楽天グループ・2025年12月期、売上高2.5兆円で過去最高——モバイル1,000万回線突破、Non-GAAP営業益は15倍に急拡大
売上高
2.5兆円
+9.5%
営業利益
144億円
-72.9%
純利益
-177,886百万円
営業利益率
0.6%
楽天グループが12日に発表した2025年12月期決算は、売上収益が前期比 9.5%増 の 2兆4,965億円 となり過去最高を更新した。主力のフィンテック事業が大幅な増益を牽引したほか、懸案のモバイル事業で全契約数が 1,000万回線 を突破し、EBITDA(償却前営業利益)の通期黒字化 を達成した。純損益は 1,778億円の赤字(前期は1,624億円の赤字)となったものの、一時的費用を除いたNon-GAAP営業利益は前期の約15倍となる 1,062億円 に急改善しており、長年の投資期を経て収益化フェーズへの転換を印象づけた。

業績のポイント
当連結会計年度の売上収益は 2兆4,965億円(前年比 +9.5%)に達し、全セグメントでの増収により過去最高を更新した。経営の実態を示すNon-GAAP営業利益は 1,062億円 と、前期の 70億円 から 1,407.9%増 という驚異的な伸びを記録している。これはフィンテック事業の安定した収益力に加え、モバイル事業におけるコスト削減と契約数増に伴う赤字幅の縮小が寄与した結果である。
一方で、IFRSベースの営業利益は 143億円(前年比 -72.9%)に留まり、親会社の所有者に帰属する当期純利益は 1,778億円の赤字 となった。この主な要因は、倉庫型ネットスーパー事業からの撤退に伴う減損損失 279億円 や、楽天シンフォニー事業における固定資産の減損 204億円 など、将来の成長を見据えた構造改革に伴う 一過性の損失を計上 したことにある。純損失こそ継続しているものの、キャッシュ創出力を示すEBITDAは 4,359億円(前年比 +33.7%)と大きく伸長しており、経営基盤は着実に強化されている。
| 指標 | 2024年12月期(実績) | 2025年12月期(実績) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆2,792億円 | 2兆4,965億円 | +9.5% |
| Non-GAAP営業利益 | 70億円 | 1,062億円 | +1,407.9% |
| IFRS営業利益 | 529億円 | 143億円 | △72.9% |
| 当期純利益(親会社帰属) | △1,624億円 | △1,778億円 | ー |
業績推移(通期)
セグメント別動向
インターネットサービスセグメントは、売上収益 1兆3,696億円(前年比 +6.8%)、セグメント利益 889億円(前年比 +4.5%)と堅調に推移した。国内ECでは「楽天市場」においてAIを活用したユーザー体験の向上に注力し、ロイヤルユーザーの育成とモバイルユーザーとのクロスユースを促進した。また「楽天トラベル」では、インバウンド需要の回復が追い風となり取扱高が拡大、広告事業の成長も利益を押し上げた。
フィンテックセグメントは、売上収益 9,759億円(前年比 +19.0%)、セグメント利益 1,999億円(前年比 +30.3%)と、グループ全体の稼ぎ頭としての地位を揺るぎないものにした。特に銀行サービスでは、日銀の政策金利引き上げに伴う 運用利回りの向上 が収益を大きく押し上げたほか、楽天カードの会員数拡大とショッピング取扱高の伸長が寄与した。証券事業においても、新NISA制度を背景とした顧客基盤の拡大が続き、全主要サービスにおいて増収増益を達成する理想的な展開となった。
モバイルセグメントは、売上収益 4,828億円(前年比 +9.6%)に対し、セグメント損失は 1,618億円(前期は2,089億円の損失)と大幅に改善した。2025年12月には全契約回線数が 1,000万回線 を突破し、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)もデータ利用量の増加に伴い上昇傾向にある。ネットワーク品質の向上による解約率の低下に加え、通期でのEBITDA黒字化 を達成したことは、事業開始以来の大きな転換点といえる。
| セグメント | 売上収益 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| インターネット | 1兆3,696億円 | +6.8% | 889億円 | +4.5% |
| フィンテック | 9,759億円 | +19.0% | 1,999億円 | +30.3% |
| モバイル | 4,828億円 | +9.6% | △1,618億円 | 赤字縮小 |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| インターネットサービス | 1.4兆円 | 55% | 889億円 | 6.5% |
| フィンテック | 9,759億円 | 39% | 1,999億円 | 20.5% |
| モバイル | 4,828億円 | 19% | -161,841百万円 | -33.5% |
財務状況と資本政策
当連結会計年度末の総資産は、証券事業や銀行事業の拡大に伴い、前期末比2.2兆円増の 28兆8,044億円 となった。一方で、継続的なモバイル事業への投資と有利子負債の返済を両立させるため、厳格なキャッシュフロー管理 を継続している。営業活動によるキャッシュフローは 4,240億円の入超 を確保し、投資活動による支出を補っている。
配当については、財務健全性の確保と有利子負債の削減を最優先事項とし、前期に続き 無配(0円) とすることを決定した。有利子負債のみに頼らない資金調達を掲げ、資本性金融商品の発行や資産の効率化を通じて財務基盤の安定化を図っている。今後、連結業績の黒字化と有利子負債の十分な削減が進んだ段階で、適切な復配を目指す方針を維持している。
リスクと課題
経営陣が言及した主なリスクと課題は、モバイル事業の収益化ペースと有利子負債の削減スピードに集約される。特に以下の3点が今後の焦点となる。
- モバイル事業の黒字化完遂: 2025年に達成したEBITDA黒字化を、いかに早期に営業利益ベースでの黒字化に繋げられるかが課題である。
- 金利・為替変動リスク: 日銀の政策金利上昇はフィンテック事業にプラスに働く一方、有利子負債の支払利息増加という側面も持つ。また、外貨建社債の償還における為替変動の影響を注視する必要がある。
- 競争環境の変化: 国内ECにおける物流コストの上昇や、モバイル業界における他キャリアとの競争激化、さらに生成AI領域での技術革新に対する投資負担がリスク要因として挙げられている。
通期見通し
2026年12月期の連結業績予想について、同社は具体的な数値公表を控えたものの、証券サービスを除いた連結売上収益で1桁後半の成長 を目指す方針を示した。利益面においても、Non-GAAPベースおよびIFRSベースの双方でさらなる改善を目指すとしている。特に「AIエンパワーメントカンパニー」として、グループ内でのAI活用による業務効率化とサービス付加価値の向上を加速させることで、マージンの改善を図る戦略だ。
今回の決算は、楽天にとって「最悪期を脱し、反転攻勢の準備が整った」ことを示す象徴的な内容といえます。
- モバイル事業の分岐点: 1,000万回線の突破と通期EBITDA黒字化は、市場の懸念を払拭する強いメッセージとなりました。今後は「契約数を稼ぐ」フェーズから「ARPUを上げて利益を出す」フェーズへの移行がスムーズに進むかが鍵となります。
- フィンテックの爆発力: 銀行・証券・カードの3本柱がすべて二桁成長を遂げ、グループのキャッシュカウとして完全に機能しています。特に金利上昇局面において銀行事業が強力な利益ドライバーとなっている点は、他社にない強みです。
- 戦略的な減損: 1,778億円という巨額の純損失が出ていますが、その内訳は不採算事業(倉庫型スーパー等)の整理やシンフォニー事業の評価見直しといったポジティブな構造改革費用が多く含まれています。Non-GAAP利益の急拡大を見れば、本業の収益性は劇的に改善していると評価できます。
- 今後の焦点: 依然として高い水準にある有利子負債の削減ペースが、投資家の最大の関心事であり続けるでしょう。モバイルの営業黒字化が現実味を帯びてきたことで、市場の視点は「存続リスク」から「再成長の確度」へと移っています。
