富士通・2026年3月期Q3、営業利益99.4%増の2,110億円——サービス事業が牽引、通期純利益予想を上方修正
売上高
2.5兆円
+1.8%
通期予想
3.5兆円
営業利益
2,110億円
+99.4%
通期予想
3,600億円
純利益
3,437億円
+290.3%
通期予想
4,250億円
営業利益率
8.6%
富士通が発表した2026年3月期第3四半期決算は、売上収益が 2兆4,511億円 (前年同期比 +1.8% )、営業利益が 2,110億円 (同 +99.4% )と大幅な増益を記録しました。主力のサービスソリューション事業において、DX関連の 「Fujitsu Uvance」 が順調に拡大したほか、デバイスソリューション事業の非継続事業分類に伴う利益押し上げが寄与しました。これを受け、同社は親会社株主に帰属する通期純利益予想を従来の3,900億円から 4,250億円 へと上方修正しています。
業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、ITサービスの需要拡大と事業構造の転換が鮮明に表れる結果となりました。売上収益は 2兆4,511億円 (前年同期比 +1.8% )と微増にとどまったものの、営業利益は 2,110億円 (同 +99.4% )と、前年同期の 1,058億円 からほぼ倍増しています。この大幅な利益増加の背景には、不採算事業の整理やコスト構造の改善に加え、デバイスソリューション事業を非継続事業に分類したことによる一過性の影響が含まれています。
本業の実力を示す 「調整後営業利益」 も 2,291億円 (同 +67.1% )と大きく伸長しており、収益性の向上が着実に進んでいます。特にコンサルティングやクラウド移行などを手掛けるサービスソリューション事業が利益の柱として定着しました。税引前利益は 2,651億円 (同 +132.2% )、親会社の所有者に帰属する四半期利益は 3,436億円 (同 +290.3% )に達し、最終利益ベースでは過去最高水準の推移を見せています。
| 項目 | 前年同期実績 | 当期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆4,080億円 | 2兆4,511億円 | +1.8% |
| 営業利益 | 1,058億円 | 2,110億円 | +99.4% |
| 調整後営業利益 | 1,371億円 | 2,291億円 | +67.1% |
| 親会社株主帰属利益 | 880億円 | 3,436億円 | +290.3% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力セグメントである サービスソリューション は、売上収益 1兆6,577億円 (前年同期比 +6.0% )、調整後営業利益 2,161億円 (同 +33.8% )と増収増益を達成しました。社会課題を解決する重点領域「Fujitsu Uvance」の受注がグローバルで加速しており、高付加価値なサービス提供が利益率の向上に直結しています。特に国内市場における企業のDX投資意欲は依然として高く、金融や公共向けなどの大規模プロジェクトが収益を支えました。
ハードウェアソリューション は、売上収益 6,729億円 (同 △5.6% )と減収となりましたが、調整後営業利益は 370億円 (同 +161.6% )と大幅な増益を確保しました。サーバーやストレージといった製品のポートフォリオ最適化が進み、不採算モデルの縮小と製造コストの削減が奏功した形です。ネットワークプロダクトについても、次世代通信規格向けの投資を継続しつつ、既存領域での効率的な運営を徹底しています。
ユビキタスソリューション は、パソコンの更新需要の端境期にありながら、売上収益 1,779億円 (同 △1.9% )、調整後営業利益 314億円 (同 +54.6% )を記録しました。法人向けPCの構成比高まりや、徹底したサプライチェーン管理によるコストダウンが利益を押し上げました。全社的にハードからサービスへという ビジネスモデルの変革 が、数字となって明確に表れています。
| セグメント名 | 売上収益 | 調整後営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 1兆6,577億円 | 2,161億円 | 13.0% |
| ハードウェアソリューション | 6,729億円 | 370億円 | 5.5% |
| ユビキタスソリューション | 1,779億円 | 314億円 | 17.7% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| サービスソリューション | 1.7兆円 | 68% | 2,161億円 | 13.0% |
| ハードウェアソリューション | 6,729億円 | 28% | 371億円 | 5.5% |
| ユビキタスソリューション | 1,779億円 | 7% | 315億円 | 17.7% |
通期見通しの上方修正
足元の好調な推移と事業再編の効果を反映し、通期の連結業績予想を上方修正しました。売上収益は前回予想比で800億円プラスの 3兆5,300億円 に、親会社の所有者に帰属する当期利益は350億円プラスの 4,250億円 となる見込みです。これは、非継続事業からの利益確定や、サービス事業における生産性向上が想定を上回るペースで進んでいることを反映したものです。
一方で、通期の営業利益予想については 3,600億円 と据え置きましたが、本業の収益力を示す調整後営業利益は前回予想から200億円引き上げ、 3,800億円 (前期比 +23.7% )としています。これは、持続的な成長に向けたR&D投資や人材投資を強化する一方で、既存事業の収益改善が着実に進んでいることを示唆しています。
| 項目 | 前回発表予想 | 今回修正予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 3兆4,500億円 | 3兆5,300億円 | 3兆7,560億円 |
| 営業利益 | 3,600億円 | 3,600億円 | 2,651億円 |
| 調整後営業利益 | 3,600億円 | 3,800億円 | 3,071億円 |
| 親会社株主帰属利益 | 3,900億円 | 4,250億円 | 2,197億円 |
財務状況と資本政策
財務基盤は、非継続事業の切り離しや資産効率の改善により、より筋肉質な構造へと変化しています。2025年12月末時点の総資産は 3兆2,129億円 と、前期末比で 2,848億円 減少しました。これは主に 新光電気工業の連結除外 や、売却目的資産の整理が進んだことによるものです。一方で、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)は 1兆9,991億円 へと増加し、自己資本比率は 62.2% (前期末比 +12.4ポイント )と大幅に改善しました。
株主還元策についても積極的な姿勢を継続しています。年間配当金は前期の28円(株式分割調整後)から大幅増配となる 50円 (中間15円、期末予想35円)を予定しています。また、当四半期累計で約 847億円 の自己株買いを実施しており、ポートフォリオ改革によって創出したキャッシュを積極的に株主へ還元しつつ、資本効率(ROE)の向上を図る経営判断が示されています。
戦略トピック:ブレインパッドの取得
当第3四半期における最大のトピックは、データ分析とAI活用に強みを持つ 株式会社ブレインパッド の買収(子会社化)です。2025年12月22日付で、公開買付け(TOB)等を通じて発行済株式の86.30%を約 488億円 で取得しました。この買収は、富士通が掲げるサービスソリューション戦略の中核である「データ駆動型経営」を支援するケイパビリティを補完することが目的です。
ブレインパッドが保有する高度なデータサイエンティスト集団とAI実装実績を、富士通の広範な顧客基盤と組み合わせることで、 「Fujitsu Uvance」 の競争力を飛躍的に高める狙いがあります。現在は暫定的な会計処理が行われていますが、今後は両社のシナジーによる新規商談の獲得や、サービス単価の向上が期待されます。
リスクと課題
業績は好調ですが、同社は今後のリスク要因として以下の点を挙げています。
- マクロ経済の不透明感: 日本、欧州、北米、アジアといった主要市場における景気減速がIT投資に与える影響。
- 不採算プロジェクトのリスク: システム開発における見積精度や工程管理の不備による追加コストの発生。
- 為替・金利変動: 海外売上比率が高まる中、為替の大幅な変動が円建ての利益を圧縮する可能性。
- 部品調達と物価高騰: 特定の部材不足やエネルギー価格の上昇による製造コスト・運用コストへの波及。
- 人材確保の競争激化: DX需要を支える高度IT人材の確保に伴う労務コストの上昇と獲得競争。
富士通の今回の決算は、長年進めてきた「ハードからサービスへ」の構造改革が、単なるスローガンではなく実数値として結実し始めたことを象徴しています。特に、デバイス事業(新光電気工業など)の切り離しを断行し、自己資本比率を6割超まで高めた財務的な潔さは評価に値します。
注目すべきは、買収したブレインパッドの存在です。単なる規模拡大ではなく、DXの核心である「データ分析」の専門集団を内製化したことで、競合他社(NTTデータや外資系コンサル)との差別化を明確にする戦略が見て取れます。通期純利益の上方修正も、一過性の利益に甘んじることなく、サービス事業の筋肉質な成長に自信を深めている証左でしょう。
一方で、今後は「Uvance」の海外展開において、現地のITコンサルとの競争にどこまで勝てるかが焦点となります。不採算プロジェクトの発生というIT業界共通のリスクをどう抑制し続けられるか、経営の手腕が引き続き問われます。
