ラクス・2026年3月期Q3、営業利益65.7%増の125億円——IT人材事業売却でSaaS特化へ、50億円の自社株買いも発表
売上高
443億円
+24.6%
通期予想
600億円
営業利益
125億円
+65.7%
通期予想
160億円
純利益
96億円
+71.7%
通期予想
121億円
営業利益率
28.2%
クラウドサービス大手のラクスは13日、2026年3月期第3四半期(4〜12月)の連結営業利益が前年同期比 65.7%増 の 125億円 になったと発表しました。企業のデジタル化(DX)需要を背景に主力の「楽楽精算」などが堅調に推移したほか、広告宣伝費の効率化が大幅な増益に寄与しました。また、同社は創業事業であるIT人材事業の売却と、上限 50億円 の自社株買いを同時に発表し、経営資源を成長性の高いSaaS事業へ集中させる鮮明な姿勢を打ち出しました。
業績のポイント
当第3四半期の連結業績は、売上高が前年同期比 24.6%増 の 442億9,700万円、純利益が同 71.7%増 の 95億9,600万円 と、大幅な増収増益を記録しました。深刻な人手不足を背景とした企業の業務効率化意欲は依然として高く、主力プロダクトの導入が着実に進んでいます。
利益面の大幅な伸びは、売上高の成長に加え、投資効率の最適化が功を奏した結果です。前年同期並みの水準に抑制した効率的な広告宣伝費の投下や、人件費が計画を下回ったことが利益率を押し上げました。同社は中期経営目標として売上高の年平均成長率(CAGR)31〜32%を掲げており、今回の結果は高い成長性と収益性を両立する「Rule of 50」の実現に向けた順調な進捗を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 Q3 | 2026年3月期 Q3 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 35,549百万円 | 44,297百万円 | +24.6% |
| 営業利益 | 7,546百万円 | 12,500百万円 | +65.7% |
| 経常利益 | 7,557百万円 | 12,532百万円 | +65.8% |
| 四半期純利益 | 5,590百万円 | 9,596百万円 | +71.7% |
業績推移(通期)
セグメント別動向
主力のクラウド事業は、売上高が前年同期比 25.3%増 の 379億8,200万円、セグメント利益が同 67.1%増 の 114億4,300万円 と、全社の成長を牽引しました。特に経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」が好調を維持しています。市場の成熟化が進む領域もあり競争は激化していますが、生成AIの活用によるプロダクト強化などを通じて、新規顧客の獲得と既存顧客の解約抑制(チャーンレート低減)に注力しています。
IT人材事業は、売上高が前年同期比 20.6%増 の 63億1,500万円、セグメント利益が同 51.1%増 の 10億5,700万円 でした。エンジニアの稼働人数が増加し、旺盛な需要を背景に高い稼働率を維持しています。しかし、同社は同日、このIT人材事業を手掛ける連結子会社ラクスパートナーズの全株式を売却することを決定しました。クラウド事業とのシナジーが希薄化する中、経営資源をSaaS領域へ集中させる戦略的な判断です。
| セグメント | 売上高 (前年比) | 営業利益 (前年比) | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| クラウド事業 | 37,982百万円 (+25.3%) | 11,443百万円 (+67.1%) | 30.1% |
| IT人材事業 | 6,315百万円 (+20.6%) | 1,057百万円 (+51.1%) | 16.7% |
| セグメント | 売上高 | 構成比 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| クラウド事業 | 380億円 | 86% | 114億円 | 30.1% |
| IT人材事業 | 63億円 | 14% | 11億円 | 16.7% |
戦略トピック:IT人材事業の売却と資本政策
ラクスは、子会社ラクスパートナーズの株式を約 187億7,400万円 で売却すると発表しました。譲渡時期は2026年4月1日を予定しており、これにより次期(2027年3月期)に多額の売却益が計上される見込みです。この決定は、同社が「純粋なSaaS企業」へと進化し、投資家に対してより明確な成長ストーリーを提示するための構造改革と言えます。
また、株主還元も強化します。上限 50億円(または880万株)の自社株買いを実施し、取得した株式は全数消却する方針です。これは資本効率の改善と同時に、事業売却による一時的なキャッシュを株主に還元する姿勢を示すものです。2025年10月に実施した1対2の株式分割後も、実質的な増配基調を維持する計画です。
財務状況と資本政策
当第3四半期末の総資産は、前連結会計年度末比 47億2,600万円増 の 363億8,000万円 となりました。現金及び預金が 21億1,900万円 増加したほか、投資有価証券も増加しています。一方、負債は未払法人税等の減少などにより 10億9,200万円減少 しました。
自己資本比率は前年度末の 69.4% から 76.4% へと上昇し、財務の健全性はさらに高まっています。豊富なキャッシュを背景に、成長投資と株主還元のバランスを重視する経営方針を継続しています。
リスクと課題
堅調な業績の一方で、会社側は以下のリスクを認識しています。
- 市場環境の変化: 一部の事業領域では市場の成熟化が進んでおり、導入効果を慎重に見極める層が増えていること。
- 競争激化: 類似サービスを展開する競合他社の増加により、顧客獲得コスト(CAC)の上昇や価格競争が起こる可能性。
- 採用環境: SaaS事業のさらなる拡大に向け、質の高い人材の確保が引き続き重要な課題であること。
- 技術革新: 生成AIなどの技術変化にプロダクトが迅速に対応できない場合、競争力が低下するリスク。
通期見通し
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年11月公表の数値を据え置いています。売上高は前期比 22.7%増、営業利益は同 57.0%増 と、期初からの高い成長目標を達成する見込みです。
| 項目 | 前回予想 | 今回修正 | 前期実績 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 60,000百万円 | 60,000百万円 | 48,881百万円 |
| 営業利益 | 16,000百万円 | 16,000百万円 | 10,192百万円 |
| 当期純利益 | 12,100百万円 | 12,100百万円 | 8,000百万円 |
今回の決算で最も注目すべきは、単なる好決算以上に、IT人材事業(常駐エンジニア派遣)の売却という「選択と集中」の断行です。
これまでラクスは「高成長のSaaS」と「安定収益のIT人材」のハイブリッド型を強みとしてきましたが、利益率の差が顕著になる中で、SaaSへの完全シフトを決断しました。売却により得られる約187億円のキャッシュは、次期以降のSaaS広告宣伝やM&Aに回る可能性が高く、成長スピードの再加速が期待されます。
- 強み: SaaS指標(成長率、利益率)が極めて高く、広告宣伝費のコントロールが自在である点。
- 注目ポイント: 売却後の「純粋SaaS企業」としてのPER評価の変化。また、売却益を活用した次の中期計画の具体策。
- 懸念点: 派遣事業という「安定したキャッシュ源」を切り離した後の、SaaS市場飽和に対する耐性。
