大和工業・2026年3月期、純利益96%増の623億円——米州事業が牽引、中東撤退とタイ連結強化で構造改革加速
売上高
1,604億円
-4.7%
通期予想
1,660億円
営業利益
45億円
-60.9%
通期予想
45億円
純利益
624億円
+96.0%
通期予想
470億円
営業利益率
2.8%
電炉大手の大和工業が発表した2026年3月期連結決算は、親会社株主に帰属する当期純利益が前年比96.0%増の623億円と大幅な増益を記録した。国内やタイでの営業利益は原材料価格の高騰で苦戦したものの、持分法適用会社である米国のニューコア・ヤマト・スチールがデータセンター向けの堅調な需要を背景に利益を大きく押し上げた。また、長年の課題であった中東事業からの完全撤退を完了させ、不採算部門の整理と成長市場への集中という戦略的な舵取りを明確にしている。
大和工業 2026年3月期 通期決算
さくら × けんじ の対話形式解説
業績のポイント
2026年3月期の業績は、本業の儲けを示す営業利益が前年比60.9%減の44億円と大きく落ち込んだ。これは国内やタイにおいて、建設コストの高止まりによる需要停滞に加え、鉄スクラップ価格の上昇で利益幅が縮小したことが主因である。しかし、営業外損益として計上される持分法投資損益が、米国事業の好調により474億円(前年比+70.9%)に達したことで、経常利益は652億円(前年比19.9%増)を確保した。
最終利益が大幅に増加した背景には、投資有価証券の売却益による特別利益の計上(168億円)や、中東事業の株式譲渡に伴う損失処理が一段落したことが挙げられる。これにより、営業利益段階での苦戦を米州事業の収益力と資産の入れ替えで補う形となった。
| 項目 | 当期実績 | 前期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,603億円 | 1,682億円 | △4.7% |
| 営業利益 | 44億円 | 114億円 | △60.9% |
| 経常利益 | 652億円 | 544億円 | +19.9% |
| 当期純利益 | 623億円 | 318億円 | +96.0% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力の鉄鋼事業は地域によって明暗が分かれた。国内(ヤマトスチール)は、施工能力不足による建設工事の遅延で形鋼需要が停滞し、売上高は529億円(前年比11.0%減)、セグメント利益は14億円(前年比74.9%減)と厳しい結果となった。諸コストの上昇に対し製品価格への転嫁を進めたものの、原料のスクラップ価格高騰が利益を圧迫した。
タイの連結子会社SYSは、データセンターなどの民間プロジェクトが下支えし、販売数量は前期を上回った。しかし、安価な中国材の流入による価格競争が激化し、売上高は685億円(前年比0.9%減)、セグメント利益は42億円(前年比20.7%減)となった。なお、同社は2026年3月にSYSへの出資比率を70.0%へ引き上げ、東南アジア市場での支配力を強めている。
| セグメント(鉄鋼) | 売上高 | セグメント利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 529億円 | 14億円 | 2.8% |
| タイ | 685億円 | 42億円 | 6.2% |
| インドネシア | 250億円 | 10億円 | 4.1% |
| 軌道用品 | 96億円 | 17億円 | 17.9% |
持分法適用会社が中心の米国事業(NYS)は、AI関連の投資に伴うデータセンターやスタジアム等の大型案件が絶好調だった。高付加価値製品の販売強化と低位安定したスクラップ価格により、極めて高い利益率を維持し、グループ全体の経常利益の約7割を支える大黒柱となっている。
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼事業(日本) | 530億円 | 33% | 15億円 | 2.8% |
| 鉄鋼事業(タイ) | 685億円 | 43% | 42億円 | 6.2% |
| 鉄鋼事業(インドネシア) | 250億円 | 16% | 10億円 | 4.1% |
| 軌道用品事業 | 97億円 | 6% | 17億円 | 17.9% |
財務状況と資本政策
自己資本比率は前期末の84.8%から85.5%へと上昇し、鉄鋼業界でも屈指の極めて強固な財務基盤を維持している。総資産は中東事業の撤退等により6335億円(前期比239億円減)となったが、キャッシュ・フロー面では米国事業からの安定した配当収入により、営業活動で520億円の資金を確保した。
株主還元については、連結配当性向40%を目処としつつ、1株当たり年間400円(前期比横ばい)の配当を実施する。また、当期中に約256億円の自己株買いを実施した。成長投資としてタイ子会社の追加取得に約59億円を投じるなど、強固な現預金を背景に「攻めの資本政策」を推進している。
通期見通し
2027年3月期の通期業績は、売上高1,660億円(前期比3.5%増)、営業利益45億円(同0.1%増)と、営業利益段階での底打ちを見込む。国内では設備更新に伴う2ヶ月間の操業停止を予定しており一時的な減益要因となるが、タイでは中国材へのアンチダンピング関税の効果による採算改善を期待している。最終利益は特別利益の剥落により470億円(同24.7%減)を予想するが、年間配当は400円を維持する計画だ。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,603億円 | 1,660億円 | +3.5% |
| 営業利益 | 44億円 | 45億円 | +0.1% |
| 経常利益 | 652億円 | 680億円 | +4.2% |
| 当期純利益 | 623億円 | 470億円 | △24.7% |
リスクと課題
最大の懸念事項は、不動産不況に苦しむ中国からの安価な鋼材輸出の継続である。ASEAN市場を中心に価格競争が激化しており、利益率の維持が課題となっている。また、国内では深刻な人手不足に伴う建設工事の工期遅延が形鋼需要を抑制しており、需要の回復には時間を要する見通しだ。さらに、電気料金や物流費といったエネルギーコストの高止まりが、電炉メーカー共通の利益圧迫要因となっている。
大和工業の2026年3月期決算は、実質的に「米国一本足打法」とも言える構図がより鮮明になりました。営業利益(国内+タイの一部)が大きく沈む中で、持分法の米国事業が巨額の利益を叩き出す特殊な収益構造です。
注目すべきは経営の「選択と集中」のスピード感です。
- 赤字が続いていた中東事業(サウジスルブ等)からの完全撤退を完了。
- 成長の柱であるタイ(SYS)の出資比率を70%に引き上げ、ガバナンスを強化。
- 強固な財務(自己資本比率85%超)を背景とした年間400円の安定配当。
今後は、国内事業の設備更新によるコスト競争力強化と、米国でのAI/データセンター関連需要をいかに取り込み続けられるかが焦点となります。営業利益と経常利益の乖離が大きいため、投資家は表面的な営業利益だけでなく、持分法投資損益を含めた実質的な稼ぐ力を見極める必要があります。
