富士通・2026年3月期通期、営業利益31%増の3,483億円——サービス事業が牽引、1,500億円の自社株買いも発表
売上高
3.5兆円
-1.3%
通期予想
3.5兆円
営業利益
3,483億円
+31.4%
通期予想
4,150億円
純利益
4,494億円
+104.5%
通期予想
3,100億円
営業利益率
9.9%
富士通が28日に発表した2026年3月期の連結決算(IFRS)は、営業利益が前年比 31.4%増 の 3,483億円 と大幅な増益を記録しました。主力である サービスソリューション事業 がDX需要を捉えて好調に推移したほか、デバイス事業の非継続事業分類に伴う構造改革が進展しました。また、株主還元策として最大 1,500億円 の 自社株買い を発表し、資本効率の向上を加速させる姿勢を鮮明にしています。
富士通 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の連結売上収益は、前年比 1.3%減 の 3,502,971百万円 となりました。売上高の微減は、デバイスソリューション事業を非継続事業に分類したことや、ハードウェアソリューションの縮小が影響しています。一方で、本業の収益力を示す調整後営業利益は、前年比 27.1%増 の 390,589百万円 となり、利益率は 11.2% へと向上しました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年比 104.5%増 の 449,408百万円 と倍増しました。これは事業再編に伴う一時的な利益計上や、構造改革の効果が発現したことによるものです。デジタル変革(DX)やサステナビリティ変革(SX)を支援する「Fujitsu Uvance」が成長を牽引し、収益構造の転換が着実に進んでいます。
| 指標 | 2025年3月期(実績) | 2026年3月期(実績) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,550,116百万円 | 3,502,971百万円 | △1.3% |
| 営業利益 | 265,089百万円 | 348,329百万円 | +31.4% |
| 調整後営業利益 | 307,265百万円 | 390,589百万円 | +27.1% |
| 当期利益 | 219,807百万円 | 449,408百万円 | +104.5% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力であるサービスソリューションセグメントは、売上収益が前年比 4.5%増(外部収益ベース)の 2,346,932百万円 と増収を確保しました。モダナイゼーション(システムの最新化)需要が旺盛な日本市場を中心に、コンサルティングから実装までを一貫して提供する体制が奏功しています。調整後営業利益も 361,464百万円 と高い水準を維持しており、グループ全体の稼ぎ頭としての地位を固めています。
ハードウェアソリューションセグメントは、売上収益が前年比 9.8%減 の 1,009,857百万円 と苦戦しました。サーバーやストレージなどのICT基盤において、市場環境の変化や一部プロジェクトの端境期が重なったことが要因です。しかし、不採算案件の抑制やコスト削減の徹底により、調整後営業利益は 67,012百万円 を確保し、利益体質の維持に努めています。
ユビキタスソリューションセグメント(パソコン事業等)は、売上収益が 229,805百万円 と前年比で減少しましたが、調整後営業利益は 38,825百万円 を計上しました。部材価格の変動リスクを管理しつつ、高付加価値モデルへのシフトを進めたことで、厳しい市場環境下でも黒字を維持しています。
| セグメント名 | 売上収益(外部) | 調整後営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 2,314,793百万円 | 361,464百万円 | 15.6% |
| ハードウェアソリューション | 933,329百万円 | 67,012百万円 | 7.2% |
| ユビキタスソリューション | 229,533百万円 | 38,825百万円 | 16.9% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 2.3兆円 | 67% | 3,615億円 | 15.4% |
| ハードウェアソリューション | 1.0兆円 | 29% | 670億円 | 6.6% |
| ユビキタスソリューション | 2,298億円 | 7% | 388億円 | 16.9% |
財務状況と資本政策
期末の総資産は、前年度末比で約980億円減少の 3,399,745百万円 となりました。これはデバイス事業の切り離し等による資産圧縮が進んだためです。一方で、親会社所有者帰属持分(自己資本)は、利益の積み上がりにより 2,024,915百万円 へと増加し、自己資本比率は前年末の49.8%から 59.6% へと大幅に改善しました。
積極的な株主還元策も打ち出しています。年間配当は前期から22円増配となる 1株当たり50円(中間15円、期末35円)を実施しました。さらに、2026年5月から1年間で最大 1,500億円(上限1億株、発行済株式の5.76%)の 自社株買い を行うことを決定しました。これは事業再編で得た資金や拡大したキャッシュフローを、機動的に株主へ報いる経営判断によるものです。
通期見通し
2027年3月期の通期連結業績は、増収増益を見込んでいます。売上収益は前年比 0.2%増 の 3兆5,100億円、調整後営業利益は 8.8%増 の 4,250億円 を計画しています。引き続き「Fujitsu Uvance」の拡大により、サービス事業の利益率をさらに引き上げる方針です。
一方で、当期利益については前年比 31.0%減 の 3,100億円 となる見込みです。これは前期に計上された事業再編に伴う一過性の利益がなくなることによる反動であり、本業の収益性は引き続き向上するシナリオを描いています。年間配当はさらに5円増配の 55円 を予定しており、累進的な配当政策を継続する構えです。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(予想) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3,502,971百万円 | 3,510,000百万円 | +0.2% |
| 調整後営業利益 | 390,589百万円 | 425,000百万円 | +8.8% |
| 当期利益 | 449,408百万円 | 310,000百万円 | △31.0% |
リスクと課題
富士通は、今後の事業展開における主なリスクとして以下の点を挙げています。第一に、主要市場である日本、欧州、北米等における景気後退や 為替動向 の影響です。第二に、技術開発競争の激化による市場ポジションの変化や、不採算プロジェクトの発生リスクです。
特に、サービス事業へのシフトを急ぐ中で、高度IT人材の確保と育成が喫緊の課題となっています。また、地政学リスクに伴うサプライチェーンの混乱や、サイバーセキュリティ対策の強化など、外部環境の変化に柔軟に対応できる経営体制の構築が求められています。
富士通の今回の決算は、長年進めてきた「ハードからサービスへ」の構造改革が結実しつつあることを示す内容です。特にデバイス事業(新光電気工業等)の切り離しを具体化し、バランスシートをスリム化させながら、自己資本比率を6割近くまで高めた財務基盤の強化は特筆に値します。
注目すべきは、純利益が倍増した一方で、来期予想を減益(一過性利益の剥落)としながらも配当を増額し、巨額の自社株買いをセットで発表した点です。これは、本業のキャッシュ創出力に対する経営陣の強い自信の表れと言えます。
投資家にとっては、利益率の高い「Fujitsu Uvance」の成長速度が今後も維持できるか、また、ハードウェア事業の縮小をサービス事業の成長でいかに補い、トップライン(売上)の再成長軌道を描けるかが焦点となるでしょう。就活生にとっては、同社が単なる「ITベンダー」から、高度なコンサルティングとテクノロジーを融合させた「DXパートナー」へと完全に脱皮した姿が、この数値からも読み取れるはずです。
