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アコム株式会社 の会社詳細
アコム株式会社
アコム
2026年3月期 通期

アコム・2026年3月期通期、営業利益71%増の1,003億円——利息返還請求の減少が寄与、大幅増配も発表

アコム
増収増益
大幅増配
消費者金融
利息返還請求
海外展開
2026年3月期
株主還元
ノンバンク
業績予想
通期1年間の確定値(前年比)

売上高

3,377億円

+6.3%

通期予想

3,560億円

進捗率95%

営業利益

1,004億円

+71.4%

通期予想

980億円

進捗率102%

純利益

796億円

+147.9%

通期予想

638億円

進捗率125%

営業利益率

29.7%

消費者金融最大手のアコムが12日に発表した2026年3月期決算は、本業の回復とコスト抑制が重なり大幅な増益となりました。営業利益は前期比 71.4%増1,003億円 に達し、長年の懸案であった利息返還請求に伴う費用負担が大幅に減少したことが利益を大きく押し上げました。好調な業績を背景に、年間配当を前期の14円から 22円 へと大幅に引き上げる方針を示しており、株主還元への積極的な姿勢が鮮明となっています。

業績のポイント

当連結会計年度の営業収益は、前期比 6.3%増3,377億円 と増収を確保しました。個人消費の回復を背景に資金需要が活況を呈しており、主力の営業貸付金残高が増加したことで、利息収入が着実に伸びたことが寄与しています。さらに利益面では、かつてノンバンク業界を苦しめた利息返還損失引当金の繰入額が大幅に減少したことが決定打となりました。

営業利益は 1,003億円(前期比 +71.4%)、純利益は 796億円(同 +147.9%)といずれも過去最高水準の伸びを記録しています。特に純利益の急増については、業績の安定化に伴い「繰延税金資産」の回収可能性に関する企業分類が変更されたことで、税金費用が大幅に減少したという特殊要因も含まれています。単なるコスト削減だけでなく、事業環境の正常化が財務諸表に強く反映された結果と言えます。

指標前期実績(2025/3)当期実績(2026/3)前年比
営業収益3,177億円3,377億円+6.3%
営業利益585億円1,003億円+71.4%
経常利益589億円1,005億円+70.6%
親会社株主に帰属する当期純利益321億円796億円+147.9%

業績推移(通期)

売上高営業利益

セグメント別動向

国内のローン・クレジットカード事業が牽引役となり、全部門で増収を達成しました。特に国内主力事業の利益回復が顕著です。

ローン・クレジットカード事業
国内の営業収益は 1,818億円(前期比 7.3%増)、セグメント利益は 535億円(同 281.9%増)と爆発的な利益成長を遂げました。テレビCMの刷新などによる積極的なブランド訴求により、新規顧客の獲得が順調に進んだ結果、営業貸付金残高は 9,982億円 まで拡大しています。利息返還請求が着実に減少し、これに関連する費用が抑制されたことが、セグメント利益を約4倍に押し上げる主因となりました。

海外金融事業
タイ、フィリピン、マレーシアで展開する海外事業の営業収益は 675億円(前期比 3.2%増)、セグメント利益は 228億円(同 18.1%増)でした。タイの子会社「EASY BUY」において、家計債務増加に伴う現地規制の影響で貸付金自体は現地通貨ベースで減少したものの、円安による為替換算上のプラス効果が利益を支えました。また、2023年に参入したマレーシア事業も着実に基盤を拡充しています。

信用保証事業・その他
銀行系ローンなどの保証を請け負う信用保証事業は、営業収益 810億円(前期比 6.2%増)と堅調でしたが、セグメント利益は 222億円(同 5.9%減)と微減になりました。これは保証残高の増加に伴い、将来の貸倒れに備えた費用(貸倒関連費用)を保守的に積み増したことによるもので、将来の健全性を重視した経営判断の結果といえます。

セグメント営業収益前年比セグメント利益前年比
ローン・カード(国内)1,818億円+7.3%535億円+281.9%
信用保証810億円+6.2%222億円△5.9%
海外金融675億円+3.2%228億円+18.1%
債権管理回収72億円+10.7%13億円+5.6%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
ローン・クレジットカード事業(国内)1,819億円54%536億円29.5%
信用保証事業810億円24%223億円27.5%
海外金融事業675億円20%229億円33.9%
債権管理回収事業72億円2%13億円18.7%

財務状況と資本政策

総資産は前期末比で 1,299億円 増加し、1兆6,163億円 となりました。主に国内・海外での営業貸付金の伸びが資産を押し上げています。自己資本比率は 44.5% と前期から 0.5ポイント 改善しており、強固な財務基盤を維持しています。負債面では、積極的な貸付に対応するため、借入金や社債による資金調達残高が 451億円 増加しました。

特筆すべきは、株主還元の強化です。2026年3月期の年間配当は前期比 8円増配22円 としました。配当性向は 43.3% となり、利益成長の成果を株主へ明確に還元する姿勢を打ち出しています。会社側は「持続的な企業価値向上」と「安定的な株主還元」を基本方針として掲げており、次期(2027年3月期)も同水準の 22円 を維持する計画です。

通期見通し

2027年3月期の連結業績予想について、営業収益は前期比 5.4%増3,560億円 と引き続き増収を見込む一方、各利益項目については慎重な姿勢を示しています。営業利益は 980億円(前期比 2.4%減)、純利益は 638億円(同 19.9%減)となる見通しです。

利益の減少予想については、2026年3月期に計上された法人税等調整額による純利益の押し上げ効果がなくなることや、将来の成長に向けたIT投資、人件費の増加、さらに海外市場での保守的なリスク見積もりを反映させたためです。ただし、本業の収益力を示す営業収益は拡大基調にあり、利息返還請求の落ち着きという構造的な改善は継続すると見られます。

項目2026/3実績2027/3予想増減率
営業収益3,377億円3,560億円+5.4%
営業利益1,003億円980億円△2.4%
経常利益1,005億円985億円△2.0%
当期純利益796億円638億円△19.9%

リスクと課題

好調な決算の一方で、同社はいくつかの外部環境リスクを注視しています。

  • 東南アジアの経済状況: フィリピンでの「国家エネルギー非常事態」宣言や中東情勢の影響によるインフレが、現地消費者の支払い能力に影響を与える懸念があります。
  • 国内の金利動向: 日本国内での金利上昇局面においては、同社の資金調達コストが増加する可能性があり、利ざやの確保が課題となります。
  • 利息返還請求の動向: 減少傾向にあるものの、外部環境の変化によって再び請求が増加する可能性があり、引き続き注視が必要としています。
  • 競争環境の激化: スマートフォン決済や銀行系カードローン、後払い決済(BNPL)など、リテールファイナンス市場での競争は激しさを増しています。
AIアナリストの視点

アコムの今回の決算は、まさに「過去の負の遺産からの脱却」を印象付ける内容でした。かつてノンバンク経営を揺るがした利息返還請求(過払い金)の問題が、財務的にほぼコントロール可能な範囲に収まってきたことが、今回の 営業利益71%増 という数字に如実に表れています。

投資家にとっての注目点は、配当を14円から22円へと一気に引き上げた 判断です。これは、もはや「耐える時期」ではなく、稼いだ利益を成長投資と還元に振り向ける「攻めの時期」に入ったという経営陣の自信の表れと解釈できます。

一方で、就職活動中の学生にとっては、同社がもはや国内の消費者金融だけにとどまらず、タイやフィリピンといった東南アジア市場での収益拡大 を図っている点に注目すべきでしょう。ITを活用した審査スピードの向上や、UI/UXの改善といったデジタル戦略も加速しており、「伝統的な金融業」から「フィンテック企業」への変貌を急いでいる様子が伺えます。

今後の焦点は、国内金利が上昇に転じた際に、いかに低コストでの資金調達を維持できるか、そして海外事業における地政学リスクをどう制御するかにかかっています。