ガンホー・2025年12月期通期、営業利益71%減の50億円——開発コスト増が響くも配当方針変更で大幅増配
売上高
932億円
-10.0%
営業利益
51億円
-71.1%
純利益
14億円
-87.4%
営業利益率
5.4%
ガンホー・オンライン・エンターテイメントが13日に発表した2025年12月期通期決算は、本業の儲けを示す営業利益が前年比71.1%減の50億5,600万円と大幅な減益となった。既存タイトルの勢い低下に加え、グローバル展開を見据えた新規開発コストの増加が利益を圧迫した。一方で、同社は株主還元方針の抜本的な変更を表明。連結配当性向を50%以上に引き上げ、年間配当を前期から30円増の90円とするなど、成長投資と株主還元の両立を急ぐ姿勢を鮮明にしている。
業績のポイント:開発費増と既存作の苦戦で大幅減益
2025年12月期の連結業績は、売上高が前年比10.0%減の932億4,200万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同87.4%減の14億700万円となった。主力タイトル「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」がサービス開始から長期経過する中、ユーザーの余暇の使い方が動画視聴などへ多様化したことで、国内モバイルゲーム市場の競争が一段と激化したことが背景にある。
利益面では、グローバル配信を視野に入れた新規タイトルの開発体制強化に伴い、業務委託費を中心とした開発コストが大きく膨らんだ。また、既存タイトルのMAU(月間アクティブユーザー)維持のためのプロモーション費用やイベント運営費も継続的に発生し、売上高営業利益率は前年同期の16.9%から5.4%へと大きく低下している。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,036億円 | 932億円 | △10.0% |
| 営業利益 | 174億円 | 50億円 | △71.1% |
| 経常利益 | 200億円 | 67億円 | △66.1% |
| 当期純利益 | 111億円 | 14億円 | △87.4% |
セグメント別動向:地域別では北米・インドネシアが伸長
同社は単一セグメントだが、地域別の売上動向では明暗が分かれた。国内売上高は前年の453億円から318億円(前年比29.9%減)と大きく落ち込んだ。これは「パズドラ」をはじめとする国内主力作の課金収入が、市場環境の変化やコンテンツの成熟化により減少したためである。
一方で、海外展開は一定の成果を見せている。特にインドネシア市場は前年の35億円から89億円(同150.1%増)へと急成長を遂げた。子会社のGravity社が運営する「Ragnarok(ラグナロク)」関連タイトルが東南アジアで堅調に推移しており、2025年10月に配信を開始した「Ragnarok: Twilight」も収益に貢献し始めている。また、北米地域も前年比61.0%増の90億円と伸長した。
| 地域別売上高 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 453億円 | 318億円 | △29.9% |
| アジア(日本以外) | 474億円 | 464億円 | △2.1% |
| 北米 | 55億円 | 90億円 | +61.0% |
| 中南米 | 37億円 | 28億円 | △24.0% |
| その他 | 14億円 | 30億円 | +105.3% |
財務状況と資本政策:新還元方針でDOE4%を導入
財務基盤については、自己資本比率が71.9%と引き続き高い水準を維持している。しかし、業績の低迷を受けて資本効率の改善が喫緊の課題となっており、同社は今決算に合わせて株主還元方針の大幅な変更を発表した。新たな方針では、従来の「連結配当性向30%以上」から「50%以上」へと引き上げるとともに、新たに株主資本配当率(DOE)4%を指標として導入した。
この方針変更に伴い、2025年12月期の期末配当は1株当たり90円(前期比30円増)とする方針だ。さらに、発行済株式総数の約3.04%にあたる210万株(取得総額50億円)を上限とする自社株買いの実施と、保有する自己株式1,600万株の消却も決定した。これらは、株価の意識と資本収益性の向上を強く意図した経営判断といえる。
リスクと課題:ユーザーリテインと開発パイプラインの成否
今後の経営課題として、同社はモバイルゲーム市場における「ユーザーの可処分時間の奪い合い」を挙げている。動画プラットフォームやSNSとの競争が激化する中、既存タイトルの長期運営によるユーザーリテイン(維持)の難易度は上がっている。また、2025年12月にリリースした「LET IT DIE: INFERNO」など、グローバル向け新作が早期に収益の柱へと成長できるかが焦点となる。
外部環境のリスクとしては、物価上昇に伴う開発人件費やサーバー費用の高騰、為替相場の不安定化による海外収益への影響が挙げられる。同社は2026年12月期の連結業績予想について、事業環境の変化が激しいことを理由に「算出が困難」として非開示としているが、四半期ごとの適時開示を通じて透明性を確保するとしている。
今回の決算は、業績数値だけを見れば「厳しい」の一言に尽きますが、投資家向けには「株主還元の強化」という強力なメッセージを打ち出しています。
- 特筆すべきはDOE(株主資本配当率)4%の導入です。利益水準が大きく低下しても、潤沢な自己資本をベースに安定的な高配当を維持する覚悟を示しました。これは、成長株から「バリュー株(配当利回り重視)」への評価の転換点になる可能性があります。
- 一方で、本業の営業利益率が5.4%まで低下した点は懸念材料です。かつて「パズドラ」1本で驚異的な利益を叩き出した時期とは市場環境が様変わりしており、Gravity社を通じた「ラグナロク」IPの海外展開がどこまで利益を下支えできるかが今後の焦点となります。
- 自社株消却による1株当たり価値の向上など、資本効率を意識した経営へ舵を切ったことは、就活生にとっても「守りの経営」から「効率重視の経営」への変化として注目すべきポイントです。
