
今回の決算で最も驚くべきは、単なる「増益」ではなく、利益の「質」が多角化している点です。従来の証券手数料に依存したビジネスモデルから、銀行(住信SBIネット銀行、SBI新生銀行)の連結貢献、そしてPE投資による多額のキャピタルゲインを創出する「投資会社」としての側面が極めて強く出ています。
特に「次世代事業」が黒字化したことは、長年投資家から「利益を圧迫する重荷」と見られていたバイオ事業などが、ようやく収益化フェーズに入ったことを示唆しており、中長期的な評価を変える分岐点になる可能性があります。
一方で、総資産37兆円超に対して自己資本比率が4.7%と、金融グループ特有のレバレッジの高さには留意が必要です。市場の急変時には評価損が急速に膨らむリスクを孕んでおり、北尾会長が進める「オープンアライアンス」の真価は、市場の停滞期にこそ試されるでしょう。就活生にとっては、金融の枠を超えた「総合事業家」としてのSBIの姿が鮮明になった決算と言えます。
