マツキヨココカラ・2026年3月期通期、売上高1.1兆円で過去最高——M&A加速と訪日客需要で増収増益、配当も増額
売上高
1.1兆円
+5.3%
通期予想
1.2兆円
営業利益
849億円
+3.5%
通期予想
875億円
純利益
558億円
+2.0%
通期予想
590億円
営業利益率
7.6%
ドラッグストア国内大手のマツキヨココカラ&カンパニーが発表した2026年3月期決算は、連結売上高が前年比 5.3%増 の 1兆1,174億円 となり、過去最高を更新しました。都市部の人流回復やインバウンド需要の強力な取り込みに加え、九州の新生堂薬局を傘下に収めるなど「連合体構想」による規模拡大が寄与しました。利益面でも営業利益が 3.5%増 と増益を確保し、株主還元として前期から 6円増配 の1株当たり 50円 を実施、次期もさらなる増配を計画しています。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、売上高が 1兆1,174億円(前年比 +5.3%)、営業利益が 849億円(同 +3.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は 557億円(同 +2.0%)と、堅調な増収増益を達成しました。この背景には、雇用・所得環境の改善に伴う緩やかな景気回復がありますが、特に同社の強みである「都市型店舗」の立地優位性が光りました。訪日外国人観光客によるインバウンド需要が、免税売上の高い化粧品や医薬品を中心に大きく伸び、利益率の向上に大きく貢献しました。
また、独自のマーケティング戦略も奏功しています。1億6,955万におよぶ膨大な顧客接点データを活用したデジタル販促や、プライベートブランド(PB)「matsukiyo」の誕生10周年施策がブランド価値を高めました。特に高品質な新スキンケアブランド「MQURE derma」などの高付加価値商品が、価格競争に陥りやすい業界環境下で収益性の下支えとなりました。人件費や光熱費などのコスト上昇圧力はありましたが、売上規模の拡大と運営効率化によってこれらを吸収し、持続的な成長力を示しています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力事業である「マツモトキヨシグループ事業」は、売上高 7,114億円(前年比 +6.6%)、セグメント利益 608億円(同 +4.9%)と、グループ全体の成長を力強く牽引しました。都市部や繁華街の店舗での客数増加に加え、マレーシアなどASEAN地域での海外店舗数も合計 100店舗 に達するなど、国内外で事業領域を拡大しています。調剤併設化の推進により、専門性の高いドラッグストアとしての差別化も進んでいます。
一方、「ココカラファイングループ事業」は売上高 3,899億円(前年比 ▲0.3%)、セグメント利益 234億円(同 ▲1.5%)と微減となりました。これは、不採算店舗のスクラップ&ビルドを戦略的に進めた結果であり、ロイヤルカスタマーの醸成や経営資源の最適化を図る構造改革の途上にあると言えます。また、2025年10月に新生堂薬局を子会社化した「アンドカンパニー事業」が新たに加わり、九州北部エリアでのドミナント戦略が強化されました。
| セグメント名 | 売上高 (百万円) | 前年同期比 | セグメント利益 (百万円) | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| マツモトキヨシG | 711,413 | +6.6% | 60,818 | +4.9% |
| ココカラファインG | 389,977 | ▲0.3% | 23,456 | ▲1.5% |
| アンドカンパニー | 12,948 | — | 200 | — |
| 管理サポート | 683,585 | +4.3% | 17,137 | ▲15.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| マツモトキヨシグループ事業 | 7,114億円 | 64% | 608億円 | 8.5% |
| ココカラファイングループ事業 | 3,900億円 | 35% | 235億円 | 6.0% |
| アンドカンパニー事業 | 129億円 | 1% | 2億円 | 1.5% |
戦略トピック:M&Aによる「連合体構想」の加速
同社は2031年3月期のグループ目標売上高1.5兆円(オーガニック1.3兆円+M&A等)の達成に向け、「連合体構想」を加速させています。当期中に九州北部で119店舗を展開する新生堂薬局を子会社化したことに続き、2026年4月には東京都と埼玉県に強みを持つユニバーサルドラッグの全株式を取得しました。これにより、大都市圏のシェア拡大と、調剤薬局網の拡充を同時に進める体制を整えています。
さらに、デジタル技術への投資も重点的に行われています。店舗とアプリ、オンラインストアを融合させたプラットフォームを強化し、顧客のLTV(生涯価値)最大化を図っています。調剤サポートプログラムの加盟店数も 313店舗 まで拡大しており、自社店舗だけでなく外部薬局への経営支援を通じて、地域医療インフラとしての存在感を高めています。こうした非連続な成長戦略と、既存事業の質的向上の両輪で、アジアNo.1のドラッグストアの地位を確固たるものにする狙いです。
財務状況と資本政策
財政状態は、総資産が前期末比 430億円増 の 7,558億円、純資産は 544億円 となり、自己資本比率は 71.9% と極めて強固な財務基盤を維持しています。商品在庫の増加や売掛金の増加など営業活動に伴う資産増はありますが、利益剰余金が 355億円積み上がった ことで、健全性は高い水準にあります。手元資金も 1,196億円 を確保しており、機動的なM&Aや設備投資への余力は十分です。
資本政策においては、株主還元を経営の最重要項目と位置づけています。2026年3月期の年間配当は前期から 6円増配 の 50円(配当性向 35.7%)を実施しました。さらに、2027年3月期には年間 56円 への連続増配を見込んでおり、中期経営計画で掲げた「配当性向50%」の目標に向けて、累進的な還元姿勢を明確にしています。DOE(純資産配当率)についても 3.6% と、資本効率を意識した還元を継続しています。
通期見通し
2027年3月期の業績予想については、売上高 1兆1,550億円(前期比 +3.4%)、営業利益 875億円(同 +3.0%)、当期純利益 590億円(同 +5.8%)の増収増益を見込んでいます。物価上昇による消費減速懸念や地政学リスクなど不透明な外部環境は続きますが、新たに連結されるユニバーサルドラッグの寄与や、引き続き堅調なインバウンド需要が業績を押し上げる見通しです。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆1,174億円 | 1兆1,550億円 | +3.4% |
| 営業利益 | 849億円 | 875億円 | +3.0% |
| 親会社株主純利益 | 557億円 | 590億円 | +5.8% |
| 1株当たり利益 | 139.94円 | 148.02円 | +5.8% |
リスクと課題
今後の懸念材料として、会社側は以下のリスクを挙げています。
- 競争環境の激化: 異業種からの参入やM&Aによる同業他社の規模拡大に伴う、狭小商圏内での過酷なシェア争い。
- コスト上昇の継続: 原材料価格の高騰に伴う商品仕入価格の上昇や、深刻な人手不足による人件費の負担増。
- 消費動向の変化: 物価上昇に伴う消費者の節約志向の強まりや、購買行動の多様化。
- 地政学リスク: 海外事業を展開するASEAN地域やサプライチェーンへの外部環境の変化による影響。
これらのリスクに対し、同社は高付加価値なPB開発やDXによる運営効率化、そして規模のメリットを活かした調達力の強化で対抗する方針です。
マツキヨココカラの強さは、単なる規模の拡大だけでなく、「マツモトキヨシ」のブランド力と収益性の高さに集約されています。マツキヨセグメントの利益率は8.5%と、ココカラの6.0%を大きく上回っており、このノウハウをココカラや新しく買収した「アンドカンパニー(新生堂薬局など)」にどこまで浸透させられるかが今後の焦点です。
特筆すべきは、免税売上に依存しすぎないPB戦略です。「Best Japan Brands 2026」でドラッグストア唯一のランクインを果たした通り、PBを単なる安価な代替品ではなく、ブランド価値を持つ商品へと昇華させている点は他社との差別化要因として高く評価できます。
懸念点は、M&Aによる「連合体構想」が加速する中で、買収先ののれん償却費(当期は約67億円)が重荷になるリスクですが、現在のキャッシュフローと自己資本比率の高さからすれば、健全な範囲内と言えます。配当性向50%という高い目標を掲げたことは、投資家にとって非常に魅力的なメッセージであり、成長投資と株主還元のバランスを高度に維持している優良決算だと捉えられます。
