カカクコム・2026年3月期、売上高20%増の941億円で過去最高——食べログ好調もHR投資先行で営業益7%減
売上高
941億円
+20.0%
通期予想
1,145億円
営業利益
272億円
-7.0%
通期予想
308億円
純利益
188億円
-6.1%
通期予想
207億円
営業利益率
28.9%
カカクコムが発表した2026年3月期連結決算は、売上収益が前期比20.0%増の94,127百万円と大幅増収を達成し、過去最高を更新しました。主力の「食べログ」がオンライン予約の拡大により利益・売上ともに2割超の成長を見せたほか、成長領域の「求人ボックス」も売上規模を急速に拡大させています。一方で、HR領域への戦略的な先行投資(広告宣伝・営業体制強化)が利益を圧迫し、営業利益は前期比7.0%減の27,243百万円と、将来の成長を見据えた「増収減益」の着地となりました。
カカクコム 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、主力事業の回復と新領域の急成長が鮮明となりました。売上収益は94,127百万円(前年比+20.0%)と、主要な全てのセグメントで増収または堅調な推移を維持しています。特に「食べログ」事業が行動制限のない市場環境下で飲食店予約を伸ばし、全体を牽引しました。
一方で利益面では、営業利益が27,243百万円(前年比7.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は18,803百万円(前年比6.1%減)となりました。この減益は、中期経営計画に基づき「求人ボックス」を中心としたHR領域へのブランド投資や営業人員の拡充を積極的に実施したことによるものです。将来の収益基盤を強固にするための「意図的な減益」という側面が強く、売上成長の勢いは維持されています。
| 項目 | 2025年3月期実績 | 2026年3月期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 78,435百万円 | 94,127百万円 | +20.0% |
| 営業利益 | 29,293百万円 | 27,243百万円 | △7.0% |
| 税引前利益 | 28,715百万円 | 27,347百万円 | △4.8% |
| 当期利益 | 20,032百万円 | 18,803百万円 | △6.1% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別の状況を見ると、収益柱の「食べログ」が過去最高の成長を記録しました。飲食店向けの有料契約店舗数およびオンライン予約人数が継続的に増加し、売上収益は40,239百万円(前年比+20.2%)、セグメント利益は22,196百万円(前年比+22.8%)と、高い収益性を発揮しています。
成長エンジンである「求人ボックス」事業は、売上収益が20,205百万円(前年比+51.2%)と驚異的な伸びを見せました。しかし、ブランド認知向上のための大規模な広告投資と体制強化により、セグメント利益は前期の4,263百万円の黒字から1,486百万円の損失へ転じました。これは市場シェア奪取を優先する経営判断によるものです。
「価格.com」事業は、Windows 10のサポート終了に伴うPC買い替え需要の恩恵を受けた一方、金利上昇の影響で住宅ローン領域が苦戦しました。セグメント全体では売上収益23,611百万円(前年比0.1%減)と横ばいながら、効率的な運営により利益は12,548百万円(前年比+6.9%)を確保しました。
| セグメント名 | 売上収益 | 前年比 | セグメント利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 価格.com | 23,611 | △0.1% | 12,548 | +6.9% |
| 食べログ | 40,239 | +20.2% | 22,196 | +22.8% |
| 求人ボックス | 20,205 | +51.2% | △1,486 | - |
| インキュベーション | 10,071 | +26.6% | 2,740 | +42.3% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 価格.com事業 | 236億円 | 25% | 125億円 | 53.1% |
| 食べログ事業 | 402億円 | 43% | 222億円 | 55.2% |
| 求人ボックス事業 | 202億円 | 22% | -1,486百万円 | — |
| インキュベーション事業 | 101億円 | 11% | 27億円 | 27.2% |
財務状況と資本政策
総資産は、現金及び現金同等物の減少などにより、前期末比1,029百万円減の92,475百万円となりました。一方で、親会社の所有者に帰属する持分は64,988百万円に増加し、自己資本比率は70.3%(前期は66.1%)と、極めて強固な財務基盤を維持しています。
配当については、当期の年間配当を50.00円としました。前期(80.00円)からは減少していますが、これは前期に実施した特別配当(30.00円)がなくなったためで、普通配当ベースでは安定的な還元を継続しています。配当性向は52.6%となっており、成長投資と株主還元のバランスを重視する方針が伺えます。
投資活動においては、2025年4月に株式会社LiPLUSホールディングスを完全子会社化したことに伴い、のれんを3,696百万円計上しました。これは生活領域ジャンルでの新たな収益源確保を目指した戦略的なM&Aです。また、キャッシュフロー面では営業活動により25,354百万円の現金を創出しており、投資余力は十分に維持されています。
戦略トピック:HR事業の再編と大型M&A
カカクコムは2026年4月1日付で、求人ボックス事業の名称を「HR事業」へ変更しました。同時に、エン・ジャパン株式会社から吸収分割により継承した「engage(エンゲージ)」事業を子会社化し、「求人ボックス」と「エンゲージ」の2ブランド体制を確立しました。この再編により、求職者と企業の双方に対する接点を劇的に拡大させる狙いです。
新規子会社化した「株式会社エンゲージ」の取得対価は4,454百万円(現金)であり、600万人超の会員基盤を一気に取り込みました。今後は両サービスのシナジーを活かし、情報充実度の向上や機能改善を加速させることで、HR領域を「価格.com」「食べログ」に続く第3の柱へと成長させる構えです。
通期見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上収益114,500百万円(前期比21.6%増)、営業利益30,800百万円(前期比13.1%増)と、再び増収増益に転じる見込みです。HR事業での先行投資が実り始めるほか、新たに連結加わったエンゲージ事業の収益貢献も期待されます。
また、同社は新たなマネジメント指標として「調整後EBITDA」を導入しました。M&Aに伴うのれんの償却や一過性の要因を排除し、キャッシュ創出能力をより正確に反映する指標として、年間36,000百万円を目標に掲げています。配当も年間54.00円(前期比+4円)への増配を予定しており、成長への自信を覗かせています。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 94,127百万円 | 114,500百万円 | +21.6% |
| 営業利益 | 27,243百万円 | 30,800百万円 | +13.1% |
| 当期利益 | 18,803百万円 | 20,700百万円 | +10.1% |
| 調整後EBITDA | - | 36,000百万円 | - |
リスクと課題
今後の懸念材料としては、以下の要因が挙げられます。
- 外部環境の変化: 「価格.com」の金融領域における金利動向や、Windows買い替え特需の反動減による影響。
- 競争激化: 求人検索エンジン市場における競合他社との広告宣伝費競争の激化。
- M&A後の統合プロセス: 新たに取得した「engage」事業とのシナジー発現速度および、組織統合に伴うコスト管理。
特に、HR領域での先行投資が想定通りに収益化に結びつくかが、中長期的な株価・企業価値評価の焦点となります。
カカクコムの今回の決算は、まさに「脱・比較サイト」を加速させる転換点といえます。従来の「価格.com」依存から脱却し、食べログが稼ぎ出した利益を「求人ボックス」や「LiPLUS」といった新領域に再投資するサイクルが鮮明です。
特に注目すべきは、HR領域での「黒字を削ってでもシェアを取りに行く」という強気の姿勢です。エン・ジャパンから「engage」を買収したことで、自社開発の「求人ボックス」との相乗効果が期待でき、リクルート等の先行他社に対する強力な対抗軸になりつつあります。
投資家や就活生の視点では、単なる「減益」という数字に惑わされず、売上が20%伸びている点と、将来の収益源を確実に積み上げている経営判断を評価すべき決算内容と言えるでしょう。次期の増益予想と増配発表は、その投資が実りつつあることの証左です。
