日本精工株式会社 の会社詳細
日本精工株式会社
日本精工
2026年3月期 第3四半期

日本精工・2026年3月期Q3、純利益3.4倍の135億円——ステアリング事業再連結と価格転嫁が寄与、通期予想を上方修正

日本精工
NSK
上方修正
大幅増益
負ののれん
ステアリング事業
自動車向け軸受
価格転嫁
IFRS
製造業決算
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

6,585億円

+10.3%

通期予想

9,000億円

進捗率73%

営業利益

274億円

+75.2%

通期予想

370億円

進捗率74%

純利益

135億円

+244.5%

通期予想

200億円

進捗率68%

営業利益率

4.2%

日本精工(NSK)が3日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4月〜12月)の連結決算は、親会社の所有者に帰属する四半期利益が前年同期比 244.5%増135億4,300万円 と大幅な増益を記録した。インフレに伴う製品販売価格への転嫁が進展したことに加え、ステアリング事業の100%子会社化に伴う 「負ののれん発生益」 の計上が利益を大きく押し上げた。業績の進捗を踏まえ、同社は通期の営業利益予想を従来の 320億円(前回11月時点)から 370億円 へと上方修正している。

業績のポイント

2026年3月期第3四半期の累計業績は、売上高が前年同期比 10.3%増6,584億6,400万円、営業利益は同 75.2%増273億9,300万円 となった。増収増益の主な要因は、原材料費や物流費の上昇分を販売価格へ適切に反映させる 「価格転嫁」 の取り組みが浸透したことにある。特に自動車向け軸受(ベアリング)などの主力製品において、粘り強い価格交渉が結実し、利益率の改善に寄与した。

また、今回の決算では2025年9月に実施したステアリング事業の再編が大きな転換点となった。共同出資していたジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)から「NSKステアリング&コントロール株式会社(NS&C)」の株式を買い戻し、再び100%子会社化したことで、同事業が連結対象に復帰した。この際、取得価格が純資産を下回ったことにより、特別利益に相当する 「負ののれん発生益」72億7,200万円 計上した(前年同期は非継続事業の損失を計上)。これが最終利益を大きく底上げする形となり、1株当たり四半期利益も前年同期の 8.04円 から 27.69円 へと急拡大している。

項目2025年3月期 Q3実績2026年3月期 Q3実績前年同期比
売上高5,969億円6,584億円+10.3%
営業利益156億円273億円+75.2%
税引前四半期利益128億円266億円+107.2%
親会社帰属純利益39億円135億円+244.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

主力セグメント別では、自動車事業の収益改善が顕著である一方、産業機械事業は地域による明暗が分かれた。

産業機械事業の売上高は前年同期比 1.6%増2,753億5,300万円、営業利益は同 3.6%増86億4,700万円 となった。地域別では、国内の工作機械向け需要が一部で回復したほか、北米での半導体製造装置向けの販売が増加した。一方で、欧州市場は景気減速の影響を受けて販売が落ち込み、中国でも不動産市場の低迷から工作機械向けが伸び悩むなど、依然として 外部環境の厳しさ が続いている。

自動車事業は売上高が同 0.8%増3,025億9,900万円、営業利益は同 51.8%増126億8,400万円 と大幅増益を達成した。グローバルでの自動車生産台数の回復を背景に、売上高は前年並みを維持した。利益面では、インフレに対する 販売価格転嫁の進展 が最大の押し上げ要因となった。特に中国市場では電動ブレーキ用ボールねじの拡販が寄与するなど、次世代モビリティ向け製品の成長が収益を下支えしている。

ステアリング事業は、2025年9月の連結化以降の4ヶ月分を反映し、売上高 577億4,700万円、営業利益 52億1,200万円 を計上した。連結化に伴う一過性の利益である負ののれん発生益が含まれているものの、事業単体としても赤字から脱却し、黒字化へ向けた再編が一定の成果を見せている。

セグメント売上高前年同期比営業利益利益率
産業機械2,753億円+1.6%86億円3.1%
自動車3,025億円+0.8%126億円4.2%
ステアリング577億円-52億円9.0%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
産業機械事業2,754億円42%86億円3.1%
自動車事業3,026億円46%127億円4.2%
ステアリング事業577億円9%52億円9.0%

財務状況と資本政策

2025年12月末時点の総資産は、前期末(2025年3月末)比で 830億300万円 増加し、1兆3,025億円 となった。これはステアリング事業の連結子会社化に伴い、現預金や有形固定資産、棚卸資産などが加算されたことが主な要因である。一方で、負債も連結範囲の拡大や社債の発行などにより 532億5,600万円 増加した。親会社所有者帰属持分比率は 52.2%(前期末は53.4%)と、依然として 健全な水準 を維持している。

キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが 814億9,300万円 の収入となった。税引前四半期利益の増加に加え、負ののれん発生益(非資金項目)の調整、運転資本の管理が進んだことが寄与した。一方、投資活動には 847億4,600万円 を支出しており、AIロボティクス企業への戦略的投資やステアリング事業の株式取得などが含まれる。配当については、1株当たり年間 34円(中間17円、期末予想17円)を据え置いており、安定的な還元を継続する方針だ。

通期見通し

同社は第3四半期までの好調な業績進捗と、ステアリング事業の連結化影響を反映し、2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。為替相場の変動や原材料費の推移を注視しつつも、価格転嫁の効果が継続的に寄与すると見ている。特に純利益については、ステアリング事業取得に伴う負ののれん益や、非継続事業からの損失解消が重なり、前期比で 約1.9倍 の大幅増益を見込む。

項目前回予想 (11/4)今回修正 (2/3)前期実績 (25/3期)
売上高8,700億円9,000億円7,966億円
営業利益320億円370億円284億円
親会社株主純利益165億円200億円106億円
1株当たり利益33.74円40.89円21.78円

リスクと課題

今後の経営環境における主なリスク要因として、同社は以下の点を挙げている。

  • 外部環境の不透明感: 米国の関税政策を巡る不確実性の高まりや、欧州・中国での経済成長減速が、軸受需要の足かせとなる懸念がある。
  • 地政学リスク: 中東情勢やウクライナ情勢の長期化による物流網の混乱やエネルギーコストの高止まり。
  • ステアリング事業の再構築: 子会社化した同事業のPMI(統合プロセス)を加速させ、一過性の利益に頼らず、本業としての収益性をいかに安定させるかが今後の課題となる。
  • 為替変動: 急激な円高の進行は、海外売上比率の高い同社の業績を押し下げる要因となる。
AIアナリストの視点

日本精工の今決算で最も注目すべきは、一度切り離したステアリング事業を再び連結化し、同時に「負ののれん」という形で会計上の利益を得ながら事業再編に踏み出した点です。

これまで同社の重荷となっていたステアリング事業ですが、100%子会社化することで迅速な意思決定を可能にし、自動車事業とのシナジーを再構築しようとする経営の強い意志が感じられます。

一方で、営業利益の増加以上に純利益の伸びが突出しているのは一過性要因が強いため、投資家としては「価格転嫁によるマージン改善」がどこまで持続可能か、また中国・欧州の産業機械需要がいつ底を打つかを冷静に見極める必要があります。就活生の視点では、単なるベアリングメーカーから、電動化やロボティクス(AI投資)へ舵を切っている戦略的な動きが評価のポイントになるでしょう。