東宝株式会社 の会社詳細
東宝株式会社
東宝
2026年2月期 第3四半期

東宝・2026年2月期Q3、純利益36%増の465億円——『鬼滅』『コナン』特大ヒットで過去最高水準、1対5の株式分割も発表

東宝
増収増益
鬼滅の刃
名探偵コナン
株式分割
配当増額
アニメ事業
TOHOアニメーション
エンタメ業界
株主還元
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

2,814億円

+20.2%

通期予想

3,600億円

進捗率78%

営業利益

601億円

+13.8%

通期予想

650億円

進捗率92%

純利益

466億円

+36.5%

通期予想

475億円

進捗率98%

営業利益率

21.4%

東宝が14日に発表した2026年2月期第3四半期(2025年3月〜11月)の連結決算は、営業収入が前年同期比 20.2%増2,813億6,600万円 、純利益が同 36.5%増465億8,700万円 と大幅な増収増益となった。劇場版『鬼滅の刃』や『名探偵コナン』といった主力IPの記録的なヒットに加え、アニメの海外配信や商品化権の収入が大きく貢献した。好調な業績を背景に、同社は 1対5の株式分割期末配当の増額修正 を同時に発表し、積極的な株主還元姿勢を鮮明にしている。

業績のポイント

当第3四半期の業績は、主力の映画事業が牽引する形で極めて力強い推移を見せた。営業利益は前年同期比 13.8%増600億9,200万円 となり、経常利益も 18.1%増608億8,000万円 に達した。特に純利益の伸び率が 36.5% と高いのは、投資有価証券売却益などの特別利益が寄与したためである。

背景には、コンテンツの爆発的なヒットがある。共同製作・配給作品では『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』がメガヒットを記録したほか、22年ぶりに邦画実写の記録を塗り替えた『国宝』など、話題作が相次いで興行収入を押し上げた。これにより、映画館への国内配給収入は前年同期から 80.6%増 と驚異的な伸びを見せている。

項目2025年2月期 Q32026年2月期 Q3前年同期比
営業収入2,341億円2,813億円+20.2%
営業利益528億円600億円+13.8%
経常利益515億円608億円+18.1%
四半期純利益341億円465億円+36.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

映画事業は、営業収入 1,485億6,600万円 (前年同期比 39.4%増 )、営業利益 338億円 (同 47.0%増 )と、グループ全体の成長を力強く牽引した。自社配給作品の好調に加え、TOHOシネマズ等の興行部門も夏休み興行が歴代最高を記録するなど、入場者数が前年同期比 36.1%増 と大幅に回復したことが利益を押し上げた。

IP・アニメ事業は、今期より独立した報告セグメントとして新設された注力領域である。営業収入は 557億9,200万円 (前年同期比 8.0%増 )となったが、営業利益は 151億8,900万円 (同 17.6%減 )と減益となった。これは、世界市場を見据えた積極的な海外展開や人員体制の拡充といった成長投資が先行しているためであり、経営判断としては 「中期経営計画2028」に基づく先行投資ステージ と位置づけられる。

演劇事業は、上海での『舞台「千と千尋の神隠し」』公演や国内での『レ・ミゼラブル』ワールドツアーなどが寄与し、営業利益は 25億7,300万円 (同 1.6%増 )と堅調に推移した。不動産事業も、全国で保有する物件が安定稼働しており、空室率は 0.1% という極めて低い水準を維持。営業利益は 147億3,000万円 (同 10.9%増 )と、グループの収益基盤として厚い信頼性を示している。

セグメント営業収入 (前年比)営業利益 (前年比)営業利益率
映画事業1,485億円 (+39.4%)338億円 (+47.0%)22.8%
IP・アニメ事業557億円 (+8.0%)151億円 (△17.6%)27.2%
演劇事業173億円 (+6.8%)25億円 (+1.6%)14.8%
不動産事業586億円 (+0.0%)147億円 (+10.9%)25.1%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
映画事業1,486億円53%338億円22.8%
IP・アニメ事業558億円20%152億円27.2%
演劇事業174億円6%26億円14.8%
不動産事業587億円21%147億円25.1%

財務状況と資本政策

総資産は前連結会計年度末比で 526億2,000万円 増加し、 7056億8,900万円 となった。自己資本比率は 73.7% と極めて高い水準を維持しており、盤石な財務基盤を背景に機動的な資本政策を打ち出している。

特筆すべきは、投資家への還元強化と流動性の向上を目的とした施策である。同社は2026年3月1日を効力発生日として、普通株式1株につき 5株の割合で株式分割 を実施することを決定した。これにより投資単位当たりの金額を引き下げ、より幅広い投資家層の拡大を狙う。また、自己株買いについても 149億円(170万株) の取得を完了し、すでに消却も進めている。

配当についても増額を発表した。2026年2月期の期末配当予想を従来の50円から 62.50円 に引き上げ、年間配当は前期の85円から20円増配となる 105円 となる見込みだ。これは好調なキャッシュ・フローを背景に、利益成長を株主へ還元する姿勢を明確にしたものである。

通期見通し

2026年2月期の通期連結業績予想については、前回公表(2025年10月)の数値を据え置いた。営業収入は前期比 15.0%増3,600億円 、純利益は同 9.6%増475億円 を見込む。第3四半期時点での純利益進捗率はすでに 98% に達しており、通期目標の超過達成が期待される状況にある。

項目前回予想今回予想 (修正なし)前期実績 (2025/2)
営業収入3,600億円3,600億円3,130億円
営業利益650億円650億円646億円
純利益475億円475億円433億円

予想を据え置いた背景には、第4四半期におけるコンテンツ制作への追加投資や、不透明な国内外の経済情勢を考慮した慎重な見通しがあると考えられる。しかし、12月以降の興行成績やIP関連のライセンス収入次第では、さらなる上振れの可能性も残されている。

リスクと課題

経営環境における主な懸念材料として、会社側は以下の項目を挙げている。まず、マクロ環境では 米国の通商政策による景気下振れリスク や、継続的な物価上昇が個人消費の購買意欲を減退させる可能性に言及している。映画や演劇といった娯楽消費は景気動向に左右されやすいため、注視が必要な状況だ。

事業面では、建設業界を中心とした 慢性的な技能者不足と資機材価格の上昇 が挙げられている。これは連結子会社のスバル興業が手掛ける道路事業に直接的な影響を及ぼしており、受注競争の激化や利益率の圧迫要因となっている。また、子会社における独占禁止法関連の立ち入り検査に伴う特別損失(約10億円)の計上など、コンプライアンス体制の再強化も課題となっている。

AIアナリストの視点

今回の決算は、東宝が単なる「映画館の会社」から、自社でIPを保有・展開する「グローバルなコンテンツプロバイダー」へと完全に脱皮したことを象徴する内容です。

特筆すべきは「IP・アニメ事業」の独立セグメント化です。利益こそ投資先行で減益ですが、営業利益率は 27.2% と全セグメントで最高水準を誇ります。これはディズニーのような「コンテンツを核とした多角的収益モデル」への移行を意味しており、海外配信や商品化権といった高利益率の収入源が育っている証左です。

また、非常に保守的な通期予想を維持しつつも、株式分割と増配をセットで打ち出した点は、マーケットとの対話を重視する現在の経営陣の自信を感じさせます。純利益の進捗率が98%を超えているため、期末にかけての上方修正はほぼ確実視されるでしょう。就活生にとっても、日本のアニメ・映画が世界で「稼げる文化」になったことを実感できる、非常にポジティブなレポートと言えます。