大林組・2026年3月期Q3、営業利益46%増の1,427億円——採算改善で利益急拡大、通期予想を上方修正し増配へ
売上高
1.8兆円
-3.6%
通期予想
2.6兆円
営業利益
1,427億円
+46.2%
通期予想
1,950億円
純利益
1,318億円
+37.3%
通期予想
1,700億円
営業利益率
7.8%
ゼネコン大手の大林組が9日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)決算は、営業利益が前年同期比 46.2%増 の 1,427億円 と大幅な増益を記録した。国内建築事業における追加工事の獲得や採算性の高い案件の進捗に加え、不動産事業での開発物件売却が利益を押し上げた。これを受け、同社は通期の純利益予想を 1,700億円 へ上方修正し、年間配当も前回予想から6円引き上げ 87円 とすることを発表した。「量から質」への転換が鮮明となっている。

業績のポイント
当第3四半期累計期間の連結業績は、売上高が前年同期比 3.6%減 の 1兆8,324億円 となった一方で、各利益項目は軒並み 35%以上 の大幅な伸びを見せた。売上高の減少は、前年同期にあった国内建築の大型案件進捗の反動や、施工キャパシティを考慮した計画的な受注活動を行ったことが主な要因だ。
損益面では、国内建築事業において利益率の高い案件が順調に推移したほか、資材価格高騰に対する適切な価格転嫁や原価低減努力が実を結び、営業利益は 1,427億円(前年同期は976億円)に急拡大した。営業利益率は前年同期の 5.1% から 7.8% へと 2.7ポイント 大幅に改善しており、建設業界全体の課題である採算性向上において、同社が一歩抜け出した形となっている。
| 指標 | 当期実績(25/4-12) | 前年同期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆8,324億円 | 1兆9,003億円 | △3.6% |
| 営業利益 | 1,427億円 | 976億円 | +46.2% |
| 経常利益 | 1,516億円 | 1,061億円 | +42.8% |
| 四半期純利益 | 1,317億円 | 959億円 | +37.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の国内建築事業は、売上高が 8,470億円(前年同期比16.2%減)と落ち込んだものの、セグメント利益は 760億円(同72.8%増)と驚異的な伸びを示した。大型案件の狭間期にあたるため減収となったが、「選別受注」の徹底により採算の良い案件に注力した結果、利益構造が劇的に改善している。
不動産事業も業績拡大の牽引役となった。売上高は 588億円(前年同期比48.2%増)、セグメント利益は 120億円(同55.9%増)に達した。都心を中心とした開発物件の売却が順調に進んだことが寄与している。また、海外土木事業においても、北米を中心とした手持ち工事の進捗が堅調で、グループ全体の収益基盤を支えている。
| セグメント名 | 売上高 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 国内建築 | 8,470億円 | 760億円 | 9.0% |
| 海外建築 | 3,595億円 | 98億円 | 2.7% |
| 国内土木 | 3,197億円 | 315億円 | 9.9% |
| 海外土木 | 2,323億円 | 108億円 | 4.7% |
| 不動産 | 588億円 | 120億円 | 20.5% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内建築 | 8,471億円 | 46% | 760億円 | 9.0% |
| 海外建築 | 3,595億円 | 20% | 99億円 | 2.7% |
| 国内土木 | 3,198億円 | 17% | 315億円 | 9.9% |
| 海外土木 | 2,323億円 | 13% | 109億円 | 4.7% |
| 不動産 | 589億円 | 3% | 121億円 | 20.5% |
財務状況と資本政策
財務状態については、総資産が前年度末比 1,029億円 増の 3兆1,457億円 となった。工事代金債権や未成工事支出金が増加した一方で、流動性を確保するためコマーシャル・ペーパーを 1,260億円 発行するなど、機動的な資金調達を行っている。自己資本比率は 38.0% と、前年度末の38.1%からほぼ横ばいで推移しており、健全な財務基盤を維持している。
注目すべきは積極的な株主還元策だ。同社は今期、総額 700億円 規模の自己株式取得を段階的に実施している(2月に300億円、8月に400億円を上限として決議)。また、2026年1月30日付で発行済株式総数の 2.1% にあたる 1,513万株 を消却した。これら資本効率の向上と株主還元の強化を並行して進める姿勢は、投資家から高く評価されるポイントといえる。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想について、売上高は据え置いたものの、各利益項目を上方修正した。国内建築事業における原価低減の進展により、完成工事総利益が当初の想定を上回る見込みとなったためだ。修正後の営業利益予想は 1,950億円 と、前回予想から 300億円 上積みされた。
あわせて、配当予想も増額した。期末配当を前回予想の41円から 46円 に引き上げ、年間配当は前期実績(81円)から6円増の 87円 となる見通しだ。業績拡大を背景に、成長投資と還元を両立させる経営方針を堅持している。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,700億円 | 2兆5,700億円 | 2兆5,908億円 |
| 営業利益 | 1,650億円 | 1,950億円 | 1,424億円 |
| 経常利益 | 1,720億円 | 2,050億円 | 1,521億円 |
| 当期純利益 | 1,490億円 | 1,700億円 | 1,452億円 |
リスクと課題
好調な決算の一方で、今後の懸念材料として以下の点が挙げられる。
- 建設資材・労務費の高騰: 足元の採算性は改善しているものの、インフレの継続によるコスト増が将来的な利益を圧迫するリスクがある。
- 施工キャパシティの制約: 2024年問題に伴う労働時間規制の中で、いかに効率的に工事を進めるかが長期的な成長の鍵となる。
- 金利上昇の影響: 支払利息の増加や、不動産開発事業における投資判断への影響を注視する必要がある。
大林組の今回の決算は、これまでの「受注量重視」から「利益率重視」への構造改革が結実した好内容と言えます。特に国内建築セグメントの利益率が前年同期から飛躍的に向上している点は、競合他社と比較しても際立っています。
また、ROE(自己資本利益率)を意識した資本政策も加速しており、大規模な自己株買いと消却、そして増配をセットで打ち出すことで、PBR1倍割れ脱却への強い意志を感じさせます。
就活生にとっては、同社が「ただ建てる」だけでなく、不動産開発や海外展開、さらには資本効率まで意識した多角的な経営を行っている点が、企業研究の重要な視点になるでしょう。今後は、この高い利益水準を来期以降も維持できるか、特に受注残高の採算性が焦点となります。
