出光興産・2026年3月期Q3、純利益58.7%減の525億円——原油・石炭の下落が直撃、富士石油を連結子会社化
売上高
5.9兆円
-13.6%
通期予想
8.0兆円
営業利益
367億円
-70.2%
通期予想
680億円
純利益
526億円
-58.7%
通期予想
750億円
営業利益率
0.6%
出光興産が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上高が前年同期比 13.6%減 の 5兆9,445億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同 58.7%減 の 525億円 と大幅な減益となりました。世界的な資源価格の下落に伴う在庫評価損や、石炭市況の軟化が利益を押し下げた形です。一方で、国内需要の減少を見据えた経営基盤強化のため、富士石油を連結子会社化 するなど、石油事業の再編とシナジー創出を加速させています。

業績のポイント
当第3四半期の連結累計期間は、主力事業を取り巻く外部環境の悪化が業績に色濃く反映されました。営業利益は前年同期比 70.2%減 の 366億円 と急減し、前年に好調だった石炭や石油製品の利益水準から大きく後退しています。
減益の主因は、原油価格の下落に伴う在庫評価影響 です。前期は価格上昇局面でプラスの利益寄与がありましたが、今期は逆にコスト増として作用しました。また、石炭市況の下落も資源セグメントの収益を圧迫しています。さらに、国内の製油所における大規模な定期修繕費用の増加も利益を押し下げる要因となりました。一方で、税引前利益段階では、豪州ボガブライ石炭鉱山の権益追加取得に伴う 負ののれん発生益(78億円) を計上したことが、純利益の底上げに寄与しています。
| 指標 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 6兆8,764億円 | 5兆9,445億円 | △13.6% |
| 営業利益 | 1,232億円 | 366億円 | △70.2% |
| 経常利益 | 1,658億円 | 549億円 | △66.8% |
| 四半期純利益 | 1,274億円 | 525億円 | △58.7% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、主力事業が環境変化に晒される中で、高機能材などの成長領域が下支えする構図となりました。
燃料油セグメントは、売上高 4兆9,920億円(前年同期比 13.5%減)、セグメント利益 134億円(同 84.5%減)となりました。国内外で販売マージン自体は改善傾向にありましたが、前述の在庫評価損や大規模定期修繕費の計上が響き、利益は大幅に圧縮されました。
資源セグメントは、石炭市況の下落と生産数量の減少が重なり、売上高 1,500億円(同 25.1%減)、セグメント利益 262億円(同 56.1%減)と苦戦しました。ただし、豪州石炭鉱山の権益拡大といった将来に向けた布石も打っています。
一方で高機能材セグメントは、海外での潤滑油販売が堅調に推移したほか、アグリライフ事業の新規連結効果もあり、セグメント利益は 290億円(同 27.7%増)と伸長しました。非化石燃料領域へのシフトが着実に進んでいることを示唆しています。
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 前年同期比(利益) |
|---|---|---|---|
| 燃料油 | 4兆9,920億円 | 134億円 | △84.5% |
| 基礎化学品 | 3,622億円 | △105億円 | 赤字転落 |
| 高機能材 | 3,906億円 | 290億円 | +27.7% |
| 電力・再エネ | 744億円 | △3億円 | 赤字幅縮小 |
| 資源 | 1,499億円 | 262億円 | △56.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 燃料油 | 5.0兆円 | 83% | 134億円 | 0.3% |
| 基礎化学品 | 3,622億円 | 6% | -10,574百万円 | -2.9% |
| 高機能材 | 3,906億円 | 7% | 290億円 | 7.4% |
| 電力・再生可能エネルギー | 745億円 | 1% | -369百万円 | -0.5% |
| 資源 | 1,500億円 | 3% | 262億円 | 17.4% |
財務状況と資本政策
財務面では、2025年11月に実施した 富士石油の連結子会社化 が大きな変化をもたらしました。総資産は前年度末から 4,824億円増加 し、5兆2,579億円 となっています。これは富士石油の保有する有形固定資産の取り込みや、売掛債権の増加によるものです。
一方で、子会社化に伴う借入金の増加もあり、自己資本比率は前期末の 36.0% から 33.5% へと低下しました。ネットD/Eレシオも 0.8(前期末 0.6)へと上昇しており、投資拡大に伴い財務のレバレッジが高まっています。配当については、中間・期末ともに 18円(年間 36円)とする従来予想を据え置いており、安定的な株主還元を維持する姿勢を強調しています。また、期中に 6,933万株 の自己株式消却を実施し、1株当たりの価値向上にも取り組んでいます。
戦略トピック:富士石油の連結子会社化
今決算の最大の戦略的トピックは、富士石油の非公開化と連結子会社化 です。国内の石油需要が中長期的に減少する中、製油所の生産体制を最適化し、コスト競争力を引き上げることが狙いです。両社のインフラを一元化することで、物流の効率化や低炭素エネルギー供給体制の構築を加速させます。
富士石油は持分法適用関連会社から連結子会社へ移行したため、段階取得に係る差益 11億円 を特別利益に計上しました。今後は両社のシナジーを早期に具現化できるかが、燃料油セグメントの収益性回復の鍵を握ります。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月公表の数値を据え置いています。原油価格や為替相場の不透明感は依然として高いものの、高機能材の堅調さや富士石油の連結寄与を見込んでいます。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7兆9,500億円 | 7兆9,500億円 | 9兆1,878億円 | △13.5% |
| 営業利益 | 680億円 | 680億円 | 1,621億円 | △58.1% |
| 純利益 | 750億円 | 750億円 | 1,040億円 | △27.9% |
リスクと課題
同社が直面している主なリスクは以下の通りです。
- 資源市況の変動: 原油価格や石炭価格の急落は、棚卸資産の評価損や資源開発事業の採算悪化に直結します。
- 脱炭素への移行: 化石燃料への依存度が高いビジネスモデルから、低炭素エネルギー(アンモニア、SAF等)への事業転換には多額の投資が必要であり、移行期の収益維持が課題です。
- 為替変動: 原油調達価格や海外利益の換算に影響を及ぼします。
今回の決算は、資源価格の下落という「マクロ環境の向かい風」を真っ向から受けた内容となりました。特に営業利益が7割減という数字はインパクトがありますが、中身を紐解くと在庫評価という会計上の要因が大きく、実力値としての販売マージンは維持されています。
注目すべきは、富士石油の連結子会社化に象徴される「国内石油事業の撤退戦・合理化」と、高機能材セグメントの増益に象徴される「成長事業へのシフト」が同時進行している点です。
- 強み: 高機能材(潤滑油等)の海外展開が利益の下支えとして機能し始めていること。
- 懸念点: 国内需要が減る中で、富士石油を取り込んだ後のシナジー(コスト削減)が期待通りのスピードで発現するか。
- 投資家視点: PBR1倍割れが続く中、自己株式消却などの資本効率改善策を継続しており、厳しい事業環境下でも株主還元姿勢を崩していない点は評価されます。今後の焦点は、非石油事業への投資がいつ利益の柱に育つか、その「時間軸」にあります。
