第一ライフグループ・2026年3月期、経常収益14.5%増の11兆3,082億円——米子会社の会計変更で純利益は微減も、米国M&Aで攻勢
売上高
11.3兆円
+14.5%
通期予想
10.7兆円
営業利益
7,537億円
-0.3%
通期予想
8,690億円
純利益
4,366億円
-4.8%
通期予想
5,130億円
営業利益率
6.7%
第一ライフグループが発表した2026年3月期決算は、経常収益が前期比 14.5%増 の 11兆3,082億円 と大幅な増収を記録しました。国内の窓口販売が好調だったほか、資産運用収益が同 47.7%増 と大きく伸びたことが寄与しています。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は、米国子会社における 新保険会計基準の適用 等の影響により、同 4.8%減 の 436,597百万円 となりました。足元では米国の損害保険事業の買収を発表するなど、収益基盤の多角化を加速させています。
業績のポイント
当連結会計年度の業績は、主要指標である経常収益が 11兆3,082億円 (前期比 +14.5% )に達し、力強い成長を見せました。この主な要因は、国内子会社の第一フロンティア生命において貯蓄性商品の販売が増加したこと、および金利環境の変化を背景に資産運用収益が 3兆7,353億円 (前期比 +47.7% )と飛躍的に拡大したことにあります。
一方、利益面では経常利益が 753,688百万円 (前期比 0.3%減 )、純利益が 436,597百万円 (前期比 4.8%減 )となりました。減益の主因は、米国子会社のプロテクティブ生命において 米国新保険会計基準(LDTI) を適用したことによる会計上の影響であり、本業の稼ぐ力が衰えたわけではありません。会社側は、この一時的な会計要因を除けば、実質的な収益力は堅調に推移していると分析しています。
業績推移(通期)
セグメント別動向
国内保険事業は、経常利益 676,269百万円 を確保し、グループ全体の利益を牽引しました。第一フロンティア生命での外貨建て保険等の販売増加が経常収益を押し上げたほか、効率的な事業運営が利益の下支えとなりました。少子高齢化が進む国内市場において、保障ニーズだけでなく資産形成ニーズを確実に捉えた結果といえます。
海外保険事業は、経常利益 112,629百万円 となりました。前述の通り、米国での会計基準変更が利益の押し下げ要因となりましたが、事業規模自体は拡大傾向にあります。特に米国市場はグループの成長エンジンと位置付けられており、後述するM&Aを通じて、生命保険以外の領域への進出も図っています。
| セグメント | 経常収益 | 経常利益 | 利益構成比 |
|---|---|---|---|
| 国内保険事業 | 8,669,631百万円 | 676,269百万円 | 59.9% |
| 海外保険事業 | 3,559,364百万円 | 112,629百万円 | 10.0% |
| その他事業 | 471,478百万円 | 340,204百万円 | 30.1% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 国内保険事業 | 8.7兆円 | 77% | 6,763億円 | 7.8% |
| 海外保険事業 | 3.6兆円 | 32% | 1,126億円 | 3.2% |
| その他事業 | 4,715億円 | 4% | 3,402億円 | 72.2% |
財務状況と資本政策
総資産は前期末から 4兆7,549億円 増加し、 74兆1,590億円 となりました。有価証券の含み益を反映するその他有価証券評価差額金が 1兆3,726億円 (前期比 +43.1% )と大幅に増加したことで、純資産も 4兆2,542億円 へと厚みを増しています。自己資本比率は 5.7% と、前期の 5.2% から改善し、健全性を維持しています。
株主還元については、2025年4月1日付で実施した 1株を4株にする株式分割 を考慮した実質的な増配を計画しています。2026年3月期の年間配当は分割後換算で 54.5円 となりましたが、次期(2027年3月期)は 72円 への大幅な増配を予想しています。これは連結配当性向を 50%程度 まで引き上げる方針に基づくもので、資本効率の向上と株主還元の強化に対する経営陣の強い意志が示されています。
戦略トピック:米国での相次ぐ大型買収
グループは成長戦略の柱として、米国での事業ポートフォリオ拡充を加速させています。2026年1月には損害保険事業を手掛ける Portfolio Holding, Inc. の買収を完了しました。さらに、2026年4月には「フロンティング」と呼ばれる独自のビジネスモデルを持つ Obsidian Insurance Holdings の買収についても契約を締結したと発表しました。
これらの買収の狙いは、従来の死亡保障等のリスク引き受けに加え、手数料収入(フィービジネス)を拡大させることにあります。保険金支払いリスクを限定しつつ安定した収益を得られるモデルを組み込むことで、 資本効率の改善と収益の安定化 を同時に実現する狙いがあります。生命保険の枠を超えた「総合保険グループ」への脱皮が着実に進んでいます。
通期見通し
2027年3月期の通期連結業績は、経常収益こそ微減を見込むものの、各利益項目で 2桁の増益 を予想しています。海外生命保険事業における利益貢献の拡大や、会計基準変更の影響が一巡することが増益の背景です。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 経常収益 | 11兆3,082億円 | 10兆6,660億円 | △5.7% |
| 経常利益 | 7,536億円 | 8,690億円 | +15.3% |
| 当期純利益 | 4,365億円 | 5,130億円 | +17.5% |
リスクと課題
同社が直面する主なリスクとして、以下の要因が挙げられます。
- 金融市場の変動リスク: 市場金利や為替レート、株価の変動は資産運用収益や保険契約準備金の評価に直結し、業績を大きく左右します。
- M&Aの統合リスク: 相次ぐ海外買収において、買収先とのシナジー創出やガバナンスの構築が計画通り進むかが焦点となります。
- 海外の規制・会計動向: 米国や欧州における保険規制や会計基準の更なる変更が、将来的に資本効率や利益表示に影響を与える可能性があります。
今回の決算で最も注目すべきは、見かけ上の純利益減少に惑わされず、その裏にある「攻めの姿勢」を読み解くことです。会計変更による減益は非キャッシュ項目であり、実態としてのキャッシュフロー創出力は損なわれていません。
特筆すべきは、米国での相次ぐ買収戦略です。従来の伝統的な生保モデルから、手数料収入を重視した「資本効率重視型」のビジネスへシフトしようとする意図が明確に感じられます。また、株式分割後の大幅増配予想は、投資家にとって非常に強力なメッセージとなっており、就活生にとっても「変革期にあるグローバル企業」としての魅力が際立つ内容と言えるでしょう。今後は、買収した米国子会社がどれだけ早期にグループの利益水準を底上げできるかが、株価および企業価値の更なる向上の鍵となります。
