ディー・エヌ・エー・2026年3月期Q3、純利益6.8%増の168億円——「ポケカ」新作貢献やスポーツ好調、配当方針変更で増配へ
売上高
1,145億円
-1.9%
通期予想
1,465億円
営業利益
169億円
-19.5%
通期予想
170億円
純利益
168億円
+6.8%
営業利益率
14.8%
株式会社ディー・エヌ・エーが5日に発表した2026年3月期第3四半期累計決算は、売上収益が前年同期比 1.9%減 の 1,144億5,200万円 、営業利益が同 19.5%減 の 168億9,500万円 となりました。営業利益はヘルスケア事業での のれん減損損失(約96億円) の計上が重石となりましたが、持分法投資利益の大幅増が寄与し、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同 6.8%増 の 168億2,100万円 を確保しました。同社は株主還元を強化し、配当方針をDOE(親会社所有者帰属持分配当率)3%基準に変更 することを決定、年間配当予想を前期実績から1円増の 66円 へ引き上げています。

業績のポイント
当第3四半期累計期間の業績は、売上収益が 1,144億5,200万円 (前年同期比 1.9%減 )、営業利益が 168億9,500万円 (同 19.5%減 )となりました。減益の主な要因は、ヘルスケア・メディカル事業に属する株式会社アルムの将来計画を見直したことに伴い、その他の費用として 99億1,200万円 の減損損失を計上したためです。この非現金費用が利益を押し下げた形ですが、事業の収益性自体は着実に改善が進んでいます。
一方で、税引前利益は 242億3,100万円 (前年同期比 5.2%増 )と増益に転じました。これは、持分法適用関連会社である株式会社CygamesやGO株式会社などの業績好調を受け、持分法による投資利益が 62億7,700万円 (前年同期は2億7,300万円)と急拡大したことが大きく寄与しています。本業の利益を投資先の成長が補完する構造となり、最終的な四半期利益は 168億2,100万円 (同 6.8%増 )と前年を上回りました。
| 項目 | 2025年3月期 Q3実績 | 2026年3月期 Q3実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,167億円 | 1,144億円 | △1.9% |
| 営業利益 | 209億円 | 168億円 | △19.5% |
| 税引前利益 | 230億円 | 242億円 | +5.2% |
| 四半期利益 | 157億円 | 168億円 | +6.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
ゲーム事業は、売上収益 482億9,500万円 (前年同期比 4.5%減 )、セグメント利益 233億300万円 (同 10.8%増 )となりました。2024年10月に投入した期待の新作『Pokémon Trading Card Game Pocket』がグローバルでヒットし収益に貢献した一方、既存タイトルの減衰が響き減収となりました。しかし、開発・運営体制の効率化や広告宣伝費の精査により、利益率は改善傾向にあります。
ライブストリーミング事業は、売上収益 303億2,500万円 (前年同期比 2.0%減 )ながら、セグメント利益は 33億200万円 (前年同期は3億7,600万円の損失)と 大幅な黒字化 を達成しました。国内「Pococha」において、これまでの規模拡大重視から収益性重視へと舵を切り、マーケティングコストを抑制したことが奏功しています。また、バーチャルライブ配信アプリ「IRIAM」も堅調に推移し、利益の柱として成長しています。
スポーツ事業は、売上収益 282億800万円 (前年同期比 6.6%増 )、セグメント利益 56億400万円 (同 11.1%増 )と極めて好調です。横浜DeNAベイスターズの主催試合における観客動員数が球団史上最多記録を更新し、チケット収入やグッズ販売が大きく伸びました。プロ野球シーズンの盛り上がりが直接的に業績を牽引する、同社の強力な収益源となっています。
ヘルスケア・メディカル事業は、売上収益 60億6,500万円 (前年同期比 5.9%減 )、セグメント損失 25億3,900万円 (前年同期は35億4,500万円の損失)となりました。データ利活用やデータヘルス領域は堅調ですが、前述のアルム社に関連する 減損損失の計上 がセグメント全体の損益を圧迫しました。今後は固定費の低減や医療DX関連サービスの成長に注力し、早期の収益化を目指す方針です。
| セグメント | 売上収益 | 前年同期比 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ゲーム | 482億円 | △4.5% | 233億円 | 48.2% |
| ライブストリーミング | 303億円 | △2.0% | 33億円 | 10.8% |
| スポーツ | 282億円 | +6.6% | 56億円 | 19.8% |
| ヘルスケア | 60億円 | △5.9% | △25億円 | - |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 483億円 | 42% | 233億円 | 48.3% |
| ライブストリーミング事業 | 303億円 | 27% | 33億円 | 10.9% |
| スポーツ事業 | 282億円 | 25% | 56億円 | 19.9% |
| ヘルスケア・メディカル事業 | 61億円 | 5% | -2,539百万円 | — |
財務状況と資本政策
2025年12月末時点の総資産は、前期末比 192億200万円減 の 3,749億8,600万円 となりました。売掛金の回収が進み流動資産が減少した一方で、利益剰余金の積み上げにより親会社所有者帰属持分比率は 67.1% (前期末は61.3%)へ上昇し、財務基盤の安定性はさらに高まっています。
同社は今回、株主還元方針の大きな転換を表明しました。従来の配当方針を改め、DOE(親会社所有者帰属持分配当率)3%を目安 として、継続的かつ安定的な配当を行う方針へ変更しました。これに伴い、2026年3月期の年間配当予想を前回の未定から 66円 (前期は65円)へと設定し、実質的な増配を予定しています。成長投資を優先しつつも、より予測可能性の高い還元を投資家へ提示する姿勢を明確にしました。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想について、同社は売上収益 1,465億円 (前期比 10.7%減 )、営業利益 170億円 (同 41.3%減 )へと修正を発表しました。下方修正の背景には、ヘルスケア事業での一過性の減損損失計上や、ゲーム事業における既存タイトルの推移が想定を下回ったことがあります。
ただし、非経常的な要因を除いた指標である Non-GAAP営業利益 は 265億円 (前期比 19.5%減 )を見込んでおり、事業実態としては底堅さを維持する構えです。特に「ポケカ」新作の通期寄与や、ライブストリーミング事業の黒字定着が第4四半期の焦点となります。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正予想 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,650億円 | 1,465億円 | 1,640億円 |
| 営業利益 | 250億円 | 170億円 | 289億円 |
| 営業利益 (Non-GAAP) | 300億円 | 265億円 | 329億円 |
リスクと課題
同社が直面する主なリスクは、エンターテインメント領域におけるヒット作への依存と、新規事業の収益化スピードです。ゲーム事業では新作『Pokémon Trading Card Game Pocket』の長期的なアクティブユーザー維持が課題となります。また、今回大幅な減損を計上したヘルスケア事業のように、M&Aによって獲得した資産の収益性が計画を下回るリスクも依然として残っています。
外部環境としては、アプリプラットフォームの手数料体系の変化や、国内外の規制動向が事業コストに影響を与える可能性があります。同社はこれらのリスクに対し、スポーツ事業のようなリアルアセットとの融合や、持分法投資先の多様化によって収益ポートフォリオの分散を図っています。
今回の決算で最も注目すべきは、業績数値の表面的な減少以上に、収益構造の転換と還元姿勢の強化 です。
- 「ライブストリーミングの収益化」: 長らく投資フェーズにあったライブストリーミング事業が、マーケティング費の抑制によって明確に利益貢献フェーズに入ったことは、中長期的な利益底上げの観点からポジティブです。
- 「持分法投資の威力」: Cygamesなどの関連会社からの利益取り込みが営業外で大きく効いており、本業のゲーム事業のボラティリティを上手くカバーしています。
- 「DOE3%への方針変更」: 減損による赤字リスクがある中でも安定した配当を約束するDOE基準への移行は、機関投資家からの評価を意識した戦略的な判断と言えます。
一方で、ヘルスケア事業での巨額減損は、過去のM&A戦略の厳しさを物語っています。今後は「ポケカ」新作の勢いをどこまで維持できるか、そしてヘルスケア事業を「負の遺産」にせず、データ利活用でどう反転させるかが焦点となります。
