業界ダイジェスト
株式会社ADEKA の会社詳細
株式会社ADEKA
ADEKA
2026年3月期 通期

ADEKA・2026年3月期通期、全利益項目で過去最高を更新——ライフサイエンス事業が牽引、次期は12.5%営業増益へ

増収増益
過去最高益
配当増額
自己株買い
半導体材料
農薬
ライフサイエンス
資本効率向上
中期経営計画
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

4,166億円

+2.3%

通期予想

4,530億円

進捗率92%

営業利益

416億円

+1.5%

通期予想

468億円

進捗率89%

純利益

279億円

+11.4%

通期予想

288億円

進捗率97%

営業利益率

10.0%

化学・食品大手の中間素材メーカー、ADEKAが発表した2026年3月期連結決算は、売上高・全利益項目ともに過去最高を更新する着地となりました。売上高は前年同期比 2.3% 増の 4,165億円、営業利益は 1.5% 増の 416億円 に到達しました。家電や電気自動車(EV)市場の停滞を受けた「樹脂添加剤」の苦戦を、国内外で絶好調だった「ライフサイエンス(農薬)」事業が補った形です。あわせて年間配当を前期比 12円 増の 112円 とし、次期もさらなる増配と増益を掲げる強気の見通しを示しました。

業績のポイント

当連結会計年度の業績は、世界的なインフレや不透明な地政学リスクにさらされながらも、主力事業のポートフォリオが機能し、増収増益を達成しました。売上高は 4,165億6,300万円(前年同期比 2.3% 増)、営業利益は 416億1,400万円(同 1.5% 増)となりました。特に経常利益は受取利息の増加や為替差益の計上により、同 8.7% 増の 427億7,200万円 と高い伸びを記録しています。

最終的な親会社株主に帰属する当期純利益は、前年比 11.4% 増の 278億6,600万円 となりました。これは、ライフサイエンス事業の収益拡大に加え、政策保有株式の売却に伴う特別利益の計上が寄与した結果です。1株当たり当期純利益も 277.95円(前期は245.55円)へと大きく上昇し、稼ぐ力の強化が鮮明になっています。

経営陣は、家電やスマートフォン市場の回復が遅れる中で、成長領域と位置づける半導体材料および農薬分野への経営資源集中を継続しています。これにより、景気変動に強い収益構造への転換が進んでいることが今回の決算からも見て取れます。

項目2025年3月期実績2026年3月期実績前年同期比
売上高4,071億円4,165億円+2.3%
営業利益410億円416億円+1.5%
経常利益393億円427億円+8.7%
当期純利益250億円278億円+11.4%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

主力の化学品事業は、売上高 2,148億円(前年比 1.7% 減)、営業利益 263億円(同 6.0% 減)と、減収減益となりました。家電やEV市場の冷え込みにより、欧米を中心にプラスチック向けの難燃剤や酸化防止剤の販売が振るわなかったことが主な要因です。一方で、先端半導体向けのフォトレジスト材料などは好調を維持しており、製品ミックスの高度化が進んでいます。

食品事業は、売上高 830億円(同 0.6% 増)、営業利益 43億円(同 0.6% 減)の横ばい圏内で推移しました。国内では、植物性食品ブランド「デリプランツ」などの高付加価値製品が順調に拡大しましたが、主要市場の一つである中国の景気低迷が、パンや菓子向けの業務用油脂の販売に影を落としました。

業績を力強く牽引したのが、売上高 1,117億円(同 11.8% 増)、営業利益 98億円(同 26.4% 増)と大幅な増収増益を記録したライフサイエンス事業です。欧州での除草剤販売や、北米での果樹・ナッツ向け殺虫剤が極めて好調に推移しました。国内でも米価高騰による農家の増産意欲が追い風となり、水稲向け薬剤の出荷が伸びるなど、国内外で需要を確実に取り込んでいます。

セグメント売上高 (億円)前年比営業利益 (億円)前年比
化学品2,148△1.7%263△6.0%
食品830+0.6%43△0.6%
ライフサイエンス1,117+11.8%98+26.4%
その他69+11.7%10+30.8%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
化学品事業2,148億円52%264億円12.3%
食品事業830億円20%44億円5.3%
ライフサイエンス事業1,118億円27%98億円8.8%

財務状況と資本政策

当期末の総資産は前期末比 168億円 増の 5,599億円 となりました。投資有価証券や棚卸資産が増加した一方で、自己資本比率は 56.0%(前期は54.6%)へと改善し、強固な財務基盤を維持しています。内部留保を積み増しつつ、成長投資と株主還元のバランスを重視する姿勢が強調されています。

特筆すべきは、積極的な株主還元の強化です。当期の年間配当は 112円 とし、当初予想の100円から大幅に増額されました。さらに、当連結会計年度中に約 145億円(394万株)の自己株式取得を実施しており、資本効率(ROE)の向上に向けた具体的な行動を示しています。

キャッシュフローの状況については、営業活動によるキャッシュフローが 406億円 の黒字となった一方、投資活動には 300億円 を投じました。主に有形固定資産の取得や半導体材料等の増産対応に充てられており、将来の収益基盤作りを加速させています。

通期見通しと戦略トピック

2027年3月期の通期業績予想は、売上高 4,530億円(前期比 8.7% 増)、営業利益 468億円(同 12.5% 増)と、さらなる連続増収増益を見込んでいます。中期経営計画「ADX 2026」の最終年度を迎え、先端半導体向け高誘電材料の拡大や、農薬事業のブラジル・インドといった新市場への深耕を加速させます。

次期の配当についても、年間 120円(中間60円・期末60円)と、さらなる増配を計画しています。これは連結配当性向 40% 以上を維持するという基本方針に基づいたものです。AI・データセンター投資の拡大を追い風に、エレクトロニクス関連材料の需要増を確実に取り込む戦略です。

項目2026年3月期実績2027年3月期予想増減率
売上高4,165億円4,530億円+8.7%
営業利益416億円468億円+12.5%
経常利益427億円466億円+8.9%
親会社純利益278億円288億円+3.4%

リスクと課題

経営環境における主な懸念事項として、会社側は以下の点を挙げています。

  • 原材料価格の変動: 中東情勢の緊迫化に伴うナフサ由来原料の供給逼迫やコスト上昇リスク。製品価格への適正な転嫁が課題となります。
  • 為替変動の影響: 1円の円高が進行した場合、営業利益で年間約 1.7億円(米ドル・ユーロ合算)の押し下げ要因となる試算です。次期予想は1ドル153円を前提としています。
  • 中国経済の不確実性: 食品事業や一部の化学品において、中国国内の消費停滞や建築需要の低迷が引き続きリスク要因となります。
  • 地政学リスク: サプライチェーンの混乱や、米国の関税政策などの外部環境の変化が事業に及ぼす影響を注視しています。
AIアナリストの視点

ADEKAの決算で最も注目すべきは、収益構造の「質的変化」です。かつての汎用的な樹脂添加剤主体のモデルから、営業利益率が高い「ライフサイエンス」と「半導体先端材料」の二枚看板へのシフトが着実に進んでいます。

特にライフサイエンス事業の営業利益率がセグメント内で伸びており(前期約7.7%→当期約8.8%)、これが全社の最高益更新の主動力となっています。化学品セグメントにおいても、汎用品の苦戦を先端材料で補う構造ができており、下支えが効いています。

また、ROE向上に向けた姿勢も顕著です。約145億円という大規模な自己株買いと、配当性向40%超を維持した上での増配は、投資家にとって非常にポジティブなメッセージです。懸念点は中国市場の回復遅れと原材料費の上昇ですが、次期予想で営業利益12.5%増という強気の数字を出している点からは、先端分野でのシェア拡大に対する強い自信が感じられます。