日本新薬株式会社 の会社詳細
日本新薬株式会社
日本新薬
2026年3月期 第3四半期

日本新薬・2026年3月期Q3、売上収益4.8%増の1,271億円——主力剤伸長で通期売上を上方修正、米特許訴訟は「引当金なし」を継続

日本新薬
4516
製薬業界
希少疾患
特許訴訟
上方修正
ウプトラビ
ビルテプソ
増収減益
為替影響
第3四半期累計期初から9ヶ月間の累計値(前年同期比)

売上高

1,271億円

+4.8%

通期予想

1,700億円

進捗率75%

営業利益

323億円

-1.3%

通期予想

330億円

進捗率98%

純利益

258億円

-9.5%

通期予想

263億円

進捗率98%

営業利益率

25.4%

日本新薬が9日に発表した2026年3月期第3四半期(4〜12月)連結決算は、売上収益が前年同期比 4.8%増1,271億3,500万円 となりました。主力の肺高血圧症治療剤「ウプトラビ」や海外ロイヤリティ収入が業績を牽引した一方、販売管理費の増加により営業利益は 1.3%減323億3,300万円 と増収減益となりました。同社は第4四半期の為替想定を円安方向に見直し、通期の売上収益予想を上方修正 しています。焦点となっていた米国での特許訴訟については、賠償を命じる評決が出たものの「特許は無効」との判断もあり、現時点で引当金の計上は見送っています。

業績のポイント

当第3四半期累計期間は、国内外での医薬品販売が堅調に推移し、増収を確保しました。売上収益は 1,271億3,500万円(前年同期比 +4.8%)を記録しています。増収の背景には、薬価改定の影響を受けながらも、戦略品である「ウプトラビ」の国内外での成長や、契約改定に伴う前立腺癌治療剤「アーリーダ」の売上計上開始が寄与しました。

利益面では、積極的な研究開発や市場浸透のための販売活動に伴い、販売費及び一般管理費が増加しました。その結果、営業利益は 323億3,300万円(同 -1.3%)、税引前四半期利益は 332億2,700万円(同 -0.6%)と、前年をわずかに下回る結果となりました。また、法人所得税費用の増加により、親会社の所有者に帰属する四半期利益は 258億4,400万円(同 -9.5%)となっています。

項目2025年3月期 Q32026年3月期 Q3前年同期比
売上収益1,213億円1,271億円+4.8%
営業利益327億円323億円-1.3%
四半期利益285億円258億円-9.5%

業績推移(通期)

売上高営業利益|当期累計通期予想残

セグメント別動向

医薬品事業は、売上収益 1,101億9,400万円(前年同期比 +5.4%)、セグメント利益 306億8,200万円(同 -0.0%)となりました。国内では「ウプトラビ」やてんかん治療剤「フィンテプラ」が順調に市場へ浸透したほか、海外売上に連動したロイヤリティ収入が収益を下支えしました。特に「フィンテプラ」の売上は前年同期の13億円から 30億円(同 +123.8%)へと倍増しており、希少疾患領域での強みを発揮しています。

機能食品事業は、売上収益 169億4,100万円(前年同期比 +1.1%)、セグメント利益 7億3,800万円(同 -31.0%)の増収減益となりました。健康食品素材やサプリメントの売上は増加したものの、原材料価格の動向や経費増が利益を圧迫する形となりました。同社はプロテイン製剤や保存剤など、高付加価値製品への注力を継続しています。

セグメント売上収益前年同期比セグメント利益前年同期比
医薬品1,101億円+5.4%306億円-0.0%
機能食品169億円+1.1%7億円-31.0%
セグメント売上高構成比営業利益営業利益率
医薬品事業1,102億円87%307億円27.8%
機能食品事業169億円13%7億円4.4%

財務状況と資本政策

総資産は、前連結会計年度末から 444億7,000万円 増加し、3,281億800万円 となりました。これは営業債権の増加に加え、保有する金融資産の時価評価額が上昇したことなどが主因です。親会社の所有者に帰属する持分比率は 86.5% と極めて高い水準を維持しており、盤石な財務基盤を背景に研究開発への継続的な投資を可能にしています。

株主還元については、期末配当予想を 62円 と据え置き、年間配当は前期と同額の 124円 を予定しています。キャッシュ・フロー面では、営業活動により 120億200万円 のキャッシュを創出しました。前年同期(171億円)に比べ減少していますが、これは棚卸資産や営業債権の増加といった運転資本の変動によるものです。財務活動では配当金支払に 80億8,700万円 を充当しており、安定的な還元姿勢を継続しています。

リスクと課題:米国特許訴訟の行方

同社が直面する最大の経営リスクは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤「ビルテプソ」を巡る米国での特許訴訟です。2024年12月、米デラウェア州連邦地方裁判所の陪審評決において、サレプタ社の特許有効性と 115.2百万ドル(約170億円規模)の損害額が認められました。一方で、陪審は「日本新薬側の特許も無効」との評決を下しており、事態は複雑化しています。

日本新薬側は、この評決に対して「特許は無効と判断される可能性が高い」との見解を維持しており、現時点での 賠償金に係る引当金の計上は見送って います。今後は控訴を含めたあらゆる法的手段を検討する方針ですが、訴訟の最終的な結末によっては、将来的に多額の費用が発生する不透明感が残っています。投資家にとっては、この法的リスクの進展が今後の株価や財務指標を左右する重要な注視ポイントとなります。

通期見通し

2026年3月期の通期連結業績予想について、売上収益を前回予想から 20億円 上積みし、1,700億円(前期比 +6.1%)に上方修正しました。これは第4四半期の為替レート想定を1ドル=140円から 150円 に変更したことによる影響が大きく、海外収益の円換算額が押し上げられる見込みです。

一方で、営業利益以下の各利益項目については前回予想を据え置いています。薬価改定の影響や新薬開発のためのR&D費用の投下、さらには前述の訴訟対応費用などのコスト増を見込んでおり、慎重な姿勢を崩していません。

項目前回予想今回修正前期実績(2025/3)
売上収益1,680億円1,700億円1,602億円
営業利益330億円330億円354億円
親会社帰属純利益263億円263億円325億円
AIアナリストの視点

日本新薬のQ3決算は、本業の製品力による「増収」と、戦略的投資や訴訟リスクによる「利益の伸び悩み」が混在する内容となりました。

注目すべきは、米国でのサレプタ社との訴訟において、巨額の損害額評決が出たにもかかわらず、引当金を計上していない点です。これは、特許の無効性に強い自信を持っていることの裏返しですが、もし控訴等で覆せなかった場合には、一括で大きな損失を計上するリスクを内包しています。

一方で、希少疾患薬「フィンテプラ」の急成長や「ウプトラビ」の安定感は評価できます。為替前提を150円に引き上げたことで売上高は過去最高水準を目指しますが、投資家や就活生の視点では、この「訴訟リスクの決着」と「次世代パイプライン(NS-401など)の寄与タイミング」が、同社の長期的な成長性を判断する鍵となるでしょう。