神戸製鋼所・2026年3月期Q3、純利益27.8%減の843億円——鉄鋼・建機が振るわず、通期予想を下方修正
売上高
1.8兆円
-5.6%
通期予想
2.4兆円
営業利益
944億円
-24.2%
通期予想
1,300億円
純利益
843億円
-27.8%
通期予想
1,000億円
営業利益率
5.3%
株式会社神戸製鋼所が6日に発表した2026年3月期第3四半期の連結決算は、最終的な儲けを示す純利益が前年同期比 27.8%減 の 843億円 となった。主力の鉄鋼アルミ事業におけるマージンの悪化や、世界的な建設需要の停滞を受けた建設機械事業の苦戦が響いた。同社は厳しい外部環境を反映し、通期の業績予想を下方修正。売上高は前回予想から1,100億円引き下げ、利益面でも大幅な減益を見込む。一方で、機械事業や電力事業が利益を支える構造が鮮明となっている。

業績のポイント
2026年3月期第3四半期の累計業績は、売上高が 1兆7,780億円(前年同期比 5.6%減)、営業利益が 944億円(同 24.2%減)と、減収減益の決算となった。利益の押し下げ要因となったのは、鉄鋼製品の販売価格から原材料費を引いた「メタルスプレッド(利ざや)」の縮小と、エネルギーコストの高止まりである。特に自動車向けや建設向けの鋼材需要が国内外で伸び悩み、販売数量が減少したことが大きく影響した。
経常利益については、前年同期比 32.6%減 の 895億円 にとどまった。ただし、特別利益として、関西熱化学の連結子会社化に伴う「負ののれん発生益」を計上した(前年同期の数値を遡及修正)。この一過性の利益計上があってもなお、本業の収益性低下を補いきれなかった形だ。投資家にとっては、市況変動にさらされやすい鉄鋼事業の脆弱性が改めて浮き彫りとなる内容となった。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆8,840億円 | 1兆7,780億円 | △5.6% |
| 営業利益 | 1,245億円 | 944億円 | △24.2% |
| 経常利益 | 1,328億円 | 895億円 | △32.6% |
| 四半期純利益 | 1,168億円 | 843億円 | △27.8% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
セグメント別では、事業ごとの明暗がはっきりと分かれた。屋台骨である鉄鋼アルミ事業は、売上高 7,518億円(前年同期比11.1%減)、セグメント利益 96億円(同63.4%減)と大幅な減益に沈んだ。中国経済の減速に伴うアジア市場での鋼材供給過剰や、国内の建設・産業機械向けの需要低迷が直撃した格好だ。アルミ板事業も自動車生産の回復遅れが重石となっている。
一方で、機械事業は堅調を維持した。売上高は前年同期を上回る 1,938億円 を確保し、利益は 298億円(同36.3%増)と大幅に伸長した。各種プラント向けの圧縮機などが好調で、受注残の着実な消化が利益に貢献している。電力事業も売上高 1,575億円、利益 299億円 を計上し、グループ全体の利益を支える重要な柱として機能している。ただし、建設機械事業は中国・東南アジアの市況悪化が継続し、利益が 69億円(同67.8%減)と激減した。
| セグメント | 売上高 | セグメント利益 | 利益前年比 |
|---|---|---|---|
| 鉄鋼アルミ | 7,518億円 | 96億円 | △63.4% |
| 機械 | 1,938億円 | 298億円 | +36.3% |
| 建設機械 | 2,872億円 | 69億円 | △67.8% |
| 電力 | 1,575億円 | 299億円 | △21.6% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 鉄鋼アルミ | 7,519億円 | 42% | 97億円 | 1.3% |
| 機械 | 1,938億円 | 11% | 298億円 | 15.4% |
| 建設機械 | 2,872億円 | 16% | 70億円 | 2.4% |
| 電力 | 1,576億円 | 9% | 299億円 | 19.0% |
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は 2兆8,882億円 となり、前連結会計年度末からほぼ横ばい(3億円減)で推移した。負債については、社債の償還や借入金の返済を積極的に進めたことで 1兆6,054億円 と、前期末比で 485億円の減少 を実現している。財務の健全化に向けた姿勢が数字に現れており、借入依存度の低減が進んでいる点は評価できる。
純資産は、純利益の積み上げ等により 1兆2,827億円 となり、前期末から 456億円増加 した。この結果、自己資本比率は 41.9% となり、前期末比で 1.7ポイント上昇 している。配当については、通期予想を 年間80円(中間40円・期末40円)に据え置いた。前期の100円からは減額となるが、利益減少局面においても一定の還元水準を維持する方針である。また、株主還元の一環として約 23億円の自己株式取得 を実施したことも報告された。
通期見通しの下方修正
同社は本決算の発表と同時に、2026年3月期の通期業績予想の下方修正を発表した。修正の主な理由は、鉄鋼アルミ事業におけるマージンの改善遅れと、建設機械事業の需要回復が見込めないことにある。特に世界的な金利高止まりやインフレが建設投資を抑制しており、通期での利益確保が当初の想定よりも厳しくなっている。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 | 修正幅 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆5,500億円 | 2兆4,400億円 | 2兆5,513億円 | △4.3% |
| 営業利益 | 1,580億円 | 1,300億円 | 1,587億円 | △17.7% |
| 経常利益 | 1,350億円 | 110,000億円 | 1,572億円 | △18.5% |
| 当期純利益 | 1,200億円 | 1,000億円 | 1,202億円 | △16.7% |
修正後の純利益予想は 1,000億円 となり、前期比でも 16.8%の減益 となる見通しだ。中国経済の不透明感が強まる中で、鉄鋼市況の本格回復には時間を要すると判断している。就職活動中の学生にとっては、同社が鉄鋼以外の機械・エンジニアリング・電力といった「複合経営」によって、市況悪化のダメージをどこまで緩和できるかが、長期的な企業価値を見極めるポイントとなるだろう。
リスクと課題
今後、同社が直面する主なリスクと課題は以下の通りである。
- 鋼材市況の長期低迷: 中国国内の鋼材需要が戻らず、余剰品がアジア市場へ流出し続けることによる価格競争の激化。
- 原材料・エネルギー価格の変動: 鉄鉱石や原料炭、電気料金などのコストが再度急騰した場合、製造原価を圧迫するリスクがある。
- 為替変動の影響: 円高に振れた場合、輸出採算の悪化や海外子会社の円換算利益が減少する懸念がある。
- 脱炭素投資の負担: 「低炭素鋼材」の生産に向けた大規模な設備投資が必要であり、研究開発費やR&D負担が中長期的に利益を圧迫する可能性がある。
- 建設機械事業の地域格差: 北米市場は堅調だが、中国・アジアでの販売不振が長期化しており、事業ポートフォリオの再編が課題となっている。
神戸製鋼所の決算は、鉄鋼セクター全体の苦境を象徴する内容となりました。最大の特徴は、「鉄鋼アルミ」と「建設機械」の2大セグメントの低迷を、堅調な「機械」と安定した「電力」で支えるという多角化戦略の効用が確認できた点です。特に電力事業は、市況に左右されやすい素材事業のボラティリティを緩和するクッションとして機能しています。
注目すべきは「負ののれん発生益」を遡及修正して計上している点です。これは関西熱化学の子会社化に伴うものですが、これを差し引いた実力ベースの利益はさらに厳しいと言えます。一方で、財務面では自己資本比率が40%を超えて改善傾向にあり、かつての不祥事以降取り組んできた財務基盤の強化は一定の成果を出しています。
投資家の視点では、現在の株価に下方修正がどの程度織り込まれているか、また配当性向の維持が可能かどうかが焦点になります。就活生にとっては、同社が単なる「鉄の会社」ではなく、プラント機械やエネルギー事業を併せ持つ「多事業体」であることを理解することが、企業研究の第一歩となるでしょう。
